【物語】竜の巫女 剣の皇子 77 太陽
アルテ・ハルモニア。
環竜暦743年。
ロゴノダ皇国において緋の巫女と始竜を打ち倒した人々は、竜の火に焼かれた城都を中心の国の復興に向けて動き出す。
その年の内に、ホロソフ国皇は皇太子フロドを新国皇とした。
皇国はアーサラードラとは友好関係を保つ、という姿勢をイルサヤに示す。フロド国皇はアーサラードラと話し合い、暦名を『明豐』と改め、新しい国造りに尽力すると民衆に宣言した。
イルサヤ宮城は緋の巫女と始竜により完全に破壊された。が、聖上の命で宮城から離れた城都に避難していた官吏等は、国民と共に無事であった。
アーサラードラの人々はハリュイ聖上と竜のエーテルの崩御を知り哀しみにくれたが、新たな光皇女の存在に国の希望を見出そうとした。
明豐3年、真夏の昼下がり。
チョコロ村。
照りつける日差しの下、白髪頭のオゼとモヨが家の軒下でのんびりと茶を飲んでいる。
「今日も暑いのう」オゼが日焼け顔にしたたり落ちる汗をぬぐいながら言う。
「じいじや!」遊ぶ小さな男の児が、元気に駆けて来て、オゼに飛び付く。
彼も目を細め「アスラはわんぱく坊主やなぁ」空色の目を輝かせる児の頭を撫でる。
「ととが!樹を蹴って!カブトムシを捕ってくれた!」アスラはちいさな手にうごめく虫を、大事そうに老夫婦に見せる。
「アスラっ!」日焼けした父に抱かれた女の児が「ずるい!ととさま!キララも欲しい!」
騒ぎながらも、青銀の瞳を潤ませる。
「困ったなぁ」夜色の瞳は、ジタバタする娘をあやしながら苦笑いする。
彼の隣にいる黒馬が
『ほら見ろ。言わんこっちゃない。お前が二匹捕らないからだぞ』
ため息をつき、呆れる。
そこへ「お待たせ!」と、双子の母が「あんころ白玉団子!できたわ!力作よ!!」いびつな形の、手作りお菓子をお盆に載せ、碧色の瞳に満面の笑みを浮かべて登場する。
それを見たこどもらは大喜びで母に駆け寄り、縁側に広げられたお茶とお団子の器を、楽しげに見つめる。皆も、その小さくも煌めく笑顔に目を細める。
アスラは母の、キララは父の膝の上に座るのが大好きだ。ふたりに抱かれたそれぞれの児が、青空を見上げる。
「ととさま。おひさまはいつもこっちを見ている」キララが言う。
「おつきさまもだ!」アスラも負けずに大声を出す。
「そうだね」父は娘の頭を撫でる。
「ととは、おひさま?」アスラが聞く。そのことばに、父は小首をかしげ「みんなが、おひさま」と笑う。
「アスラも?キララも?かかさまも?」目を丸くする双子。
児の両親は見つめ合い、微笑む。
「そう、みんなおひさま」「全てが、光」
「緑でいっぱいの、世界にしようね」
陽は陰と共に、世界を抱き続ける。
(完)
77話で完結となりました。
第一部から拙作にお付き合いくださった皆様、本当にありがとうございます。
アルテ・ハルモニア世界のおはなしは、また機会があれば別の物語で書きたいと思います。
ありがとうございました。




