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【物語】竜の巫女 剣の皇子【第二部】  作者: ヤマトミチカ
はんぶんこ
27/36

【物語】竜の巫女 剣の皇子 68 本当と嘘 

 ルチェイは夢の中にいた。

 夜みたいにほの暗い空間。

 彼女の隣には金冠を被った笑顔の少年がいた。

「――。ヴァーチュリーはあったかい」少年はルチェイの名を呼び、紅の竜を抱きしめて微笑む。

「それにね、――。ロンドは僕のともだち」彼は、黄金竜も一緒に抱き寄せる。

「――も、ずっと一緒!」顔を輝かせる少年。

 彼女もそれがいい、と笑みを返す。

 ずっと、一緒。

 でも

 これで、いいの?

「どうして、私の名前を言わないの?」

 少年は、ルチェイのことばに俯いた。二頭の竜は心配そうにふたりをみつめる。

「だって」少年は瞳を潤ませる。


 ふと、横を見るとソロフスがいた。

 彼は白猫を柔らかく胸に抱き、俯いている。ルチェイの存在には気が付いていないようだ。

「言えない」「このままでいい」静かに呟く彼に

「あなたは私の真の名を知っているのね」ルチェイは声をかけた。

 ソロフスは一瞬、驚愕の表情を浮かべ、姫巫女を見た。

「ここに来たのか」

「ソロフス?ここはどこ?」

「……ルーはどこにいる?」穏やかな顔に戻った彼は、尋ねてきた。

「イルサヤ」

「そうか」「無事ならよかった」ソロフスは白猫を放つ。猫は駆けていき、闇の中に消えていった。

「真の名は言わない」彼はルチェイに言った。「嘘をついてごめん」

「アーサラードラに会いに来てくれると言ったことも嘘?」

 彼はそれに対して無言でいる。

「どうして嘘をつくの?」

「好きだから」

「またすれ違いになっているよ」

「わかっている。ごめん」

「謝らなくていいよ。ソロが苦しいのは、私も苦しい」

「ごめん」

 ルチェイも次のことばに詰まる。

 ソロフスは「皇国には……明日以降でのんびり、来るといい」彼女に言う。

「どうして?」

「待っているよ」彼は微笑む。

「本当に?」

「本当に」ソロフスはルチェイの眼をまっすぐに見る。

 ルチェイはゆっくり頷いた。

「ありがとう」ソロフスは笑う。

 黒い瞳が夜の色に煌めき、彼は「ルーが無事だとわかってよかった」少し涙ぐんだ。

 ソロフスは姫巫女を抱き寄せる。その温かさに加え、いつもの彼の薫りもした。ルチェイはしばらく身を任せていた。そして、気が付いた。

「ソロ。ここは」

「待っているよ」ソロフスは彼女に口づけをして「またね」詞を唱えた。

 彼女はソロフスの腕の中で眠りに落ちて光の粒に変わり、元の場所へ消えていった。



 ソロフスは皇国の原野に立ち、胸に当てていた手を下ろした。

「鍵はかけないのですね」

 彼の後ろからサイメイが声をかけてきた。「さすが藍理様。漢です」

「……怒らせてしまったかな」

 ソロフスは複雑な表情を魔導師に向ける。

「さすが姫巫女様。漢ですねぇ!」サイメイは朗らかに笑いとばした。



 ルチェイは夢から目覚めた。眼に深い碧色を湛えた彼女は、唇を指でなぞる。

「なるべく早く!ロゴノダに行くわよ!」

 彼女は真剣な顔で、ちびとミカゲに訴える。

「ソロが待っているわ!すぐに来て欲しいって!!」

 ちびは『わかった。リーベサラ山までボクがみんなを連れて瞬間転移。七曜結界範囲近くからはミカゲに頼ろう。ミカゲ、いいかな?』黒馬に尋ねる。

『もちろん!全速力で行ってやるよ』彼女も力強く言う。

 

 こうして、さんにんはミットマから受け取った剣を携え、ロゴノダへ急ぐことにした。

 



挿絵(By みてみん)


(つづく)


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