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プロローグ
天、晴れ。やり遂げた今の俺の気持ちを表したような、雲一つない気持ちのいい空。
地上、血みどろ。砂ぼこりが舞い、俺から噴き出た血と混じって空気が悪い。
そんな惨状を作り出した俺の体は、左腕は肘から先が、右腕は肩から先がちぎれている。体中に裂傷が刻まれ、胴と脚が泣き別れてうつ伏せになってしまっている。
もはや痛いとかの次元じゃない。
何一つ体が動かせず、視界も真っ赤でまともに見えない。
自分の心音と、すぐ近くにいるであろう『あいつ』の荒い息遣いしか聞こえない。
足音がする。
『あいつ』が近寄っきて、仰向けに起こした。
「あまりこうはしたくなかったんだけど」
美女がそう言いながら顔を近づけてきた。
「へ?おぃ――」
息も絶え絶えに言葉を放ったが、吐血で窒息しそうになっている俺に――
口づけをしてきた。
場所・状況・相手に驚きを禁じ得なかった。瀕死の重傷を負いながら、人生初めてのチューの相手が――
御年六十四歳の若々しい美女だったんだもの……