【これは】下層で実力見てみよう【試練だ】
後半天音ちゃん視点になってるっす。それに伴い後半のコメントは天音ちゃんのチャンネルの方です。お気をつけて。
そして作者史上初めて1ページ5000字超えました(笑)
風繰さんの実力確認のため、上野モフの楽園ダンジョンの下層1層にやってきた。今回の俺……と想定外だが麗奈の役割は教官とかでもなく風繰さんの元へ下層の雑魚モンスターを1匹ずつ引っ張ってくることだ。当然群れがいたら1匹だけ釣ってあとは殲滅なりなんなりをするだけ。
本当に危ない場面であれば手を貸すけど基本的にそれ以外の時は俺と麗奈は介入しない。葵は……まぁ、授業で組むことも多いようだし手を貸すくらいはいいんじゃないかな。
(そうさな。出来る限りは一人で戦えた方が良いじゃろうがの。)
「ここが……ダンジョンの下層、なんですね。」
「風繰さん、緊張中?」
「はい、中層までとは雰囲気が違うのが肌で分かります……」
:天音ちゃんの真剣な表情は中々レアだな。普段が真剣じゃないとは言わんがな?
:だが、それだけ今の天音ちゃんにとって下層は難易度が高い証でもあるだろう
@友人A:下層の雰囲気に呑まれなけば上々だろ
ふむ。空気感の違いが感じられるなら見込みあると思う。さっきまでのうちの眷属ちゃんずモフろうの回でちょうどホウを召喚していたからそのまま索敵開始。
「白雪、敵見つけたら教えて。1匹釣って後は殲滅の流れで行く」
「分かったわ。殲滅は任せなさい。」
「黒狐ちゃんは警戒忘れずに。あとは風繰さんが危険じゃない限りは基本手出し禁止な」
「ほいほ~い。カメラマン黒狐ちゃんに任せなさ~い!」
これで二人はヨシ。普段であればここまでちゃんと探索っぽいこと言わないけど。
(今回は例外じゃな。ま、油断しては足元を掬われる。かといってがちがちの雰囲気じゃ風繰天音にもそれが伝わる。適度に緩い今の塩梅が丁度ええじゃろ)
「で、風繰さんは俺か白雪が敵を吊ってくるまで暇だろうし、下層の雰囲気に慣れとくと良いよ。そんで戦闘は後の事とかなんも気にせずやれる限りやったらいい。フォローはするし。」
「はいっ!すっごい心強いです!それに、応援してくれる使い魔さん達もいるので頑張ります!」
:俺らもいるぜ天音ちゃん!
:同じ白狐さんリスナーである俺たちがな!
下層を歩き始めて数分。ホウが敵の群れを見つけた。数は……6?おっけ。じゃ、今回は俺の出番だということで麗奈含め全員見通しのいい場所で待機してもらっている。当然カメラもこっちに持ってきたが。
:さて何が出るかね?白狐さん分からんの?
「索敵できても種類の特定はできない。数は分かる。6匹いる。」
:6匹かぁ…またジンライタイガーか?
:上野のモフの楽園ダンジョンの下層って別にジンライタイガーだけが出るわけじゃないからな?
:むしろアレも一応レアよりだぞ
見つけた。今回の相手は…フクロウ。ってことは……ブレイブオウルか。中々厄介な魔物かも。でも、釣るにはちょうどいい魔物だ。6匹全部が別々の木に止まって周囲を見ているな。一応足音とか消して移動したつもりではあるけど2,3匹こっちの茂みの方向を向いている。バレてるかね
(しかし風繰天音には少々荷が重いと思うんじゃが?)
それはやってみないとね。ブレイブオウルの厄介な点は感覚が鋭いから不意打ちできないことと、集団でブレイブバードみたいなことやってくることだからな。しかもブレイブバードが当たるまでその速度が上がっていくっていう。
:アレは……ブレイブオウルか!きつそー
:強いんか?
@狐のヒロイン:自傷ナシのブレイブバードを集団で使ってくる。しかも当たるまで際限なしに速度が上昇していく。
:じゃあタイプ一致で威力180ってことぉ?
@受付お姉さん:でも天音ちゃんにとっては相性いい相手かもね。ブレイブバード中に風魔法の干渉を受けるとブレイブバード状態が維持できないわ。
:なんで当たり前のようにポケモンの技の名称出てくるのか……
:それが一番適切なんだろw
ライを憑依する。そして俺の一番近い位置にいるふくろうを除いた範囲に雷を落とす。ただこれ…雷を拳に纏わせるのより魔力を喰うんだよな。かといって召喚したライだと中級魔法相当しかできず、空から雷を落とすことが出来ないので仕方ない。しかもちょっとチャージの時間がいる。
あ、攻撃しようとしてること気付かれた。一斉に飛び立ってブレイブオウルが襲い掛かってくる。ので逃げながら数を減らすしかなくなるところだが。俺の元に辿り着くまでに数秒の時間がある。なぜならブレバ状態になるには一瞬空中で力を溜めて体に炎を纏う必要があるからだ。
:うわっ、気付かれた!
:確かにこれはブレイブバードとしか言いようがないな
:あえて言うなら焼き鳥フォーム!
:違いないw
「今からちょい眩しい。気を付けてけ」
:は?急になんや
:ライちゃん憑依したのは分かるけど何を…
@友人A:お前ら視覚大事なら目つぶれー
「審判の雷」
雷で無事に5匹だけ狙って堕とせた。のであとは皆のとこまでコイツ連れて戻るだけ。
***
(風繰天音視点)
白狐さんを待つ間、私は白雪さんと黒狐ちゃんに白狐さんのこととか色々聞いていたら突然、白狐さんが敵を確認しに行った方角に大きな雷が降った。あれは…多分だけど雷属性上級魔法の【審判の雷】かな?
:今の審判の雷か⁉そんな強敵なのか?
:おいおい、白狐さんよぉ、まさか意図的に強い奴を連れて来ようって魂胆じゃあねぇよなぁ?
:俺らの天音ちゃんに何かあってみろ!燃やすぞ!
:意味ないから過激派ユニコーンは黙っとけー?
:天音ちゃんはどっしり構えてればいいと思う
「おー、おにぃ派手にやったねぇ~。」
「ならそろそろね。天音ちゃん、スキルの準備をしておきなさい。」
「はいっ!」
白雪さんに言われた通り、きっとすぐに白狐さんが敵を連れて戻ってくるだろう。いつでも攻撃できるように上級風魔法【風神の吐息】の準備をしておく。それとは別に自分に向けて初級風魔法スキル【風弾】を使っておく。私のユニークスキル【風乗り】の効果であらゆる風属性の攻撃を無効化し、私自身の速度を上げることができる。これは自分のスキルであっても有効だ。…代わりに自分以外からの風属性の強化魔法は効果受けないデメリットもあるんだけど。
:【風乗り】だっけ。天音ちゃんのユニークスキル
:風属性無効にして速度バフって普通に羨ましいよなー
:一属性といえど、完全無効化できるのはマージで強い。風属性使うモンスターって意外に多いしな
:最悪風属性主体のモンスター相手なら無条件でタンクも出来るってことだからなー
そして雷が落ちてから数十秒(かな?)くらい経過した時、白狐さんが戻ってきた。後ろに燃え盛る(!?)鳥を連れて。
「風繰さーん、連れてきた。風が弱点。がんば」
そう言うや否や白狐さんは上に跳んで後ろの鳥型モンスターはすぐには白狐さんの動きに追従できなかったのか、私の方に向かってくる。攻撃が通用しなかったらどうしようという不安や、あの時、オークキングダムに手も足も出なかった時の恐怖も頭をよぎる。それでも自分の努力を信じるんだ……!
確実に仕留めるために出来る限りギリギリまで引き付けてチャージしていた【風神の吐息】を撃つ。私の手の上で渦巻いていた小さな竜巻が次第に周囲の魔力と共に大きくなり、そして白狐さんが連れてきたモンスターは進路変更もままならずその竜巻に飲み込まれた。
そして竜巻が収まると態勢を立て直すことなくその鳥モンスターは地面に落ちてきた。
「まだ生きてる。動き出す前に倒して」
「はいっ!【風刃】!」
2,3度中級風魔法【風刃】を叩き込んで相手に逃げられることなく倒すことができた。やった!
:おお!天音ちゃんが下層のモンスター倒したぞ!
:おめでとー!
:天音ちゃん最強!天音ちゃん最強!
あ、でも確かに私下層のモンスター倒せたけど……それって本当に私の実力?この連れてこられた個体もさっきの白狐さんの攻撃で弱ってたんじゃないの?
「あの…白狐さん……」
「俺はただ連れてきただけ。他の個体は倒したけど今の個体にはなんもしてない。だから倒したのは風繰さんの実力。よく頑張りました。」
:天音ちゃんも下層でやれるって証明されたんだ!
:まだ1匹倒しただけだぞ。でも、良かったね天音ちゃん!
「おめでとー天音ちゃん!かっこよかったよー!」
「そうね。焦って上級魔法を敵の姿が見えた瞬間に使わず、ギリギリのタイミングまで待ったのも良かったと思うわ。」
私、下層のモンスターを倒せたんだ……その実感は湧いてきた。つまり私の実力は下層でも通用はするんだ。ひとまず安心して良いと思う。でもまだだ。今はまだ、白狐さんが他の個体を倒して倒しやすいように1匹だけ連れて来てくれたから倒せただけ。これからの方針に希望は持って、だけど自分が下層でもやっていけると調子に乗らないようにしないといけない。またあの時みたいに晴翔や両親に心配をかけないためにも。
「白狐さん!まだまだお願いします!」
「分かった。できそうなら少しずつ敵の数を増やす。今日の目標は3体までなら対処できるようにしよう。おーけー?」
「はいっ!よろしくお願いします!」
:向上心の塊やなぁ天音ちゃん
:若い故の輝きに満ちている…!
:眩しー!おっさんにゃ眩しすぎるぜぃ……
それからしばらくは白狐さんと白雪さんが交代交代で1匹ずつ魔物を連れてきてくれるのを倒し、1体なら焦ることなく対処できるようになったら次は時折2体連れて来てもらって。時折黒狐ちゃんに倒すのを手伝ってもらいつつ、休憩もしつつで1時間~1時間半くらい私に特訓してもらった。
***
「お疲れ様、風繰さん。すごい頑張ってたしなんかご褒美あげよっか?何がいい?」
白狐さんからのご褒美……何が良いかなんて考えずとも自然と口にしていた。
「じゃあ…その……私の事……苗字じゃなくて……名前で呼んで…………欲しい……です。出来ればさん付けも……しないで欲しい…………です。」
「……そんなことで良いの?分かった。天音さん。あー、違った。天音ちゃん。これでいーの?」
「はいっ!!今の私にとって何よりのご褒美です!ありがとうございます白狐さん!!」
嬉しい。白狐さんに名前で呼んでもらえた…!我ながら単純だけど、白狐さんに名前呼びされただけでもっともっと頑張れそうな気がしてくる。……いつかは白狐さんに並び立てるように頑張ろう。そう思えた。
:おー、配信冒頭で悩んでたこと解決したやんw
:もうすっごい嬉しそうw
:実際くっそ嬉しいんやろなぁ…
:なんだろうこの胸に沸き立つこの気持ち……トゥンク…
:心臓発作か?気を付けろよおっさん
「そーいえば。天音ちゃんに聞きたいことあったんだよねー。なんでそうまでして下層探索したいのー?ずっと聞きたかったんだよね~、中層まででも暮らすには十分な収入になるジャマイカ。」
「黒狐ちゃん?人の個人的事情に土足で踏み込むものではないわよ?」
「そうだぞ。気になるのは分かるけどな」
:それ俺も気になる
:そういやなんでこんなに配信頑張ってるかって聞いたことなかったなー
:もちろん!天音ちゃんが言いたくなければ言わなくて良いけどね!
:せやせや、俺らは元気な天音ちゃんの姿が見れればええねん。
良い機会かもしれない。どうして私が下層探索や配信に拘っているのかを話すには。今まで誰にも明かしたことなかったけれど。
「話すよ。なんでここまで頑張るのか。私ね、弟がいるの。弟は小学校の頃までは健康な普通の男の子だったんだけど……中学校に上がった頃に病気になっちゃって……それからは弟は自由に外を出歩けなくなってしまったの。体調的に悪いことはないんだけど足が自由に動かないんだって。弟も私と同じ半妖だから半妖を専門とするお医者さんに見せた。けど原因の特定が困難で…治療するにはエリクサーかそれに類するものが必要だと言われて。それでダンジョンの下層以降から稀にエリクサーが手に入ることがあるって聞いたから私は探索者を始めたんです。」
:(´;ω;`)ブワッ
:病気がちの弟さんのために身を粉にして探索者やってるのか…(´;ω;`)
:立派や……
:ええ子やほんま……
「そうだったんだ……天音ちゃん、話してくれてありがとー。私もエリクサー探し、手伝うからね~!」
「……家の者に相談すれば支援はできるかもしれないわね。」
「…………なるほど。そういう事情が……気休めは言えないけど応援する。」
「ありがとうございます。って空気がしんみりしちゃいましたね!私には両親の他にも支えてくれる人たちが大勢いるんだって分かったので頑張ります!」
それにしても、白狐さんの沈黙は長かったような。もしかしてご先祖さんに相談してるのかな?
……もしかしてご先祖さんなら弟の病気の原因も分かるかも…なんて都合がいい話だ。
今日のコラボの目的だった下層での実力確認もできたし私たちは配信を終えるためにも上野モフの楽園ダンジョンの上層へもどることにした。
Q.なんでご先祖は麗奈嬢は小娘呼びで天音ちゃんはフルネームなの?
A.麗奈嬢はことあるごとに白狐さんに求婚してくるから。天音ちゃんは小娘と呼ぶには良い子だから。




