Why?
◇◇◇◇◇◇
スコーピオンは研究室に篭っていた。相変わらず工具類、各種精密機器、高度なマシニングセンター、部品類。そして試作品の山が研究室中に散らばっている。机の何台ものパソコンは起動しており、何やら制作中の画面が映り込んでいた。ニート生活を謳歌、ではない。ちゃんと仕事をしていた。
「ふぅ〜」
たった今、超新星の王冠と銀河の女王冠の最終調整が完了した。
一番の難点だった稼働時間もユミナが【賢者】に、入手した機械生命体の核:”オライゴン”、そしてジニアス・ディアボリックの魔力運用水晶を複合させ無限稼働エネルギーを完成させた。
”オライゴンの欠片”を復元。動力源として新たに組み込んだ。当初の予定では超新星の王冠と銀河の女王冠で装着される二種の形態の活動時間は24時間が限界だった。機械生命体という巨大なロボット生命体を動かす圧倒的なエネルギーを欠片でも獲得した。スコーピオンとキャンサーの共同で”オライゴンの欠片”を復元。
機械生命体が問題にしていた”オライゴン”の回復物質。機械生命体は他星のエネルギー試す、または奪ってきた。スコーピオンとタウロス、キャンサーは魔力運用水晶を活用した。魔力運用水晶は周囲に漂う魔力を吸収し、効率良く還元される。持ち主に永遠の魔力を与える代物。だが、魔力運用水晶は扱いが難しい。余程の熟練魔法使いじゃないと宝の持ち腐れ状態。
ユミナは先日の一件で【賢者】になった。【賢者】を持つプレイヤーは発動できる魔法の上限が全て解放。加えて全環境要因を吸収して自身の魔力量増幅。自他の魔法を吸い込み自分の魔法、魔導具の威力を高める能力がある。魔力運用水晶と併用して魔力を使っての永久機関が完成した。
「良いデータも手に入れたことだし」
最恐の魔法使いと【キング・フォーム】との戦闘データ。星刻の錫杖・王笏の【帝王覚醒】の運用データを元に、先送りになっていた2種の武器も調整が終わっていた。実戦投入可能だ。
モニターには純白の大型剣と金環の純白の両刃槍のデータ。テーブルには2種の武器が3Dのホログラム化されていた。
大型剣の名称は【生きる方が、闘いだ】。
両刃槍の名称は【主よ、我らを導き給え】
2種の武器は星刻の錫杖・王笏同様超新星の王冠と銀河の女王冠展開中のみ使用可能な専用武器。そして【生きる方が、闘いだ】と【主よ、我らを導き給え】も押しボタン式装置:【君主の宝珠】が設置されていた。
「ユミナちゃんが起きた時に渡さないとね」
ユミナはログアウトに入っている。
プレイヤーがログインしていなくても『オニキス・オンライン』内の世界は絶えず時間が経過している。
研究室を出て極秘の倉庫に足を運んだスコーピオン。超新星の王冠と銀河の女王冠に組み込んだ新エネルギー。別の計画にも活用されていた。
重厚な扉が展開する。中に入る。倉庫内にはズラリと格納されている機種が待っていた。全部で6機。本当は7機だが、既に1機は宇宙に飛ばした。ユミナが明るい笑顔をを装着した時に宇宙のデータも獲得していた。データを解析し、秘密裏に発射された。
宇宙にある1機のお陰で星霊基地と地上を繋ぐ軌道宇宙エレベーターだった残骸を発見。【星霊基地:コンステレイ・ステーション】が月にあることも突き止めていた。後は修理するだけ。
宝石が埋め込まれた機体はどれもスコーピオンお手製の発明品。ユミナに渡す予定の新アシストアイテムたちだ。
【ジェムクインシステム】。スコーピオンが密かに開発していた可変型機体。新動力源の完成、大量に入手した機械生命体の素材が使われている。
一つしかないテーブル。上には丁寧に置かれていたのは7つの指輪。
「ユミナちゃんなら私の発明品を......正しい方向に使ってくれる」
「それは過去の自分が間違った方向に進んだからかしら?」
スコーピオンしか入れない倉庫。
「リリス様。ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ」
「貴女はワタシに確かめたい事があるんじゃない?」
「では、率直に......どこから計画通りですか」
「船の事件後、全てよ。あー勘違いしないでね。あくまでワタシは観測者。直接手を下していない。すべてユミナちゃんの日頃の行いが良かったからこその出来事よ」
機械生命体侵攻の知らせは? と言いたかったが、口を紡いだ。
どうせ敢えて侵攻軍が来るように前から仕込んでいた筈だ。あくまで仮説の段階だけど......
指を口元に置き、怪しげな笑みを浮かべる。
「ただ......偶然を必然に。点同士を繋げたって所かしら」
「主に代わって感謝します。ありがとうございました」
「気にしないで。元を辿ればリリスが招いた結果。尻拭いくらいするわ」
スコーピオンに歩み寄るリリス様。
「それにしても、考えたわね。【キング・フォーム】だったかしら」
「分かっています。超新星の王冠と銀河の女王冠をもってしてもリリス様を殺すことはできない」
「その選択は微塵も考えていない癖に。そうね、せいぜいかすり傷が付くくらいね。それにしても敢えて2種にしたわね。璃子なら一体化する」
「璃子さんなら機能を分ける非効率しません」
「璃子って天才なのに基本めんどくさがりなのよ。その性格が創った道具にも反映されている。貴女の場合、違うわね」
「確かに一体化したアイテムなら使用者に操作の不自由を与えずに済みます。ですが、私は敢えて2つにすることをタウロスに提案しました。理由は———」
「支配しても世界は救われない」
頷くスコーピオン。
「今は超新星の王冠の制御で大丈夫です。しかし、それでは悪神と変わらない。私たちも他者を縛り支配している同類になってしまう。だからこそ、銀河の女王冠を造りました。私が信じた主なら救い出し、手を取る事が出来る。私は信頼しています、ユミナちゃんを」
「誠実な子は美徳よ」
「質問していいですか?」
「ワタシに答えれる範囲ならなんでも聞いていいわよ」
「”悪魔種”と”堕天使種”は何処ですか」
他にも聞きたい事はある。
例えば、何故2つの大陸に機械類の残骸が一つも発見できないのか。機械生命体侵攻以前はユミナちゃんとアリエスが発見した高度生命工学ADAM研究所がある小島だけとか。
軌道エレベーター、宇宙に漂っていたが、地上に建造されていた部分は何故一つも見つからなかった。劣化や錆が出ない物質を使っているので朽ちた線は考えていない。
何かを隠している表情をわざと出してリリス様は口を開いた。
「今は知らなくてもいい。直ぐに時期が来るわ」
そう言い残し、倉庫からリリス様が消えた。
いつも読んで下さり有難うございます。
感想・意見・誤字脱字報告も有難うございます。
この話で3章が終わります。
次話は来週月曜日を予定しております。
次話からシーズン4の最終章になります。
〜VS昆蟲種〜
「毎回思うけど、私を故人設定はどうなの?」
「いやぁ〜 璃子が人外種だと色々めんどい展開しかなくてね」
「それに璃子さんを存命設定にすると、プレイヤーは永遠に見つけられないだろうし」
「忍者以上に隠れるのは明白」
「良いじゃない、隠居ライフを謳歌しているNPCとか」
「璃子の場合、山奥で研究とかしているでしょうね」
「プレイヤーが接近したら、駆逐プログラムとか発動して、兵器で鏖殺展開ありうる」
「ハァ〜 アナタたち3人は、私をなんだと思っているのよ」
「悪魔」
「鬼」
「乳魔人」
「ヘェ〜私が悪魔なら、正座で苦しんでいるアナタたち3人を痛めつけても良心が芽生えることはない、ということね」
「「「ぎゃああああああ!!!!!!!!!」」」




