『お前の悪夢は、私に出会ったことよ!』
ユーズゥ・マクスカは宇宙へ逃げた。ワームホールの先は別次元の宇宙。オメガ次元。ユーズゥ・マクスカの軍隊が待機していた。巨大な宇宙艦が複数。ユーズゥ・マクスカは即座に自身の宇宙艦に入り、入手したデータを元に惑星オニキスへの総攻撃を繰り出そうと考えていた。惑星オニキスとのワームホールが閉じるのも時間の問題。
下から聞こえる筈のない音。小さい飛翔体は加速する。空を急上昇してくる。
「逃さないと言った筈だ」
ヘルメットで素顔は確認できないが、ヤツだとユーズゥ・マクスカは確信した。
「しつこいっ」
稀代の女王のエネルギーを全て解放。真っ直ぐ空へ駆け登り、ワームホールに飛び込んだ。
私は宇宙空間を急上昇する。まさか、自分が宇宙に行くことになるとは夢にも思わなかった。ゆっくり宇宙の空を鑑賞したい気分ではあるけど、目先の標的を倒すことが最優先事項。
遥か遠方からビームが発射された。宇宙艦からだと分かった。裁紅の短剣で巨大なビームを切り裂く、弾く。
(出来た!? 流石、リリス様産の武器)
ビーム攻撃を回避しつつ、ユーズゥ・マクスカの攻撃もいなした。
明るい笑顔をのディスプレイに表示されている稀代の女王のエネルギー残量、液体金属の残量。どっちも限界に近い。
「っ!」
専用ウィンドウが開いた。
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・裁紅の短剣
《【魔魂封醒】:発動条件達成》
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宇宙空間でも発動できる!? なら、やることは一つ。
「魔魂封醒———起動」
私の音声に反応した裁紅の短剣。起動と同時に算出される対象との距離は測定不能。ゼロではない。それだけは確かな真実。
「お前に言い忘れた事がある」
紅色の部分は血液の如く流動的に脈を打つ。
「お前を逃さず、必ず倒す理由」
突きの構え。加速は続く。最終速度は恐ろしい数字だろう。
「よくも、私の女に手を出したな。覚悟は出来ているよな!!!」
光速を超える紅き閃光。
「【撃朱の剣】!!!!!!!!!!!!」
「こんなの悪い夢だぁああああああああああ!?!?!??」
遠くから突っ込んできたユミナと彼女を覆う尖塔のような大質量の光球。
ユミナはターゲットの胸のど真ん中を撃ち抜いた。
「お前の悪夢は、私に出会ったことよ!」
ユーズゥ・マクスカの身体は粉砕され、宇宙空間に飛び散った。
速度・威力落ちぬ【撃朱の剣】。向かう先はユーズゥ・マクスカの軍隊。巨大宇宙艦へ飛んでいくユミナ。
星が光る宇宙。だが、一瞬の時間だけ星の光を凌駕する強烈な光が宇宙に生まれた。【撃朱の剣】の攻撃を受けた全ての巨大宇宙艦は爆発した。
惑星オニキスではクエストクリアのファンファーレが鳴り響いた。
だが、一番の功労者のユミナは聞く事はなかった——————
ヒールの音が響く。床が金属板なので良く鳴る。リリス様が歩いている場所は破壊界の総本山。
「久しぶり、ワストエデン」
リリス様が会いにきたのは、機械生命体の破壊陣営の王、ワストエデン。
巨大な機械の身体は王座に座っていた。
「お久しぶりです、創造主。我が部下が失礼した」
「好奇心は時として身を滅ぼすってね......計画通り?」
「肯定であります」
ワストエデンはわざと惑星オニキスの情報をユーズゥ・マクスカが掴むように仕向けた。
「アイツは少々問題のある【破娯十三饗】でね。我が軍が滅亡する未来が待っていました」
「君の軍団全部が問題児だらけの集まりだと思うけど」
お互い微笑する。
「で、オニキスに侵攻する?」
「否。まだ時期ではございません」
「へぇ〜 意外。君の性格なら直ぐにでも侵略すると踏んでいたんだけど〜」
「創造主が干渉している星を今狙うのは、それこそ破壊の滅亡」
「その言葉を信じるわ。頑張って力を付けなさい! じゃあね〜」
リリス様の姿が影に紛れた。
「相変わらず恐ろしいお方だ」
ワストエデンは静かに呟いた。
ボルス城。自室のベットで私は目覚めた。
「自爆で死亡するとは......」
いつものなら捕食者の影爪の硬朱の甲や薔薇襲の荊乙姫で死亡しない手段をとっていた。でも、捕食者の影爪は地上にあったし、薔薇襲の荊乙姫は腕が液体金属による擬似腕だったから装備できなかった。よって無様な自爆をする羽目になった。
「幸運なのは、自爆を誰にも見られなかったことだけか」
自分の姿を見た。稀代の女王の黒のドスケベパイロットスーツのみ。ストレージを確認したところ、装甲部分は破損状態。また修理依頼出さないと行けない。他にも幽天深綺の魅姫・エクシード、明るい笑顔を、裁紅の短剣も同様の破損具合。星王の創造は液体金属が満タンになるまで使用できない。
「タウロスに怒られそうだな」
そろそろ怒りの鉄拳が来るかもしれない。もしくは『お前に次はない』とか無慈悲な言葉を掛けられるだろう。
「消失しなかっただけマシか〜」
装備全て消滅しました、なんて報告でもして見ろ。タウロスだけじゃなくてリリス様も降臨してオニキスは滅亡する。そうなれば『オニキス・オンライン』のサービス終了すると予想される。
戯言をひとしきり思ってから静かに悲しみを見せた。
三角座りになり、顔を伏せた。少しの時間が過ぎた後、顔を上げ、じっと自分の掌を見つめ始めた。
「私は......この世界を守ったんだね」
敵のレベルはそこまで高くなかった。けど、宇宙人が攻めてきた事実。彼らに侵略されないように戦った。
「前に......進めている............のかな」
扉が開く。入ってきたのはキャンサーだった。
「お目覚めですか、マスター」
「おはよう、キャンサー!」
キャンサーは落ちていた私の装備品を全て回収して、届けてくれた。
「勝ちましたね」
「暫くは宇宙人とは会いたくない」
笑うキャンサー。
「そうですね。あのような自爆特攻するくらいですから」
うん!?!? 自爆特攻、だと......!!?
「な、何故......知ってる」
「オニキス全土に映し出された映像。マスターが宇宙で機械生命体と交戦した様子と最後もバッチリ放送されました」
はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(クソでかいため息を心の中で出しました)
「隠居しよう。うん、今すぐ......」
「お供します♡」
キャンサーからキスされた。紅潮しているキャンサー。
「これからもよろしくお願いします、ユミナ!」
「うん。宜しくね、コノシェンツァ!」
キャンサーが欲しかったモノ。それは自分の全てを受け入れてくれる人。知識では決して得られない意思。キャンサーは生まれて初めて心が温かくなるのを感じた。
お幸せに!




