VS機械生命体 ①
◇◇◇◇◇◆
多種多様なモンスターの血を吸い取って成長した森林。森に生えている葉や草木など、全て凝固した血液のような色合いをしてる。この真っ赤な森林に新たな地形が追加された。
プレイヤーは落ちる。クレーターの底へ。主に戦闘職、一際リリクロス大陸での闘いを経験したアタッカーが銀色の生命体に向かって足を進めていた。見た目から得られる情報で、金属の塊。加えて二足歩行を可能とする巨大な人型生物。初めこそ、大量に放出されていた湯気で近づく事さえ出来ずにいた。しかし、物体に纏わりつく蒸気がなくなるやプレイヤーは嬉々として、戦闘を開始した。現聖女アシリアが聖女引退前最後、神託。『宇宙から惑星オニキスを侵略する者々が近づく』。数々の神託で、人々の平和を実現させた聖女。彼女の美貌、信頼できる言葉ならこれから起きる未来を信じるプレイヤーは多かった。準備し、特定の時間、場所、計5箇所に集結したプレイヤーたち。新たな情報を得ていないか聖女アシリアに聞こうとしても、先の豪華客船の事件で叶わずにいた。
戦闘開始して15分が過ぎた時、一同驚愕する。言葉が出ず絶句。呆気に取られ、武器を構えていた手が下に向いていると自覚できたものは少数。ありのまま結果だけ伝える。機械巨人が強制切断された。上下身体が切り離された。いや、表現を変えるなら”斬られた”と解釈した方が適切かもしれない。実際に遥か後方から高質量の刃。飛んできた殺傷性が極めて高い刃状の質量体は巨大ロボットを一刀両断。上半身は重力に逆らわず、森に落下した。
形成されたクレーター二つ。下半身は微動だにしない。完全に機能停止したように見える。上半身を眺めるプレイヤー。切断面から形が崩れた。固体から液体へ。液体は一人でに形を形成していく。人間的身長で誕生したロボットは数を増やす。無骨なロボットたちはクレーターを駆け上る。クレーターの中間地点にいたプレイヤーは迎撃を開始した。。簡単に倒せる耐久性で、当初は余裕と笑みを溢しながら討伐していった。が、1分後には絶望した表情が勝った。増殖する人間サイズのロボット。終わらない戦闘。徐々にプレイヤーの戦闘は分析され、押され始める。プレイヤーが持つ武器をトレース。構成する素材が足りないため、不恰好な武器が仕上がったが、プレイヤーに攻撃するには十分すぎる代物。
本格的に激化する戦場。プレイヤーの一人に襲いかかるロボット。武器を構える隙がない。終わりと直感したプレイヤー。だが、好機は訪れる。襲ってきははずのロボットは縦に真っ二つに分断した。思わず尻もちするプレイヤー。顔を上げると、自分の前に立っていた女性。
「私の獲物だ」
そう言い残し、絶世ぼ美女はロボット共を薙ぎ払う。一方、人間サイズとなったロボットたちは機能停止した下半身へ集結しつつあった。下半身に到着した人間サイズのロボットは姿を崩し、下半身に吸収され始める。一体化していく。下半身の切断面から高く伸びる金属。胴体、二本の腕、頭が再生される。30メートルを超える巨大な機械エイリアンが復活した。瞳に内蔵されている人工光が青く輝く。下を向く。
「#&$、@∂>∫」
独自の言語を発した。ヴァルゴでさえ、解析が不可能な言葉だった。
数名のプレイヤーが残っていた人間サイズのロボットに拘束され、一緒に巨大な機械生命体に吸収された。
「※......あ、あ............なるほど。使われていた言語が違っていたのか」
吸収されたプレイヤーたちの情報量を解析、自身に取り込み、言葉を取得した。
「嘗て、侵攻時に得た情報は役に立たないようだ。あの時よりも、この星の生命体は劣化したみたいだ」
「お前は、昔侵攻してきた宇宙人か?」
ヴァルゴの声に反応する。話しかけてきた見かけは人間の女を見て、うっすら笑みを溢す。
「否。情報は我らの隊長が我らに与えた。我らは隊長の命に忠実。隊長の在り方こそ、我らの在り方。我らに意思は必要としない」
「つまり、お前たちは独立した認識能力はない。隊長なる者の操り人形ということか」
「だが、我らは強いぞ......星霊」
ヴァルゴは眉を顰めた。
「周りが劣化しても、お前らは、お前らだった。我らの王もお喜びになるだろう」
「見知らぬ野郎に喜ばれてもちっとも嬉しくありません。まぁ、来ていない辺り小心者であることは決定していますが......」
機械生命体、破壊界:【破娯十三饗】の13位:ユーズゥ・マクスカ軍所属、ツッナンーコ・クスッミは震える。意思を記憶として得ていても、それ以上に身体が感知してしまった。”怒り”。だが、この感情を認識出来ないのが兵士機械生命体。兵士機械生命体の与えられたのは武力と王、隊長含め、全から個として独立を果たした存在からの指令のみ。それ以外は戦争には不必要な要素。
「我ら先発隊の指令は主に二つ」
巨大な腕を引く。
「惑星オニキスの侵攻」
伸びる腕。風圧は凄まじく地面へ降りてくる。
「星霊の回収」
腕が消滅した。綺麗に細切れになり、地面に破片が落下。
「生憎、主を置いてオニキスから消える訳には行きません。それにここでお前を倒せば成功報酬を頂けますので。なのでこちらもミッションを達成しないといけないので、直ちに倒れてください」
再び攻撃を繰り出すツッナンーコ・クスッミ。
『お前かぁぁあああああああああ!!!!』
どこからともなく聴こえた少女の声。雄叫びは空高く鳴り響いた。
ツッナンーコ・クスッミは反応出来なかった。敵の攻撃を許してしまった。
ツッナンーコ・クスッミの胴体に大きな空洞。何者かに抉られた事で生まれた穴。
穴を通り抜け、着地したのはフェンリル。上に乗っていたのはユミナだった。
「貴様......返、え..................せ」
途切れゆく言葉。ユミナが持っていたのはオレンジ色に輝く四角形。”オライゴン”。これこそ、機械生命体の心臓とも言える代物。巨大なロボットを無尽に稼働させ続けさせる核。オライゴンは機械生命体星にある物質を吸収することでエネルギーが蓄えられる。長年の調査結果からオライゴンは他の惑星の物体でもエネルギーに変換できることがわかった。消えゆく機械生命体の物質。種が絶滅させないために平和界と破壊界は他生命体との接触を図ってきた。
「ふんっ!」
捕食者の影爪が握っていたツッナンーコ・クスッミのオライゴンは粉々に崩れた。オライゴンはそう簡単に破壊できない。が、捕食者の影爪はリリス様が所持していた武器。ユミナが持つ捕食者の影爪がオリジナルの捕食者の影爪ではなくても、その攻撃力は桁違いの数値を保有している。粉々になったオライゴンと同じ時間。狂う事ない刻にツッナンーコ・クスッミ本体は機能を停止した。完全なる停止。二度と活動を許されない身体になった。
ツッナンーコ・クスッミは消滅した。散らばった金属も跡形もなく消失が確認された。宇宙人1体の討伐は直ぐにゲーム内アナウンスによって告げられた。
ツッナンーコ・クスッミに戦いを挑んだ多くのプレイヤーは報酬を受け取った。
「”オライゴンの欠片”?」
ユミナにはツッナンーコ・クスッミの残骸類以外に他プレイヤーとは違う報酬が与えられた。テキストは読まず、ストレージにしまい込んだ。
プレイヤー達は別のロボットを追うよりも、討伐成功への嬉しさ以上にユミナの姿に目が入っていた。一撃でロボットを斃す攻撃。意図も容易くロボットの心臓を破壊する勇ましさ。鬼神の写し姿。誰もが言葉をかける勇気がなかった。
「ハァ〜」
息を吐いたユミナだったが、その光景さえもプレイヤーは身震いさせる気迫があった。次に狩られるのは自分ではないのか、そう判断するプレイヤーは多かった。
別の表情を出すヴァルゴ。冷や汗が垂れ、『ヤバい』の顔だけしか出来なかった。
「......ヴァルゴ」
ヴァルゴは背筋を伸ばす。
「私はまだ、子づくりしないからぁぁあああああああああ!!!!!!!!!」
ユミナは間抜けた声で宣言した。捨て台詞めいた言動で去った。ウルウルに指示して、別の機械生命体を求め、森を駆けた。
ユミナが居なくなった後、別に意味で機能停止した嫁。自分の願いは叶わない悲しき姿。ヴァルゴはと言うと四つん這い状態から抜け出せずにいた。一連のやり取りを目撃した多くのプレイヤー。誰もが心の中で発した。
『尻姫が女性と子づくりだとぉおおおおおおおおおおお!?!???!?!?!』
女性と女性がゲーム内で子を成す。あり得ない事実に直面する現代を生きる地球人。誰もが答えを求めた。この場にいない人に向けて。機械生命体1体討伐報告よりもかなり脚色されたユミナの妊娠情報は、瞬く間に拡散され、プレイヤーたちの脳を破壊していったのだった。




