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スイリブル・フェザー  作者: CLOWD
9/19

条件・信頼・貸借


── 研究室──


「アンタら2人に第1強襲科及び聖徒会への入隊を命じる」


「え!?」

「…?」


─ 1時間前 ─


A組の生徒は全員、体力測定が終わり次第次々と解散していった。勇理達も荷物を整えて帰ろう。した時校内全域にある名前が放送された。


『1年A組、小鳥遊勇理さん 至急第3研究室までお越し下さい』


「ほら、あんた目立ち過ぎたのよ」

「そんな…!いやでも悪い事した訳では無いし…多分」

「とりあえず行ってみれば?私待っててあげるから」

「本当?ありがとう!」


計香の優しさを心に染み渡らせながら足早に研究室に向かう。しかし、呼び出すにしても1年、しかも入学間もないただの少女を研究室に呼んで何の話だろうか。疑問は沢山あるが凡そこの剣と翼の事だろう。


── 第3研究室 ──


研究室に入ると数名の生徒が翼を展開して研究員と雑談しながら何かのデータを計測していた。

それとは別の方向から声をかけられた。


「アンタが小鳥遊やな?」

「あ、はい」


そこには1人の赤いツインテールの少女と金色の長髪の少女が立っていた。


「君を呼び出したのは私達だ。私は雨宮 フレン」

「ウチは不来方 明美や」

「えっと、僕は1年生の新入生で!小鳥遊 勇理といいます!」


すると不来方と名乗ったツインテールが少し意外そうな顔をして大きな口で笑い始めた。


「はは、『僕』やって!どんなゴリマッチョが来るかハラハラしとったんやけどな!」

「え、どうしてですか?」

「 すまない、今日の体力測定の100mと持久走を見せて貰った」

「あーはい」


やはりその件か。声が上擦っていた。


「単刀直入に質問する。1年前、裏山に大穴開けたんはアンタか?」

「!!」


確かにあの山に穴を開けたのは僕だ、それをこの新座に住んでる人が知ってる所までは理解できるけど、何故僕のと断定できるんだろう?今現場は立ち入り禁止になってて中の様子は分からないようになってるのに…。


「公共のお山にあんな穴開けちゃってええんかな〜?あかんやろなぁ〜…」

「う、ぐ…いや…」

「こら、いじめるな。そいうい話をしに来たんじゃなくてな、気にしなくていい」


土地の破壊の事情聴取で呼び出した訳では無いらしい。


「いやぁつい…悪い悪い」

「では何故研究室に?」

「いくつか質問がある。まず、山の穴は君で間違いないね?これが1つ目の質問だったんだ」


勇理は軽く頷き肯定した


「2つ目、その時外敵との交戦があったみたいだが、倒したのか?」

「それは!はい!僕と友達で!」


質問に答えていると、研究室の奥から良く通る声が聞こえた


「おーい!1回座ろか?」


備え付けのテーブルと椅子に移動する。勇理と雨宮が着席した所で明美はコーヒーメーカーで人数分の紙コップにコーヒーを注ぎ自分と2人の前に差し出す。


「それで?その友達とやら今どこにおるん?」

「まだ学校にいるはずです」

「学校?どこのや」

「ここです、翼専」

「あぁ、翼専生なのか!」

「はい、さっきまで一緒にいました」


2人は少し面食らったがすぐに話題を戻し然るべき対象に向かう。


「雨宮、放送たのめるか?」

「わかった」


そして計香も校内放送によって呼び出された。


「あんたまさか私を売ったりしてないでしょうね…」

「違う違う!」


計香も着席させて本題へ。


「ほな、こっから本題や」


ここから派生する話題に2人は心当たりが無かった。

突然重くなった空気に固唾を飲んだ。


「アンタら2人に第1強襲科及び聖徒会への入隊を命じる」


「え!?」

「…?」


計香はこの学校について多少調べていた為、聖徒会についても知っていたが、勇理はその聖徒会が何なのか理解できていなかった。


「勇理、分かって無いでしょ」

「うん」

「私達すごい事言われてるよ?」


勇理は聖徒会と第1強襲科について説明を受けた。


「第1強襲科って事は雨宮さんと不来方さんですよね!わぁ!お会いできて光栄です!私要 計香っていいます!是非入隊させて下さい!」

「おう!よろしゅう!」

「…」


栄えある強襲科に所属できる栄光に目を輝かせる計香だったが、勇理は疑問に思っていた。


僕も計香もこの前入学したばかりの新入生だ。それに入隊希望や隊員としての進退は2年で決めるはず…3・4で適正訓練、5年で仮入隊、そして卒業と同時に正式に機関の隊員になる。全部で5年の年月をかけて晴れて『機関員』になれるのに僕と計香だけその過程をたった1度の戦闘勝利で飛ばしていい物なのかな?まぁ決めるのはその部隊の生徒・機関員が半数以上許可すればOKらしいけど…。

聖徒会っていうのはまだよく分からないや。


「お2人で決めてしまって良かったんですか?」

「そうだな。隊員半数以上の許可がいるが、生憎第1強襲科は私と明美の2人だけなんだ」

「本当に勇理はなんにも調べて無いのねー」

「いやいや、普通こんなもんやで?」


計香が内部事情に詳し過ぎるだけだと思う!普通、各部隊員の名前なんて知ってる訳ないじゃん!


「アンタらをウチに入れたい理由はいくつかある。それら全て了解ってんなら交渉は成立、正式に入隊や」

「理由、ですか?」


計香は首を傾げる。


「1つ目、小鳥遊勇理。アンタの翼と剣の研究データが欲しい。」


勇理自信も自分の翼や剣については知りたいので、研究なら進んで協力できる。


「僕もこの剣について知りたい事がいっぱいあるので、是非お願いします!」

「あぁ、そう言ってくれると助かる。翼や剣の研究は本人の意思が最優先で進められるからな」

「それと、2つ目。要 計香、アンタ『全身展開』出来るやろ?」


『全身展開』という謎の単語を会話に出されると、計香は目を見開き激しく動揺し始めた。


「な、何故知ってるんですか!?1度も学校では全身展開をしていませんけど!」

「わかるんだ、明美や私もできるからな。それでも理由を聞かれると、答えとしては…」

「何となく、やな」


そこに1人、状況を把握できていない者が挙手した。


「すみません!『全身展開』って何でしょうか!」


そこからか、と勇理以外の3人は天を仰ぐ。

そして計香が勇理の目を真っ直ぐ見ると、説明を始めた。


「いい?まず「展開」ってどういう物?」

「自分の「剣」に眠る能力を一定の行動を行った時、「翼」という形で身に纏う事です!」

「そう、じゃあ「剣」の能力ってどこから来てるの?」

「ど、どこから?」

「そこね。まず「剣」の中にはその能力を持つ「何者か」がいて、その何者かに力を借りて「翼」として展開される訳。でもそれはほんの1部なの」


勇理は少し驚いた。今の勇理でも十分に戦えるが、まだ先があるのだと言う。


「ほんの1部?」

「そう。あの山で私が出した水を覚えてる?」

「あ!あれ!」

「あれは私の「剣」能力を多めに借りたから出せたの」

「へぇ」


すると計香は剣を抜剣して呟いた。


「お願い、ワーテル」


計香を水が取り囲み凝縮され、腕・脚・頭・胴体にそれぞれまとわりついた。

まるで青いドレスを纏っているようだった。


「へへん!どうよ!私の全身展開!」

「…す、凄い!」

「でしょでしょー?もっと褒めてもいいよー?」


あれ?こんなキャラだったっけ?


「計香?」

「ふふん!私はワーテル!計香の剣の妖精よ!」

「え!?計香はどこに行っちゃったの!?」


すると計香の身体でワーテルの名乗る少女からもう1人の声がした。


「大丈夫、力を借りるっていうのはこういう事なの」

「せやで、今の人類に出来るのは翼の展開までや。だから全身展開するには中におる何者かと会話せんとあかんっちゅう訳やな」

「今は計ちゃんの身体を30%くらい借りてるの!全身展開には25%身体を貸せば出来るようになるよ!」


するとフレンが勇理の前に出て、低い声で補足した。


「だが、この「全身展開」にはリスクがある」


勇理は固唾を飲み真剣な表情で耳をすませた。


「身体を別の人格に貸すというのは、それだけ自分を失う事に他ならない。いいかい?絶対に50%の力を借りるんじゃ無いぞ?絶対だ」

「どうしてですか?その分だけ強くなれるじゃないですか?」

「駄目だ。50%借りるとな、中の何者かは一気にお前の身体を奪いに来るぞ。50%貸してしまえばこちらの人格も50%、どちらかが仕掛けた時点で身体の所有者が決まるんだ。この世に完全な信頼関係は無い」


フレンの言葉に思わずたじろぐ勇理。無理も無い、自分の剣が下手をすれば自分の人格を殺しに来るというのだ。

そんな会話の中、計香の身体で他人事のように口笛を吹くワーテル。


「わ、ワーテルさんは、計香を奪いませんよね?だって仲良さそうですもん…!」

「さぁね〜?確かにすごく気が合うけど」


計香は全身展開を解き制服姿に戻った。


「まぁそういう訳で、声が聞こえたら会話を試してみるといいんじゃない?でも簡単に身体を貸しちゃだめだからね!良い奴ばっかりじゃないんだからね!」

「分かってるって…」


ため息をつく計香と苦笑いする面々。

すると明美が声を張り上げた。


「それとこれがアンタらを受け入れた最後の理由や!」

「そうだな。これが1番問題だな」


それ程重要な件がまだあるのかと何度目か分からない緊張が勇理と計香を襲う。


「その内容は…」

「「内容は…?」」




「体育祭の準備や!!!」




「「はい?」」


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