44、王との謁見
何故こんな時間……本日もよろしくお願いします。
魔導石を献上する為に王都に向け馬車を走らせます。
馬車は私が創った最新型で揺れの少ない高速仕様です。
残念ながらゴーレム馬の使用は、目立つからと認められ無かった……あの馬車を走らせといて今更感が過ぎますね。
引きは軽いが速度があるので馬の疲労は従来の七割ほどでしょうか?
このペースなら四日とかからず王都に着きそうです。
先触れの馬を走らせ、宿の確保をしつつ王都で王との謁見を申請させる予定になってます。
普段泊まっている宿場町を一つ過ぎた所に宿を取り宿泊。
この煮物とても美味しいのでもっと下さい!
翌朝、馬の具合が悪くて少し遅れました。慣れない走りで疲れたのかな? ナデナデしたら治りました。
二日目、王都手前の山の麓で宿を取ります。
この山さえ越えれば王都まで直ぐです。それはともかく、山菜おかわり!
翌朝、馬車の車輪が少し傷んでました。耐久テストとかしませんでしたからね。ナデナデしたら直りました。
九十九折りの山道を進み……かなり険しい道ですね。
落石が激しく、弾き飛ばすのが大変です。
普段からこんな道なのですか? もう少し改善しましょうよ?
……などと思っていたら、比較的大きな落石が馬車の側面に当たり横転しました。
その横転した馬車に目掛け盗賊らしき一行が突撃してきます。
御者の方が槍で刺され、馬車から這いずり出た二人の男性と一人の少女も剣や槍で身体中を刺され動かなくなりました。
盗賊達は積み荷を奪い、馬車に火をかけて逃走しました。
(終)
「と、言う感じでジョウエールとニコラハウムとミーユは、山賊達に殺され積み荷を盗まれた訳です」
此処は王都にある宿屋の一室、そこに私達は四日前から宿泊していました。
「そのネーミングセンスはともかく。作り物とは言え、自分の死体を見るのは気分が良いものではないな」
部屋の中央には刺され焼け焦げた自分達の死体……御者付き。
「ジョエルさん、自分そっくりの死体を見て気分が良くなる変態に心当たりありますか? 」
「……そう言えばまだ会った事ないな、ミウの知り合いには居ないのか? 」
「知ってる変態は女装変態だけですよ」
剣で刺され焼かれたのは、私達の外見を【スキャン】して、骨型ゴーレムの骨に牛や豚の肉と内臓を材料に【3Dプリンター】で肉付けして、化粧で肌の色を付け服を着せた偽物。
盗賊達が上手に焼いてくれたおかげで、タレをつけたくなるほど香ばしいです。
すぐ近くで見られるとバレますが、先触れの方が宿の手配から誘導まで上手くしてくれたのでそれほど人目につかず移動出来ました。
貴族だから喋ったり素早く動く必要が無くて制御は楽でしたね。
「でも馬の疲労や体調までは作り込め無かったので、本物のお馬さんには可哀想な事をしましたね」
「それで、盗賊の行き先は調べがついたのか? 」
「盗賊の方は無理でしたね、別の人とのすれ違いに荷物を渡したり、荷物を置き去りにして別の人が拾ったり、荷馬車の中に投げ込んだり……手間を掛けて此処まで運んでますね」
最終的に積み荷が運ばれた場所を王都を【サーチ】した地図に示します。
「ふむ、やはりロロリの屋敷か。フェデッの奴は此方に向かっているのか? 」
「あのオークモドキなら帰りがけに山を超えた辺りで見かけましたね」
「普通に来たら六日はかかる道のり、かなり急いで来たな……」
「それだけ重要な案件ですからなぁ……どうぞ、ミウさん。お疲れだったでしょう」
ニコラハムさんがお茶を煎れてくれました。
「ありがとうございます、私を労ってくれるのはニコラハムさんだけですよ……」
なにしろ、積み荷を乗せた馬車が出る一日前、私は浮子さんにジョエルさんとニコラハムさんを乗せ王都に出発。
約半日の飛行で王都に着き、二人をこの宿屋に泊まらせたら再びメイリンの街に……
その後は光学迷彩魔法【ステルス】を創り、姿を消して上空から馬車を監視。夜だけコッソリ入れ替わりご飯を堪能。
毒を盛られた馬を治療し、壊された馬車の車輪を直し、落石を程よく弾き飛ばしながら誘導して馬車を横転……
それから積み荷の位置を空からチェックしながら追跡調査。
「やっと帰ってきたら『状況を聞こうか』と言われ報告会、ハーブティーの優しい味が染み渡りますよ……」
オークモドキが王都に着いたのはその日の夜でした。
翌朝、ジョエルさんの予想通りに魔導石が動き始めました。
行き先は王城のようですね、私達は浮子さんに乗り王都にあるメイリン家の別邸に行き身支度を整えます。
私が最初に創った装飾馬車とゴーレム馬を取り出し乗車、王城へと向かいます。
「このままですと……城にはほぼ同着ですね」
そして何処かのアトラクションに在りそうな、やたら塔がアチコチに建っているお城に到着しました。
「あの塔から塔へと移動するの……凄く面倒そうですよね? 登り下りの繰り返しですよ」
「……この城を見てそんな感想を言った者は初めてだな」
城門前には豪華な馬車が一台、オークモドキですね。
ちょうど降りる所でした、此方のゴーレム馬車を見て驚いてます。
「お前はメイリン! それにあの方田舎娘! 何で生き……いや、何しに来た? 」
「何しにも、王に謁見の願いを出してあるのだが」
控え室で待たされている間に献上品の準備、お城の人に献上品を持たせ謁見の間に向かいます。
扉の前で待たされている間にオークモドキもやって来ました。
「謁見の申し出をしたから引き返せないのか? 恥をかく前に帰った方が身のためだぞ! 」
オークモドキが隣で吼えててうるさいですね。
やがて扉が開き、ジョエルさんにエスコートされ中へと入ります。
正面の椅子に誰か座ってますね、あれが王様ですか。
あまり見ないようにうつむき加減で進み、片膝立ちで待機……
「ワシがクレーロン・フォルン・ファーレである。面を上げ楽にせよ」
「さて、此度なにやら献上したい物があるとの申し出だが、ダンジョンで何か珍しい物が出たのか? 」
「はい、ファーレ王。大変貴重で素晴らしい物が出ました。此方です、なんと魔導石にございます」
王様の問いにオークモドキが誇らしげに言うと謁見の間に居る人達からどよめきが聞こえてきました。
「何と! 魔導石だと? 本物なのか?! おい! 王宮鑑定士を呼べ、大至急だ! 」
幾人かの騎士が走り部屋を出て行きます。
お付きの人が魔導石の入った箱を王様の下へと運び渡します。
「ううむ、鑑定のレベルが高くないワシにも魔導石と読み取れるな。コレが魔導石なのか不思議な結晶だな」
やがて鑑定士の方が来て、魔導石の鑑定が始まります……が
「王よ、申し上げ難いのですが……これは本物でもあり偽物でもあります」
「本物だけど偽物とは何だ? 」
「確かに鑑定すると、魔導石(☆9)とありますから本物だと思えるのですが……同時に『製作者・ミウ、メイリン家ジョエルと共に王都への輸送中にロロリ家が雇った者に襲われ強奪される、ロロリ家フェデッにより王へと献上される』と、作った人の名前とこの場に来るまでの経緯が書かれております。魔導石を鑑定するのは初めてなのですが、これが魔導石の力なのか違うのか、どちらにせよ加工された品物です」
「何だそれは……作られた? 魔導石がか? しかも経緯が、フェデッ! どう言う事だ! 」
「い、いや私は知らな……」
メイリンの街をでる前にこうなる事を予想して……
鑑定結果の補足欄を書き換える【テキストエディタ】を創り書き換えておきました。
……魔導石は本物ですよ?
此処まで読んで頂き、ありがとうございます。




