21、オーブンと新作料理
本日三話目です。
ココちゃんとセイランさんの服が無事に完成しました。
次は料理ですね、昼の混雑がそろそろ終わるので食堂に顔を出しましょう。
「ヴィヴィアさん、生きてますか? 」
「おう、もう死んでっぞ! 」
虎の顔色など全然わかりませが、忙しさでヘトヘトですね。
「よし、ココちゃん最大の障害は無くなった! 今こそ! 」
「何が良しだ! えぇぃ死んでられるかぁ! 」
残念、まだまだ元気でした……
「それじゃあ、ココちゃんお手伝い開始ですよ」
「あいー、ココが、はこぶ」
メイド服を着たままのココちゃんが早速お手伝いを始めました。
「おい、あの服はどうしたんだよ? 」
お義父さんは、ココちゃんの着ているメイド服がかなり気になるようですね。
「先程私が創った、今度の晩餐で着る服です。もし死んでたなら元気を出させようかと見せに来ました」
愛娘の可愛い姿を見れば元気百倍ですよね?
「いやいや可愛いけどよ、せっかくの服を汚したらどうするんだ! 」
「大丈夫ですよ、汚そうと思ってもそう簡単には汚せない特別仕様ですから」
どんな汚れも叩けば落ちるらしい特殊能力です。
まぁ、仮に汚損しても当日に即創り直せますから気にしない方向で。
「まさかお前、あの服にレイゾウコみたいな石を……」
「まさか? まだ、そこまではしてませんよ? 」
その内にやるかも知れませんが。
「いつかはヤル気なのかよ……」
さて、私も軽く皿洗いのお手伝いしている内にお客さんもだいぶ捌けてきましたね。
ヴィヴィアさんの手も空いてきたので新作の料理を考案しましょう。
「とりあえず、オーブンを持って来ました、あっちゃんです」
「あっちゃん……またか! またなのか! 」
はい、またです。調理場の片隅に置いときますね。
「普通のオーブンですよ? これがあれば料理の幅が広がりますから、あると便利ですよ? 」
「オーブンの有用性は判るよ、俺も将来は買おうかと検討していたからな」
おや、ちょうど欲しがっていたのですか。それは好都合でしたね。
「購入を躊躇っていた理由は何でしょう? 」
「まずは価格だな、オーブンは高い。それと魔力コストも高い、そして焼いている最中に蓋を開けられないから、焼き上がりのタイミングを見極めるのが難しい。扱いづらい代物なんだよ」
なるほど大変なのですね。
「しかし大丈夫です、今回もお試し価格ですので無償提供いたします」
「それは助かるけど……」
「運用コストですが、消費量の統計を取るまでは私が提供します」
「そこまでして貰って良いのかよ? 」
「データを取ったら商業ギルドに売りつけるから構いません」
加熱魔法や冷却魔法を付与した板だけの販売なら安くなるかな?
「焼き上がり等の経験ですが、この子は頭が良いので口頭で指示すればその通りに焼いてくれます! 」
「普通じゃねえよ! それ、ぜんぜん普通のオーブンじゃねえよ! 」
便利な普通のオーブンですよ?
「では、オーブンの事はある程度の調べはしてあるみたいなので。レンジの部分から説明しましょう」
「まて、レンジって何だ? コレはオーブンなのだろ? 」
「正確にはスチームオーブンレンジですね。スチームオーブンとレンジの機能が合わさってます」
何か頭を抱えてますが続けましょう。
「まあ、説明するほども無くレンジの部分は簡単です」
お昼の残りの冷めかけた煮込みを器によそい、オーブンレンジの中に置きます。
「あっちゃん、レンジで温めて! 」
蓋を閉め、あっちゃんに声をかけると作動します。
十数秒後、チーンと言う心地よい音が聞こえ温め完了です。
「この音を出すのに手間取りました! このオーブン最大の拘り部分です! さあ煮込みが暖まってますので確認して下さい」
取り出した煮込みをテーブルに置きヴィヴィアさんが確認します。
「うん、しっかり温まってるな。あの短時間で器ごと温めたのか? 」
「ええ、レンジは火を使わず料理の中の水分を加熱する機能なのです」
その代わりに乾いた物や金属の器では使えない欠点も付け加えます。
「例えば、焼いたけど冷えてしまったお肉とかを、焦げ目を付けずにまたアツアツに出来ます」
「なるほどねえ、焼かず、蒸さず、煮もしないで食材を加熱するのか。面白い使い方が出来そうだな」
流石に本職、もうレンジの可能性を色々考え始めました。
「次はオーブンの説明ですね、あっちゃん、オーブンを余熱して! 」
「その辺は普通のオーブンなんだな」
私はアップルの実を切りながらヴィヴィアさんがオーブンに対して、どれだけ知識を持っているかを聞きます。
「オーブンの事は色々と勉強した様なので少し質問します。焼きムラが出来たり、受け皿に水を張るのを知ってますか?」
「おう、安物で火力が弱いオーブンだと置き場所で焼き加減が違うとか、焼き乾かない様に水皿を使う方法だろ?」
基本的な事は知っている様ですね、消毒した瓶にアップルを入れ砂糖水を注ぎ込み、瓶をよく振ってから【錬金時短】。
「このオーブンは中で熱い風が動き回るので焼きムラが出ないのです」
「なるほど食材に満遍なく熱を伝えるのだな? 」
熱風循環機能っと言う物ですね、ノンオイルフライとかにも使えます、ボウルに入れた小麦粉に水を加え瓶底のオリを入れ、よく練って丸めて【錬金時短】。
「そして、スチームオーブンとは沸騰したお湯より遥かに熱い蒸気を使って焼き上げる方式です。つまり水で焼くので事前に水皿は使いません」
「水で焼くと言うのが想像出来ないが、水皿を使わなくて良いのは一手間省ける訳か」
三百度近い水蒸気が叩きつけられるみたいですね、小麦粉団子のガスを抜いて丸め直したら再び【錬金時短】。
「後は操作方法ですが、先ほどからしている様に声をかければ実行してくれます。レンジやスチームやグリルでどれだけ焼いてくれと指定して下さい」
「それはそうと、お前もさっきから何をしているんだ? 」
形を整えナイフで切れ目を入れて、予熱したオーブンに入れます。
「判りませんでしたか? パンを作っているんですよ? あっちゃん、パンを焼いて! 」
「わかんねぇよ! アップルと小麦粉でパンが作れるのか? 」
「時間の掛かる途中経過は錬金術で端折りましたが、手順としては間違ってない……筈ですよ? 」
流石に焼き上げる時間までは飛ばせないみたいですね、少しの間待ちましょう。
「待っている間が勿体無いので次に行きます。まずはこの骨と腱を沢山煮て」
「スープでも作るのか? 」
似ているけど違います、煮てはいますが……
「時間がかかるので【粉砕】【抽出】【分離】藁を焼いた灰を入れた水の上澄みを入れて【調合】」
出来た液に砂糖と果汁とフルーツを幾つか入れ、冷蔵庫に入れて貰います。
オーブンのベルが鳴りパンが焼けた事を伝えます。
「さて、ちょうどパンが焼けましたので試食しましょう」
今回作ったのはカンパーニュ(仮)です。
「微かにアップルの香りがして表面はカリカリ、中身はシットリ。それなりに成功ですが。ヴィヴィアさん如何です? 」
「料理を選びそうな食感だが、悪くはないな。」
今までの料理は堅い黒パンを想定していたので、このパンとは少し合わない味付けでしたね。
「ココちゃん、はいアーンして」
パンの白い所だけをむしり取ってココちゃんのお口に……
「おいひい、アッポーの、あじ、する」
子供には菓子パンみたいな感じでウケるかな?
「今回はアップルを使いましたが他の果物でも作れますよ、通常は瓶を毎日数回ほど振って五日か六日ほどかかりますね」
ついでに、天然酵母の元になる食材も幾つか伝えておきます。
続いて冷蔵庫で冷やした物、フルーツゼリーですね。
「これは凄いな、見た目が綺麗だし味も良い。」
「冷製料理を目的としての晩餐ですので、よく冷やしたデザートを作ってみました」
この店の定番料理であるトロトロ牛の煮込みも濃度を高めて冷やせばこれと似たような状態になる事も伝えておく。
煮凝りとかアスピックと言う料理ですね、お酒の摘みにどうぞ。
「今回は私が錬金術で途中経過を省きました、しかし当然ながら調理で再現が可能なので気に入ったのならば後日再現してみて下さい」
ヴィヴィアさんは、新しい玩具を貰った子供みたいな目でゼリーやパンを仕込み始めている。
もう聞こえてないみたいなので調理場を去りましょう。
此処まで読んで頂き、ありがとうございます。




