13.ダンジョン探索許可を貰った。
本日もよろしくお願いします。
「あら、ミウちゃん可愛いの着てきたわね」
翌朝、冒険者ギルドに入ったらステラさんが開口一番にそう言ってきた。
「えぇ、昨日あれから買い物をして……変じゃないですか? それと、冒険の道具も一通り買っておきました」
「大丈夫! 可愛い可愛い! 道具も有るのね、確認してみていい? 」
「どうぞ? 」
背負い袋を収納から取り出し、テーブルの上に置いてステラさんに中身を確認して貰います。
「そうよねー、ミウちゃん収納を持ってる人だったわねぇ……」
ステラさん、少し遠い目をしていますが大丈夫でしょうか?
「んー、コレとコレとコレ……うん。後はポーションや保存食かな? 入る前に買い忘れなきゃ大丈夫ね、武器は何にしたの? 」
「この杖を買いました」
背負い袋を収納して替わりに杖を取り出し構えてみせます。
「ミウちゃん向けのもっと可愛らしいステッキが在ったのに……」
空中に光の線を描いて変身しそうな物は買いませんよ?
「それにしても、冒険者の怪我や死亡は自己責任だと思ってましたが? ダンジョンに関しては随分と親切なのですね」
「ダンジョンはこの街の主要産業だけど、当たると大きいギャンブルでもあるからねぇ。規制せず放っといたら一山狙いが押し寄せて酷い事になるのよ。自己責任とは言え明らかに実力の足りない人を見殺しにするほどギルドは薄情じゃないつもりよ? 」
ダンジョンが主要産業なのですか?
「ダンジョンが在るからこの街が出来て、ダンジョンが在るからこの街が此処まで発展した、くらいには立派なこの街の収入源ね」
話を聞いてみると、どうやらダンジョンから魔石は勿論、食材や鉱石や木材が採れるようです。
そしてレアなアーティファクトを見つけたらかなりの収入らしく……
そんなに色々と採れるなんてダンジョンとは不思議な所ですね。
「後はミウちゃんの戦闘力の試験だけど、ゴブリン程度なら魔法で倒せるのよねぇ……ギジーさん、どうします? 」
ステラさんがテーブル席に居るギジーさんに声をかけて何やら聞いてますが。
「あー? 戦闘試験? ゴブリンを魔法で倒した実績があんなら試験場の木偶に撃たせての評価で十分だろ」
おや、この人はただの暇している酔っぱらいじゃなかったのですか?
「ギジーさんはお酒さえ飲まなきゃ、ベテランの指導員なんですよ、お酒さえ飲まなきゃ……」
指導員! この酔っぱらいが!?
「おいおい酷いな。仕事明けくらい飲ませてくれよ、今朝まで付き添って潜ってたんだからよ。ほら早く酒飲みたいから訓練場に行くぞ! 」
ギルドの建物の裏手に回ると外周を守る壁との間に小さな運動場があり、壁際に丸太の案山子が何体か並んでます。
「あそこにある丸太をゴブリンだと思って魔法で攻撃して見てくれ、それで評価する」
「判ったわ、あの丸太を攻撃すれば良いのね」
ギシーさんがおおよそ百メートル先に立っている丸太を指さしてます。
「よし、では好きに始めてくれ! 」
私は右の人差し指を一本伸ばし、圧縮した【ウインドアロー】を一発、ピチュン。
不可視の弾丸が丸太に命中しそのまま貫通していく。
「ミウちゃんどうしたの? 攻撃しに行かないの? 」
ステラさんが心配そうに此方を見てきますが……
二発目【ファイヤーアロー】、三発目【ウォーターアロー】、四発目【ストーンアロー】、これでも攻撃しているんですけどね……
「してますよ? コレが五発目【ライトアロー】です。全部当たりました、もっと派手な方が良かったですか? 」
切断するとか燃やすとか?
「……え? 此処から攻撃してたのか!? 」
ギジーさんが丸太を確認しに走って行くと。
「何じゃこりゃあああ! 丸太に指の太さの穴が五つ貫通している! 」
まあ、ゴブリン相手ならあの位で倒せますし……
「杖も詠唱も使って無いのに、この距離の的をあの威力、あの速度で連射したの?! 」
「……お嬢ちゃん凄い魔法使いなんだな」
あ! 杖を取り出すのをわすれてましたね。
ついでに収納から杖を取り出して構えてみます。
……えっと、コレ杖の何処から魔法が出るんですか?
先端から出るのですか? 狙い方が良く判りません。
ロケットランチャーの様に肩に担いでみます、これなら狙い易いですね。
「お嬢ちゃん一体何がしたいんだ? 」
ギシーさんが呆れて此方を見ています。
「いや、杖だとどう狙って良いものかと……」
肩に担いだまま発射ボタンを押す感じでポチッとな。
「攻撃力は問題無しで合格だな」
ギシーさんが冷や汗を流しながら横目で丸太の方をチラチラ見ながら合格をくれました。
「ありがとうございます」
私も横目でチラチラと丸太の方を見ながら答えます。
「敢えて言うなら、他の人が居る時は今の魔法は使わない方が良いぞ? 」
私がロケットランチャー気分で撃った火炎魔法は標的となった丸太を爆散させ、周囲の丸太を五本ばかり薙ぎ倒す爆風を生み出す惨事を引き起こしました。
ノリって怖いですね。
「これがダンジョン探索許可証付きのミウちゃんの新しいギルドカードよ」
あの後、ギルドのカウンターに戻りギルド証を書き換えて貰いました。
剣と杖だけが彫り描かれていたシンプルなプレートだったのが、今度は草花を透かし彫りした見た目が豪華なプレートです。
冒険者としてランクアップでもしたのでしょうか?
「ミウちゃんは女の子だし、錬金術師だからそのデザインにしてみたわ」
……え? 図柄選べたの?! 単なるデザイン違いなだけ?
どうやら情報を書き込むカードの大きさや材質が決まってるだけで、冒険者ギルドのマークさえ付いていれば他の部分は自由なのだとか……オリジナルカードとか作れそうですね。
「そのカードが有ればギルド二階の資料室の閲覧許可が出るわよ? 」
「資料室ですか? 」
「そう、ダンジョンに居る魔物、仕掛けられている罠と代表的な解除方法、公開出来る範囲での素材やお宝、その他スキルや魔法に関係する資料ね」
ほほう、そんな物があるのですか。カウンターの裏横にある階段から上がって行って良いみたいなので、後で見に行きましょう。
「後は、最初の二回はダンジョンにベテラン指導員が付き添いしてくれるわ」
あぁ、初めてで右も左も判らないダンジョンを実地で軽く案内してくれるんですね? でも……
「……ベテランの指導員って、あのギジーさんですか? 」
「安心して、事前に申請しておけば当日は飲まない筈だから……たぶん……」
前日は止められないのですね?
「何で俺の服だけ洗濯カゴが別なんだぁ! 一緒に洗ってくれよー! 」
あ、酔っぱらいが既に出来上がって他の冒険者に絡んでいる……
「……どうしても付き添って貰わないと駄目なのですか? そうですか……、まぁダンジョンは後日として、二階の資料室を見させて下さい」
ステラさんにデスヨネーって感じの苦笑いをされ、私は二階に案内された。
「この扉の横の水晶に先程のギルドカードをかざしてみて」
カードをかざしたら水晶が青く光りドアのロックが外れました、摩訶不思議なテクノロジー再びです!
中に入ると脇に司書カウンターがあり、書架とテーブル席が幾つか室内に並んでいます。
他の利用者の姿は未だありませんね。
「飲食禁止、持ち出し禁止、汚損や破損に注意して読み終わった本は元の場所に戻す。注意事項はそのくらいね、何かあったらこのカウンターに居る司書に聞いてね? 」
司書? カウンターには誰も居ませんでしたが……まさか……
ステラさんがカウンターの中に入り、手に持っていたカバンから書類を取り出し始めてます。
やはりステラさんでしたか……本当に何でもしてますね。
此処まで読んで頂き、ありがとうございます。




