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マンション管理人の日常  作者: みずすまし
非日常
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14/15

変質者 前編

 桜の花もちらほらと咲き始め、また春が来たなぁとようやく実感できる日々が続いている。

 最近の天気はおかしい。三月なのに雪が突然降り出し、春用に衣替えをした直後だというのにコートを引っ張り出す羽目になったり。

 気温の変化も落ち着き、ようやく薄手の長袖に着替えることが出来る。

 ここしばらく家賃の滞納も修繕がいるような事もなく、落ち着いた日々が続いている。


 今日は自宅でのんびり経理作業。まぁ大したことはしていないが。

 税理士の方と顧問契約を結んでいて、一月に一回確認してもらうことと、決算書など作成してもらうくらいだけどね。

 最近の会計ソフトは良くできていて、それだけでも決算書は作れる。

 だけど、偶にだけど税法上の問題が出てきたり、繰越処理を間違えてしまっていた時など、お世話になっている。

 さらにある程度機材を揃えれば、ネットで書類提出なんかも出来るけど、一年に一回の為に高い機材は買いたくないしなぁ。

 代わりに税理士さんには、書類の電子化やツールの紹介、便利なサービスなど紹介したりしている。


 税理士さんは若い方なんだけど税法の勉強で手一杯で、パソコンは基本しか使えないという方が多い。これば弁護士さんもそうだった。

 どちらも決まった作業になっているので、それ以外の使い方を覚える必要がないそうだ。

 意外だったのが、良いメーラーを教えてほしい、という相談が多いことだ。

 OSに含まれているメーラーをそのまま使っている方が多いのだが、メール件数が増えてくると遅くなったり検索が遅すぎたりして困ることが多いと。


 まぁそういった雑談も大事な話なので、月一回のお話会となっている。

 そのため、顧問料などは格安で受けてくれているので、ウィンーウィンーな関係だ。


 今回はその雑談関係で、珍しい話がでた。

 知り合いがストーカー被害にあっているという。

 そしてストーカーをしているのが、なんと住んでいるマンション管理を委託されている業者の社員だという。


「前橋さん、どうにかなりませんかね?」

「流石にそれは警察案件ですよ。それよりも、なんで僕に話を振るんですか。僕なんて個人でやっている、ただのマンション管理人ですよ?」

「そうですよねぇ、ただ、マンション管理ということで、今までそういった事例を何か知っているのではないかと」

「その場合、僕がストーカー役なんですけど!?」


 まぁ冗談はともかく、なんとなく方法に思い当たる所がある。


「たぶんですけど警察や会社に相談しても、仕事できていた、で話が終わってしまって流されたって感じじゃないですか?」

「そうなんですよ、部屋にも合鍵を使って入られた事があるんですが、不審者がいると連絡があったので緊急で見に行った、とかで流されたそうです。実際に部屋が荒らされたらしく、警察も泥棒として捜査しているらしいのですが、やはり管理会社のその社員は疑われていません。女性一人暮らしなので、そりゃもう怯えてしまって」

「そのマンションって賃貸ですか?そらなら引っ越しをしたほうが良いですよ。安全には変えられないですし」

「本人も引越をしたいそうですが、そのマンションに引越をしてすぐなんで、貯金が無くて出来ないそうなんです」

「あー、それはお金も手間も掛かりますしね」


 僕は一息ついて、冷めてしまった珈琲を飲む。

 ついでに自分で用意したお茶菓子も摘まんでおく。

 税理士さんも、一緒に飲んで口を湿らせている。


「それでですね、彼女は恩師の娘さんなんですよ。なので前橋さんのマンションで受け入れてもらえないですか?引越代は私が出しますし」

「……正直に言って敬遠したいお話ですよね。引越と一緒にストーカーが着いてくるかもって話ですし。けど、良いですよ。その彼女が悪い訳じゃないですし」

「助かります!なにせ彼女は管理人とか管理会社にもすっかり不信感を持ってしまって、知らないところには行けないと。実家も会社から飛行機の距離で離れているので頼れないそうで」


 テーブルに両手を着いて頭を下げた相手を見て、よほど困っていたんだとは思う。

 ならばなるべく早く解決に向かうように手を打とう。


「頭を上げてください。それに問題はまだあるんですよ、ここの家賃知っているでしょ。ここは最低で2DKなんですから、その分家賃は高いんですよ。私も商売なので、流石に只では貸せないですよ。なので短期での引越として特約条件つけますが、その期間だけ家賃を少し負けます。それと引越を一月かけて行うように伝えてください。その間は家賃を発生させませんから」

「ありがとうございます!ただ、なんで一月かけて引越なんですか?」

「色々理由はあります。まず管理会社に引越先をばれないようにする事。退去時はたぶん聞かれると思いますが、実家に帰ることにしたほうが無難でしょう。両親が怪我して、看病に帰ることになったとか。そしてもう一つ。大抵は退去します、はいそうですか、とはいかないんです。一月前通告というのが、たぶん契約書にはあるはずです。出て行く一ヶ月前に連絡しないと、早めに退去しても一ヶ月家賃は発生することになります。両方の家賃を払うことは大変でしょう。だから、契約期間と、相手に引越先がばれないように荷物を一ヶ月かけて運び出してください」

「あ、そういったものがあるんですね。それに相手にばれないようにするのは確かに大事ですね、伝えておきます」

「その他契約に関しては、小此木不動産が関係しますので、そっちの契約料とか火災保険とかお願いしますね。あとそっちのマンション退去時に、引き渡しで立ち会いを求められると思います。それは本人がいかないか、代理人をたてると良いでしょう。特に敷金返金でトラブルが起きないように本人を希望する、とか言ってくるかもしれないですし」


 その他細々した注意を税理士さんに伝えると、表情がだいぶ明るくなってきた。

 今回の引越は危険から逃げる手でもあるけど、これで相手が追いかけてきたら今度は仕事という手が使えない。それで逮捕なり接触禁止令とか取れればいいんだけどね。


 こうして短期だけれども、新しい住人が増えることが確定した。

短期の旅行に行くので、続きはちょっと遅れます。

旅先で投稿できたらするかも。


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