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【凍結中】青い人間とカリソメのダークスレイヤー  作者: 風間 智
第一章:転移、いざ異世界
9/10

オカマのデーモン

【前回までのあらすじ】

 須川雅人はちいさな神様の贈り物と共に異世界へ転移した。

 盗賊という脅威を退けた青の男。しかし間髪入れずに、

 伝承の中の超生命体である悪魔が現れた。

 そして悪魔は現れた。悪逆非道で冷徹な、伝承の中の超生命体である。


 あれだけ散り散りに逃げ惑っていた盗賊たちが、今は動きすらしない――動けないのだ。この場にはそれだけの重圧(プレッシャー)がかかっていた。


「ふ~ん、ま……キッタナイのしかいなさそうじゃない?」


 現れた悪魔は品定めするように周囲を見回すと、腕を組み顎に手をあて、ヒゲをたくわえるようなしぐさをした。


 といっても実際にふんだんなヒゲがあるわけではない。その悪魔は、見た目からするとモデル体型の美女という印象を受ける。深緑の髪をふんわり短く切り揃えた、いわゆるショートボブ。薄くひいた橙色の口紅がキュートなかわいさを演出する。背はやや女性としては高めだが、薄めの胸や小さめなヒップと相まって、それがよりモデルっぽさを(かも)し出している。

 極めつけは頭に生えた小ぶりな一対の(つの)と、柔らかくしなる尻尾(しっぽ)だ。紛れも無く人外である証なのだが、悪魔というには小さく可愛らしすぎて仮装(コスプレ)にすら見える。


 ただ惜しむらくは、声。どう聞いても低く響く、男性の野太い声なのだ。そのギャップが得体の知れなさを助長させている。


「あらやだ、いいオトコもいるじゃな~い」


 悪魔のテンションが目に見えて上がった。両手を組み顔に寄せて腰をくねらせている……そのポーズは恋する乙女に見えないこともないが、声がすべてを台無しにしていた。


「自己紹介しなきゃね。アタシはポピー。カラダは男だけど、ホントのアタシはオ・ン・ナ・ノ・コ。よろしく~ゥ!」


 オンナノコ、で首を可愛らしく傾げた悪魔のポピー。確かに見た目はその通りで、あざとさすら感じる愛嬌であった……声さえ高ければ。


「……なんだありゃあ」


 久方ぶりに口を開けた義賊団長のクライヴは、自らが思い描いていた悪魔像とまったく違うポピーの姿に、不気味さを感じるどころか、逆に呆れかえっていた。そしてそれはその場のほぼ全員の反応を代弁していた。


 イーリスはそんなクライヴを見て、ふと疑問がポロッと口を()いて出た。


「というか団長さん、まだいたんですか」


 クライヴは脱力のあまり前につんのめった。


「いるわ! 一応これでも団長だからな、謝ろうとね……それに、まだ飯をもらってねーのよさ」

「あ、ご飯は食べるんですね」

「もちろん! 食べ物分けてもらえるっていうの、忘れてないねーかんな」


 悪魔を尻目に、小話すらするクライヴ。

 

 そう、今しがたこの場に重圧(プレッシャー)がかかっていた、はずだったのだが……その悪魔のあまりの珍妙さからか、雰囲気は不思議と自然に(ゆる)みつつあった。

 逃亡のための一歩すら動けなかった盗賊たちも、こればかりは仲間と困惑の表情を浮かべあうばかりだった。


「あらなぁに、ご飯のお話? アタシもまぜてもらってもいいかしらぁ~?」

「ウォヒョォォォ!!」


 突然後ろからオカマに横槍(ヨコヤリ)()れられたクライヴが、ぞぞーッと体を這い上がる悪寒に飛び上がりながら悲鳴をあげた。


「お、おおお、オマエなァ! 急に後ろ回んじゃねえよ!」

「あら失礼。いいオトコを見るとどうしても……(たぎ)っちゃうのよ」


 その溢れんばかりの身体能力を、いいオトコの後方(ケツ)につくという無駄な――彼女(・・)に言わせるととても有意義らしい――使い方をするポピー。

 肩書きは禍々しく凶悪そのものだったが、しかし振る舞い方から受けた印象としては悪いものではなさそうだと感じたイーリスは、ポピーに声をかけた。


「ポピーさんも一緒にご飯、どうですか?」

「あらぁ、いいのかしら?」

「そうね、ひとり……ひとり? まぁ、増えたところであまり変わらないものね」


 宿屋姉妹が当然のように、恐ろしい超生命体であるはずのポピーを食卓に誘う。ポピーの得体の知れない滑稽(こっけい)さもさることながら、この姉妹の懐の深さも尋常ではない。


「悪いわねぇ……あらそうだわ、それじゃあ」


 何か妙案を思いついたとでも言いたげに、ポピーは掌に魔力を練り上げはじめた。明るく紫色の、しかしどこか(あや)しげな光がポピーの右腕を包む。


「アタシがたのしいお食事にふさわしいキレイな場所を、作ってアゲル」


 ポピーがその腕を高く掲げると、紫白(しはく)(まばゆ)い光と、魔力由来の光が放出される時に観測される、独特の甲高(かんだか)い音が場を満たした。


「キャッ!?」

「うお!?」


 宿屋姉妹とクライヴは思わず目を手で覆った。やがて光は収まり、後には――、


「……へぇ、なかなかやるじゃない。さすがいいオトコね」


 ――重圧(プレッシャー)を放つ強烈な魔力で形作られた手甲を両の腕に(まと)ったポピーと、それまで沈黙を守り続けてきた青の男が、鍔迫り合いを演じる光景が広がっていた。

【次回予告】

 弛みかけた雰囲気は、再び緊張へ。

 悪魔らしからぬ悪魔と、青い悪魔剣闘士に憧れる男。

 両雄は遂に激突する。


 次回、憧れの青い悪魔剣闘士になって異世界に転移したんですが……。 

 「ハイ・ソードウェイブ」 ご期待ください。

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