8品目
続きデース
昨日掃除した場所にもう埃が溜まっているのを見つけてつぎはぎだらけの雑巾で丁寧に拭き取っていく。
あの後あの人に拾われて修道女として教会に住まわせてもらっている、この教会は人でも少なくちょうど困っていたところだったそうなので私という存在がちょうどよかったらしい。
私も助けてくれた恩義に報いるという形であの人にそれを返せるなら大嫌いな神様であろうと使えてみせる。
黙々と掃除をしていると突然背後から手が伸びてきて私を締め付ける、特大メロンパン二つが頭に当たり少しイラっとしたがこういうことをするのはあの人しかいない。
「リアン~お掃除終わった~?」
私の名前が耳朶を震わせる、そして焼きたてのパンの匂いが私を刺激する、そういえばお腹が空いた。
「院長、まだ終わりませんのでもう少し待ってくれませんか?」
燭台の汚れを綺麗にする間も院長はこちらに寄りかかってくる。
「お母さんって呼んでって言ったでしょー?」
あの日拾われて私はこの人の娘となった、多分あんまりよく考えていないんだろうけど私はとても助かっている、まあ略称云々は言いたくないが。
「いえ、院長は院長でして・・・」
「つーん」
「うう・・・・・・お母さん」
「分かればイーのですっ」
「ところで何か用ですか?」
「お昼の時間ですヨ!食べましょ食べましょ、ランチタイムがエブリデイなのですよ」
院長が飛び跳ねるたびにメロンパンも形を変える、流石異世界、物理法則なんてなかったんや。
「やーん、リアンちゃんエッチィのはダメですよー」
「ちゃうわい!」
体が勝手に動いたんや、わいは悪くない!多分。
院長・・・母さんと共にパンとスープを昼餉としてとる、この世界の宗教は三食食べるのが掟だそうだ、不思議なことだ、私たち貧民は一日一食でも幸運なことだというのに・・・私の心でどす黒いものが生まれるがそれは―――。
「リアンー」
「あうっ」
額をデコピンで弾かれる・・・意外と痛い、さすっていると母さんは机に肘を付いてこう言った。
「食事は楽しんで食べなきゃ神様が怒るわよ、あと私が、主に私が」
なんだそりゃ、そう思いながら苦笑しつつパンを齧る。
「母さん・・・本当に良かったの?」
「なにが?」
「私を娘なんかにして、この間も教会に貴族様が来てたよね・・・」
「あーあれねー、いやほら、デブの嫁になるぐらいだったら修道女になって好き勝手したかったからさ」
母さんは元貴族だ、修道女になったのは結婚をしたくなかったかららしい、とんでもない人だ。
「なにそれ」
「つまりあれはリアンのことを云々じゃなくて修道女なんてやめてさっさと結婚しろーって言いに来た人だよ」
「そっか」
貴族からの命令をはねのけるのはこの人が貴族の中でもかなり上位にいる可能性が否めない、つまりこの人はすごい人なんじゃあないんでしょうか?
「理想は現実にならないし現実は机上では無い、夢は所詮夢でしかないのよ」
疲れきった表情で嗤う母さんにどうしようもなく怒りを覚え私も彼女にやり返す。
「あいたっ何すんのよー」
「食事は楽しんで食べるもの」
「・・・ふふっ、そうね、神様が怒るもの、食べ終わったらご飯を配りに行きましょう?」
「はい母さん!」
シリアスが大好物なのですよ、話を書いていると何時の間にか死んじゃう系になっちゃうんですよ、ごめんなさい。