第41話 ノエルの弟子入り(後)
僕はお師匠様と一緒に我が家の玄関に着くと、両親を呼びに行った。
「お母さん、お父さん、ちょっと来て!」
居間から二人が顔を出したので、玄関まで手を引っ張る。
「何だ、どうした?」
「あら、一体何かあったの?」
お師匠様が玄関先でローブのフードを脱ぎ、頭を下げた。
「初めまして。ノエル君のお母さんとお父さん。
私は王都で薬屋を営んでいるカナデと申します」
ライネルが頭に手を当てる。
「はぁ……これはどうも。
ところでカナデさんはどういったご用件で?」
僕は二人の顔を見上げて声を張り上げた。
「僕、弟子入りしたんだ!
だからお師匠様なんだ!」
ノエルの言葉を聞いて、セリーヌは何となく理解した。
「ノエルが無理を言ったのね……。
すみません、ここでは何ですので、どうぞお上がりください。
お茶くらいしか出せませんが……」
奏は頷き、一礼して靴を脱いだ。
「お邪魔します」
居間に案内されると、長方形のテーブルの奥にライネルとセリーヌが座り、
手前に奏とノエルが座った。
ライネルが話を切り出す。
「それで……一体どんな……?」
どんな経緯でこうなったのか説明を求められ、
奏は王都で薬屋を営んでいること、
薬草を採取するためにサウスコリナ南の山に小屋を建てたこと、
そして戻ってきたらノエルに弟子入りを志願されたこと、
努力と才能を見込んでそれを認めたことを伝えた。
「なるほど……これはうちの息子が無茶なお願いをしてしまい申し訳ありません。
ノエル、カナデさんにご迷惑をかけてはいかん」
奏は右手を前に出して軽く振った。
「いえ、迷惑だなんて……。
ノエル君の才能は本物です。
もしお二人の許可がいただけるのであれば、
私に預けていただいてもよろしいでしょうか?」
セリーヌがライネルとノエルの顔を交互に見て、
最後にカナデの顔を見た。
「ノエルは最近まで、満足に起き上がることもできない子でした。
今では神様のおかげか元気になりましたが、正直心配ではあります……。
ただ、それが原因で今までずっと我慢ばかりしていたので……。
もしカナデさんが良ければ、この子の夢を叶えていただけるのなら、
母親としては嬉しく思います」
その言葉にノエルの瞳が潤んだ。
「お母さん……」
「はい、お任せください。
ただ、薬屋は薬草やポーションを作成するのに、
素材を採取したり集める知識や活動が必要です。
ですので、ノエル君を連れて歩くことになりますが、よろしいでしょうか?
勿論、身の安全は保証します」
「危ない場所には連れて行かない」とは言えなかった。
それでは嘘になってしまうからだ。
「わかりました。出かける際に一言あれば。
不肖の息子ですがよろしくお願いします」
ライネルとセリーヌは座りながら頭を下げた。
「それで……弟子入りとなれば、授業料はいかほどお支払いすれば……」
「いえ、ノエル君は内弟子として扱いますので……。
そうですね、彼が大きくなったら自分で返してくれると思います。
ね? ノエル君」
ノエルは奏の顔を見て、元気よく声を張り上げた。
「はい、がんばります!
お母さん、お父さん。許可してくれてありがとうございます!
お師匠様! これからもよろしくお願いします!」
つい、うっかり“これから”ではなく“これからも”と言ってしまったが、
ライネルとセリーヌは気付かなかった。
こうしてノエルは両親に認められ、正式に奏に弟子入りすることになった。
奏はノエルを連れて出歩きやすくなったことに安堵し、
次はどこに連れて行って鍛錬しようかなと考えていた。
第一部 7歳編 完
これにて第一部完となります。
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二部を執筆するエネルギーになります。




