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狐の嫁入り -土姫ノ章-  作者: ツカサシキ
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3-5 『教授』は、無力ながらも祈りを捧げる

お楽しみいただければ、幸いです。

よろしくお願いいたします。

 田中さんだけでなく、ご家族も知らなかったみたいですが…塾用のアプリケーションを利用して、先生に勉強だけでなく…プライベートな質問や悩みを打ち明けていたようなんです。


 先生が、若いという理由もあるが…何より生徒一人一人に対して、根気よく“ちゃんと”向き合ってくれていた数少ない『理解者』でもあったのだ。


 その悩んでいた内容というのが――…また「水泳をやりたい」という、気持ちと「もう泳げない」という気持ちの葛藤をしていたという。


 本当に田中さんの妹さんは、流行のスイーツだけでなく…オシャレや恋愛よりも泳ぐ事が好きだったそうだ。


 しかし――…運悪く、大怪我を負ってしまった。

 唯一、楽しみであり特技でもあった『水泳』を辞める事となった、が――…近年の進歩した医療によって“希望”を抱くようになったそうだ。


 だが…その医療を受けるためには、お金が掛かるものだ。

 おまけに理由は、どうあれ…簡単に受けれるものでもない。


 田中さんの妹さんが、そんなに悩んでいた事に…聞くに堪え切れなかったのだろう、ついに母親さんが「ごめん!ごめんねっ…!花見っ…!」と、泣きわめいてしまった。


 心身ともに限界に達してしまったのだろう…。

 叔母が、母親さんを落ち着かせるために客間に案内し――…僕は、伯父と相談し…田中さんご家族を泊まらせる事になった。


 僕達からの提案に田中さん達は「ただでさえ、厚かましく押しかけているのに!」と、猛反対したが…既に夜中だ。


 僕より先に叔父は「親御さんが居るとはいえ、夜遅くに出歩かせるなんて非常な行いなんて出来ない」と、言うと…田中さんご家族は、恐る恐る承諾した。


 それに…相談途中に田中さんのお膝の上には…飼い猫(キジトラ)の“こごみ”さんからも「泊まるでしょ?」と、上目遣いをしながら寛いでいる。


 こごみさんだけでなく…ソファーに座っている叔父の両隣には、寄り添うように同じく飼い猫アメリカンショートヘアの“キヌア”さんとスコティッシュフォールドの“きび”さんも上目遣いをしながら泊まる事を訴える。


 恐らく、我が家自慢であり“主導権”を持っている飼い猫()達の『無言の圧力』に根負けしたのかもしれない――…押しが強いんですよね。

 因みにお客様が、急に泊まる事になってもいいように…常にユ○○ロやG〇のサイズ別のルームセットと下着等の衣服類とルームシューズが、完備されています。


 ――あ。

 変な勘繰り防止に言わせていただきますが…叔父からの資金源を基に叔母が、女性用。

 僕が、男性用を選んでますよ。


 僕も流行に疎い方なので…ちゃんと、公式ホームページを基に勉強させていただいています。

 何に対しても…常に流行の浮き沈みが、激しいですから…流行が終えてしまった衣服類の大半は、勿体ないですが…処分していますね。


 使い切れないのもあるんですが…先ほども話しましたが、サイズ別も買っているので…どうしても凄い量になるんですよ。


 泊まっていただいた、お客さんに持ち帰ってもらうのが“一番”なんでしょうけど…お客さんも好みあるだけでなく、この考え事態『間違っている』んですよね。

 烏滸(おこ)がましいですし…または“恩着せがましい”とも言いますし“要らぬ世話”とも言いますからね。


 しかし――…たまに着心地を気に入って、許可を得て持って帰られる方も少なからずいらっしゃるのも事実。


 ――さてと…叔父さん達が、部屋の案内をしている内に消化に良い物でも作っておきましょうかね。

 恐らくですが…妹さんの行方の手掛かりを優先してしまって、食事を簡単に済ませていると思うんですよ。


 無理もないですが…どんな形であろうと「自分達の元気な姿で!」って、妹さんと再会を果たしてほしいと…僕の“我儘”に思います。


 ――おにぎりやサンドイッチ、豚汁を作るとしましょうか。

 何を作るのを決めた僕は、足早に台所に向かい――…この『行方不明』という言葉が、こんな急接近に聞く事になってしまった事に驚きを隠せない。


 この数日の間、間近になってしまった“嫌な流行語大賞”になるんじゃないかと…気分が、滅入ります。


 そういえば、話しの中で…塾の先生も休みの日限定だが、田中さん達と混じって妹さんの捜索書を配ったり…自腹で、探偵をしている旧友さんに依頼もしているとか――…中々、出来る事ではない。


 しかし、菜種が居たら…その塾の先生に疑惑を向けると思う。

 失礼だが、僕もだ。


 よく推理小説や推理ドラマを見る方は――…おっと!失礼しました。

 今まさにラストを読まれている方のネタバレになってしまうので『お口チャック』をしましょう。


 そんなアホみたいな遊びをしながら…念のために菜種にメールを送った。

 先程の田中さんの塾講師さんの事だ――…疑心暗鬼なままじゃ目覚めが、悪いので…田中さんから許可を貰いメールをした。


 田中さんから聴いた情報を出来るだけ、細かく思い出しながら打っていく――…始めに塾講師さんの顔写真と名前。

 次に単調情報だが…学生時代に受けた“格差社会への不満”と塾講師となった経緯も書き進めていく…塾講師さんが、立ち会うと――…伸び悩んでいた生徒さんの成績が、自然と右肩上がりであったり…生徒さんの親御さんからは、5つ星の高評価!のお墨付きの肩書き付き。


 初めに聞いた時に驚いたが…僕の目から見てもイケメンさんで、人情深く…高スペックの持ち主であるのに彼女さんが、いないらしい。

 不思議に思っていると、何でも「今、やっと『やりたかった仕事』をやり始めて楽しいから恋愛は、お休み」だと、行方不明になっている妹さんからの情報を含めて送信。


 突発的な内容だが、菜種なら大丈夫だろう――…後で、怒られるかもだが…。


 そんな事を思いながら豚汁を仕上げていく――…澄まし汁にするか王道の味噌にするか…悩みどころです。

 澄まし汁の豚汁も美味しいですよね~…王道の味噌も各種の味噌を試しても飽きが来ませんし…本当に困りました。


 悩んでいると叔母さんがやって来たので、事情を話したら…王道の味噌になりました。

 個人的に味噌の風味は、癒し効果があるように感じるんですよね。


 そして、おにぎりの具は――…焼き鮭と僕の推し薬味である“ネギ梅叩き”とタラコと明太子、オカカにしました。


 サンドイッチは――…卵サンドイッチと卵焼きサンドイッチ、オニオンピクルス入りのツナマヨネーズサンドイッチにしました。

 本当は、ツナマヨおにぎりも作りたかったのですが…量が、足りなかったので…サンドイッチ限定になりました。


 叔母さんが、手伝ってくれたので…あっという間に完成しました。

 亡くなった祖母の実家から遺品整理として『形見分け』として譲り受けたものの…以前より使う機会が、少なかった大皿を使用出来た事に叔母さんは、ご満悦だ。


 また衣服類の話しのようになってしまいますが、何でも最近――…会社の新しい方針で、リモートワークをする事になったらしく…叔父さんも叔母さんもパソコン関連の仕事をしているので「遂に我が社も…」と、言った感じで…月一の出勤が、あるものの在宅ワークを勤めています。

 しかし、在宅ワークのデメリットである…飼い猫達から「家に居るなら遊べ!」の猛アピール戦争を繰り広げています。


 僕は、大学に通っていますが…休みの日は、仕事に集中してほしいので代わりに家事をやらせていただきます。

 僕の家賃替わりに下宿させてもらっているので…買って出ました。


 ――その後は…用意した大皿料理を田中さん達は、目が点になってましたね。

 僕達の“お節介”が「(此処までとは…)」と、軽く引かれてしまいましたが…どなたかの『空腹の虫』が、鳴ってくれたお陰で“あれよあれよ”と召し上がってくれました。

 口に合ったようで、良かったです。


 僕は、満足げにしていると――…僕の携帯のマナーモードが、唸るように鳴った。

 慌てて画面を開くと、菜種だった。


 夕食であり夜食作りの間に送った『疑心暗鬼』な人物である“親切過ぎる”若い塾講師さんの鑑定結果だ。

 気になる答えは――…菜種の鑑定では“白”だった。


 白である『理由』も書かれていたため、食事を終えた田中さん達に報告をした。

 鑑定報告を聞き終えた田中さん達の反応は、バラバラだった。


 中には、報告を受けても疑っている人も居たが…田中さんの「教授の知り合いで、いの一番に信頼をしている人を疑うのか!」と、一喝され…押し黙らせられていた。

 そして――…僕は、付け加えるように菜種から「件の一件は、例の失踪事件に“深く”関わっている」とも話した。


 この言葉に田中さん達の顔色が、一気に変わってしまったが…慌てた僕は、菜種からの伝言報告の中から「被害に遭われてしまいましたが…ご息女様は、生きております」と、朗読をした。


 その内容に田中さん達の顔色は、また変化した。

 菜種からの伝言報告は、僕を通じて――…警察からの依頼で『守秘義務』のため、詳しく話せない事を詫びつつ…先に話した田中さんの妹さんの安否は“確定”である事まで話した。


 しかし――…菜種からの『協力』は、ここまで…。

 警察からの依頼と守秘義務が、大きい影響と原因だろう――…何とも言えない“むず痒さ”は、得体の知れない。


 だが…田中さん達は、無理に協力してくれた菜種に対し礼を言ってくれた。


 その後――…田中さん達は、翌日の朝ごはんと我が家自慢の飼い猫に癒されそうで…ご自宅に戻り、花見さんの帰りを待つ事と帰ってきた後の身の回りを整えるためだ。

 帰りを見送った僕は「(早く解決しますように)」と、願いを込めた。



 -完-

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