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覚悟

 孝二は、ソファーでうとうとしていた。

ブランケットが、かけられていた。

遅くまでね竹部と飲んでいたが、いつの間にか。ソファーに座って眠ってしまっていたらしい。

ドアの閉まる音で目が覚めた。

空はねかすかに白んでいた。

腕のクロノ時計を見ると、5時を少し過ぎていた。


 "嫌な予感"がした。

 昨晩、竹部と話していてどこか、達観した話し方をしているのが気になった。


 飲みすぎて重くなった頭を無理に活性化して、立ち上がって竹部の後を追った。

廊下に出ると、相変わらず警備員がいたが、孝二を見ても特に妨害するようなそぶりは見せなかった。


エレベータで降りると、玄関から出ていく竹部の姿を視界にとらえた。

声をかける暇もなく、ホテル前のトライシークルに乗り込んだ。

孝二も、トライシークルに乗り込んで、竹部の後を追った。


竹部のトライシークルは、セメタリーの前で止まった。

Saraの眠る墓地だった。

孝二は、邪魔をしないようにそっと見守っていた。


竹部は、Saraの墓石の前に膝まずき、ポケットから何か写真のようなものをだしていた。

そして、手を合わせて祈っていた。


孝二は、神聖なものを見ているように思えた。


どれくらい経ったろうか、孝二は後ろに人の気配を感じた。

Evelynが孝二の後ろに佇んでいた。


 「おばあちゃんと話しているのね、竹部さんは」


とEvlynは言った。


 「たぶんそうだろう、半世紀分の思いを語っていると思うよ」


 「おばあちゃんも幸せだなね一人の人にずっと思ってもらうなんて、あこがれちゃうな、わたし」


 とEvelynは笑った。


 そおーと孝二とEVelynは竹部を見守っていたがね竹部の次の行動で、Evelynが悲鳴を上げた。


 「No」


 といって、Evelynはね竹部の元へ走った。

 孝二も一緒に走った。


 竹部は、銃をこめかみに押し付けていた。


 「やめるんだ、竹部さん」

 と孝二は大声を上げた。


 竹部は驚いてね銃を下した。


 孝二は竹部から銃を奪い取ると、Evelynに渡して安全装置をかけてもらった。

銃は、あの銃だった。

ブローニンク゜


 「竹部さん、なぜあなたが命を粗末にするんて゜すか。新谷さんに言ったことは、嘘だったんですか」


 と孝二は荒い息をしながら、竹部に怒鳴った。


 竹部は、やや驚いた顔をしていたが、


 「そんなつもりはない。だがね私も長くは生きられない。だからSaraの眠る傍で死にたい、チューブにつながれて、ベッドで死にたくはない」


 といったが、孝二は首を振った。

 「それでも生きていてほしいと願う人もいます。Saraさんは死んでほしいなんて思ってはいないはずです」


 竹部はうなだれた。

孝二のほうが正論なのだ。


 座り込んでうなだれているね竹部をEvelynが抱きしめた。


 「I want you to live. You are my grandfather.(私は、あなたに生きていてほしい。あなたは私の祖父なのです。)」


 とEvelynは泣きながら竹部を抱きしめた。


孝二は、その光景に不思議な錯覚を覚えた。


確かにEvelynのはずなのに、違うだれかを感じた。


 "Sara"


という声が竹部の口から洩れた。


 その時、孝二は背後に人の気配を感じた。

二人の男が、近づいてきていた。

手にはね銃身の長い拳銃を持っていた。


 一人が銃を持つ手を構えた。


孝二は、背中を向けているEVelynに覆いかぶさった。

次の瞬間、背中に重い衝撃を受けた。

撃たれたと思ったが、意識はしっかりしていた。


竹部とEvelynに折り重なるように孝二は倒れこんだ。


竹部を見ると、傍に落ちていたブーニングを手に取ると、立ち上がって撃った相手の肩を撃ち抜いた。

もう一人も反撃に出たが、竹部は落ち着いて相手の肩を撃ち抜いた。


撃たれた二人は、すぐに逃走した。


竹部は、その場に崩れ落ちた。

腹部が鮮血に染まっていた。


Evelynが竹部を抱き起こした。


 「これでいい、最初からこうするつもりだった。もう長くはないんだ。Saraの傍で死ねるのなら本望だ。」


Evelynはねパニックになりながらね竹部の撃たれたところを手で押さえた

どす黒い血が出ていた。

肝臓付近の動脈の損傷だ。

10分かそこらで、失血死になる。


孝二は、撃たれた痛みをこらえながらね竹部の元に近づいた


 「竹部さん、こうなること知っていたんですか」


孝二も意識が絶え絶えになりながら言った


 「これも宿命だ。たくさんの人を殺してきたから自分に回ってきた。人を撃った銃弾はいつか自分にも帰ってくるものだ。」


 孝二も撃たれた痛みで、意識が遠のきつつあったが、放心しているEVelynに向かって


 「911をコールして」


といった。

正気に戻ったEVelynは携帯で、連絡をした。


竹部の呼吸が荒くなっていた。

竹部は、胸のポケットから写真をだした。

その写真には、Sara3の母親とMariaが移った、セピアの写真だ。

竹部は、それを握りしめると意識を失った。


孝二も痛みと息苦しさで意識が薄れていった。


 孝二が目を覚ましたのは、うつぶせにされた病院のベッドの上だった。

麻酔が聞いているらしく、背中には鈍痛が残っていた。


 「kouji」


という声が聞こえて、Evelynの顔があった。


 「よかった、無事だったんだね」


Evelynは孝二の手を握りしめた。


 孝二は、恐ろしくて聞けなかったがあえて


 「竹部さんは?」


 Eveyenは首を横にふった。


 「そう」


と孝二は力なくいった。


 孝二は、銃創による外傷性血気胸疑いで病院に搬送されたが、胸腔内は問題なく、皮下に残った弾丸の摘出だけで済んだらしい。

竹部は、肝臓ちかくの動脈損傷により助からなかったらしい。


竹部の死は、強盗によるものとして処理された。

よって、Evelynも簡単な事情聴取だけで済まされたらしい。


"Need not to know"


知る必要がないことなる。竹部も知っていて重要なことは何一つ教えなかったのだ。


 「孝二さんでいいのね。娘を助けてくれてありがとう」


と、Evelynの傍に立っている女性が言った。

おそらく、Mariaさんだと察した。


 「いいえ、私がお嬢さんを危険なことに巻き込んでしまい、すみませんでした。」


と孝二は、すまなそうにいった。


 「あの人は、最後まで私たち家族を守ったのね。」


とMariaさんはいった。


 「知っていたんですか。」


 Mariaさんは、短く迷って


 「ママから聞いていたわ、私の命を救ってくれて、いままた、娘の命を救ってくれた。ママが愛した人よ。そして、私には、父と思える人」


 と言った。


 「私には、あなたたち日本人が理解できない。」


とMariaさんは涙を浮かべながら言った

 

 「なぜですか?」

 

 「死ぬのが怖くないのですか」


 孝二は、すこし考えて、つたない英語を駆使しながら


 「私は、Evelynと一緒に、あの戦争を追体験しました。竹部さん新谷さん、Saraさんを通して、人の命が尊いことも、そしてその逆もあった時代があったとしっています。過去を賛美するつもりはありません。戦争という行為が正しかったことは、一度もないと思います。それでも、私は目の前で失われようとする命があるののならば、それを守ることが自分の意志であると考えます。それは、日本人としてではなく、人間としてそうなのだと考えます。」


 うつぶせのまま、Mariさんに孝二はそういった。


 「"The thought of the person continues being valid more than time"」


 とEvelynはつぶやいた。


 Mariaさんもうなづいた。


 「ママは、間違っていなかった。きっと、ママがEvelynや私を助けてくれたのね。竹部さんも新谷さんも一緒に。新谷さんからもらった銃は、昔も私とママを助けてくれたの、強盗に入られて殺され処をあの銃でママが強盗を撃ったのよ。そして、今度もあなた達を助けた。半世紀も前の骨董品なのにね。これも、人の思いよね。ママはほんとに、愛されていたのね。それも二人の男性から。」


 Mariaさんは、泣いていた。


 「Evelyn、命の恩人なんだから傷か治るまでちゃんと看病しなさいよ」


といって、Evelynにウインクして病室を出でいった。


 「孝二、大丈夫?」


とベットの端に座りながらEvelynがたずねてきた。


 「痛みはあるけれどもしっかりしてきた。」

 

 「よかった。孝二が死んじゃうと思ってずっと眠れなかった」


 「あのさ、竹部さんは」


 Evelynはしばらく考え込んでいたが


 「何も言わなかった。ただ私を見て、微笑んでいた。そして、その時私もあんまり意識がないの自分ではない誰かの意志でそうしているように、竹部さんを見つめていたわ。その時、私はグランマの気持ちが理解できた気がした。」


といった。


 「じつは、おれもあの時に、EvelynがEvelynでないような気がしてさ。やっぱり、そうだったんだな」


 孝二もEvelynも確信していた。


 あの場所にいたのは、Saraと竹部と新谷の3人だということを。


 霊の存在など信じてはいないが、人の思いは時を超えることは知っていた。


 「私も、素敵だなと思う。グランマの恋って。あの時代の中でみんなが精一杯に生きてたんだなと思うとすごいよね」


 「おれもそう思う。どんな時代でも、人の営みはかわらない。そう、教えてくれたんだと思う。」


 孝二の手をEvelynが握った。


 「私を助けてくれてありがとう。」


 「いや、本当の意味で助けたのは、Saraさんの思いだよ」


 「ううん、それは孝二の勘違い。私を助けたのは孝二。」


 「それは、結果がそうなっただけの話なんだよ。俺たちは、Saraさんの思いの中を旅してきたように感じるんだ。つまり、Saraさんがしたかったことしてきただけなんだ。だから、今のEvelynの感情は本物じゃない。」


 Evelynは自分の感情が見透かされているようで、表情を強張らせていた。


 「Saraさんが、伝えたかったのは、自分に正直に生きること、自分らしく生きてほしいっていうメッセージじゃないのかな。」


 「自分らしく?」


 「そう、Evelynらしく、いつものように明るく、なんにでも挑戦する」


 孝二は、自分をケガさせて気弱になってるEvelynを見たくなかった。

このまま、Evelynのこころの隙間に入り込もうとしている自分が許せなかった。


 「竹部さんと、あの夜に話したんだ。あの空の色、いつか話した Cerulean Blue sky。空の色は変わらないってことを。多くの人たが、死ねためだけに飛んだんじゃないってこと。今頃きっと竹部さんと新谷さんも飛んでいると思うよ。そして、Saraは、それを眺めている。Cerulean Blueの空をね。」


 


 


 






次が最終話になります。長い間読み続けていただいてありがとうこざいます。

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