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平凡な日々

 孝二は、毎日の通勤で使うバイクになんとくまたがっていた。


 GSX250Eという、恐ろしく古いバイクに乗っていた。

三十数年前の代物だ。

何故かというと、友人が父親のガレージで動かなくなっていたものを、興味本位で貰ってきたからだった。

空冷2気筒のバイクだったので、いじりやすかったのもあったが、今のバイクにないノスタルジックな感じがして乗ってみたくなったのだった。


 長年エンジンをかけていないので、キヤブの中はタールだらけだった.

タンクは、えくぼの錆が吹いていた。

フロンフォークに至っては、さびだらけだ。

キヤブは分解して、ケロシンの中に付け込んだ。

ガレージに保管していたので、ゴム類は何とか無事だった。

チェーンとスプロケットは交換をした。

ただし、部品を探すのには苦労した。

なんせ絶版だから。

しかも、妙にオークションで高値がついていて部品取りの車体もなかった。

二本だしのマフラーにダブルのスプリングサス、センタースタンドまでついて、今のバイクには見られないものばかりだ。鋼鉄ダイアモンドフレームには参った。

乾燥重量でも160kgを超えていた。

何とか、走れるようになるまでには、3か月を要した。

 それでも走り出すと、2気筒のコトコトなるエンジンが可愛かった。

メーターの上にある、ギアポジションを示すインジケーターがなんとなく斬新さを見せていた。


ただし、かなり遅い買った。28psしかなかった。

前輪はかろうじて、ディスクだが、後輪はドラムだった。


なんと、80km/hを超えると、速度警告というランプがついた。


 孝二は、そんなバイクだが飽きもせずに乗り続けていた。


大学を卒業すると、ゼミの教授に進められて地元のテレビ局に総合職として入社した。


最初は、いろんな部署を回されて、系列の放送局へ出向したりしながら、なんとか日々を過ごしていた。


大阪の系列へ1年ほど出向して、やっとこの春に地元へ帰ってきた。


久々に、バイクで遠出しようと思いエンジンの横についているチョークを引っ張ってセルボタンを押した。


エンジンは一発でかかった。

オイル交換と、ハイオクガソリンのおかげかもしれない。


ジェットヘルメットにサングラスをかけて、バイパスの道を海岸沿いに走った。

桜の花が散り始めて、道路の端に風で寄せ集められていた。


 ライダージャケットの、左腕の携帯ポケットの中で、携帯のバイブが作動した。


ちょうど目の前に、道路サイド公園があったので、バイクを寄せて駐車した。


 二つ折りの携帯を開くとメールが来ていた.

メールのボタンを押すと、英語の件名。

迷惑メールかと思い内容を見ると

Evelynからのメールだった。


 かれこれ、彼女が故郷に帰ってから、たまにメールや電話のやり取りをしていた。

たたし、ここしばらく半年ほどは、音沙汰がなかった。

彼女も帰ってから、母親の会社を手伝ったり社交界での交際などで忙しいようだった。

だいたいは、愚痴の英語メールをよく送ってきていた。

おかけで、だいぶ英語には堪能になった。

辞書を引かなくても、分かるようになっていた。

もっとも、英語のレッスンは、新谷さんの奥さんのCharlotteさんに教えてもらっていた。

会社でどうしても、TOEICの600点以上を取る必要があったからだった。

おかけで、600点を超えることができた。


 新谷さんが亡くなってから、Charlotteさんも悲しんでいたが、、孝二が勉強に通うようになると元気がでてきたようで、よく晩ご飯をごちそうになった。

 後で、聞いた話では、新谷さんは、原爆の投下されたその日に長崎市内へ救助に出動したらしい。

当時の人たちには、放射能の怖さなど分かるはずもなく。

けが人の搬送などをしていた、新谷さんは多量の放射能を浴びたらしい。

当時は、放射能障害はなかったが、アメリカに留学して帰ってきたころから体調をくずしたらしいが、

それからはさほどでもなく、学校の教師をしながら原爆のことを調べていくうちに、放射能により染色体異常がおこり、子供への影響があることが分かり始め。

原爆2世と呼ばれる人にも、影響がささやかれ始めたころ、日本に興味をもって勉強しにきていたCharlotteと出会い、恋に落ちたが、なかにかプロポーズをCharlotteにしなかったらしい。

じれた、Charlotteさんが、新谷さんに迫ると、被ばくのことを話したらしい。

CharlotteさんはCharlotteさんで、新谷さんに言い出せないことがあった。


Charlotteは日本に来る前に、子宮筋腫で子宮を摘出してしまい、子供が生めない体になってしまったことだった。


二人が、二人とも同じ思いを抱いていたことで、新谷さんとCharlotteさんは結婚することになったそうだ。


 結婚までの道のりは、とても険しく、最後は新谷さんが啖呵を切って家を出てCharlotteと結婚したそうだ。その時の話をよく聞かされるが、Charlotteさにとって、新谷さんは白馬の王子さまだったとのこと.

いやはや、ごちそうさまでした。


 笑って話してはいるが、原爆か落とされたことで、人生が狂った人はたくさんいた。

得に女性は、被ばくしたことを隠したという。

結婚せずに、一生独身で過ごした人も多いと聞いていた。

メデイアの仕事をしているとこういう話は、よく聞くことがある。


 新谷さんはその一人だ、新谷さんは白血病を長らく病んでいた。

それが、放射能と因果関係があることはある程度立証されてたいたが、長い時間をかけて体の組成すら変えてしまう放射能とは恐ろしいものだと孝二は思った。


 Evelynからのメールは、短いワンフレーズだけだった。


 "I want to meet you"(あなたに逢いたい)


とだけ、書かれていた。


短い言葉が余計に不安にさせた。


直ぐに、孝二はメールほ返した.


 "Did anything happen?"(何かあった)


 送って、しばらくすると返事が来た。


 "Sorry You do not need to worry "(心配かけてごめんなさい)


 なんとなく引っかかったので、再度返事をだした。


 "I can listen to consultation"(話くらいは聞ける)


 また、すぐに返事かきた


 "Do not worry abaut me "(大丈夫)


と返事かきた、

それ以上の返信はしなかった。


 それでも気になったので、ドライブを途中でやめて、家に帰るとパソコンを立ち上げて、フィリピン関係のサイトを覗いてみた。


あった、あった、ゴシップが、Evelynのフィアンセというのは、悪い人ではないのらしいが、恋多きというか、浮名をかなり流していた。

Evelynのそれは承知で、付き合っているのだが、今度のはすこしばかりきつそうなものだった。

相手が悪い。

名のある、財閥の娘に手を出したらしい。

その娘は、かなり本気でということなっているらしい。

ああ、こりゃ彼女でも参るわと思った.


 孝二は、手帳を開いてスケジュールを確認した。

出向から戻ったばかりだから、プロジェクトは抱えていなかった。

まとまった休みは、取れそうだった。


 「しゃあない、いくか」


とつぶやいてみた。


 机の引き出しから、パスポートを出して、期限を確認すると、立ち上げたパソコンで格安チケットのサイトを確認した。


 翌朝、会社に出て、休暇願をだすとあっさりと許可されて、肩透かしをくった。

理由は、いままで休んでないからという理由らしい。


孝二は、思い返せば年に2日くらいしか休んでいないことに気づいた。


 見上げた、空を桜の花びら風に飛ばされて車のフロントグラスに張り付いた。


 あちらは(フィリピン)は夏真っ盛りだと気づいた。




 




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