表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空が壊れるほどの恋だった  作者: Kakou
【第三部】第三章
PR
94/94

第九十四話「新しい空」【最終回】

その後の世界は――大きく、変わっていった。


これまで隠され続けてきた真実が、明るみになった。


人身売買、兵器人形、そして、中枢卿という、存在の正体。

それらすべてが、次々と明らかになっていった。


街のあちこちで、人々が寄り集まり、これまで、知らされてこなかった、この国の暗部について、囁き合う光景が見られるようになっていた。



調律省は、解体された。

だが、それで、すべてが丸く収まったわけではなかった。


国は、大きな混乱の渦中にあった。


職を失った者たち。

今もなお、感情の戻らない者たち。


空き家となった、支局の建物。

長年、積み重ねられてきた歪みは、一朝一夕には拭い去れるものではなかった。


街角には、行き場を失った元職員たちが、途方に暮れたように、立ち尽くしている姿も少なくなかった。


賊と、呼ばれていた翔たちは、「解放軍」として、称えられるようになっていた。


囚われていた人々は、彼らの手によって、次々と家族の元へと帰されていった。

再会を果たした家族たちの、涙と歓声が、各地から届いてくる日々が続いていた。


この国が、新しく生まれ変わるための、道のりは――まだ、始まったばかりだった。



環さんは、その後医療機関に入院した。


だが、繰り返し打たれ続けた毒の影響で、神経に、異常が残ってしまっていた。

日常生活を送ることが難しいという診断を受け、環さんは、専門の施設で療養しながら暮らすことに、なった。


見舞いに訪れるたび、環さんは、変わらぬ優しい、笑顔を見せてくれた。

灯は、少なからず環の後遺症について責任を感じていた。

だが、その笑顔を見るたび、安堵している様子だった。


俺と灯は、灯の家で暮らすことになった。


かつて環さんと灯が、共に過ごしてきた、あの七番区の家。


新しい日常には、まだ慣れない。

灯は、朝、目を覚ますたび、しばらく、ぼんやりと、天井を見上げていることがあった。


俺自身も、調律省がなくなり、ちゃんとした定職に付けずにいて、暮らしにまだまだ不安がある。


それでも、少しずつ、二人で歩んでいけたらと思っている。



数日後――玲と翔と六花が、訪ねてきた。


玄関先で六花の姿を、見た瞬間、灯の表情が大きく変わった。


「――六花!!」


灯は、駆け寄り、抱き合った。

二人は、そのまま大声で泣き出した。


互いの肩を、強く抱きしめ合いながら、声にならない、想いをぶつけ合うように。


あの施設が、なければ――出会いは決してなかった。

施設にいたことは二人にとって良いことではない。


でもそこで生まれた、絆。

灯と六花は、かけがえのない親友になっていた。


そして、俺と翔もまた――この長い旅を共にした、生涯の友となっていた。



「――報告がある」


落ち着いた頃合いを見て、翔がふと切り出した。

改まった口調に、俺は僅かに身構えた。


「俺、玲と、結婚するわ」


「――ええええーーー!?!?」


俺は思わず、大きな声を上げていた。

あまりの驚きに、手にしていた湯呑みを危うく落としそうになる。


旅の間

――俺の知らないところで、二人の間には、別の物語が育まれていたらしい。

それが、いつ、どのように始まったのか。

その経緯が語られるのは――また別の機会になるだろう。




賑やかな夕暮れ。

皆で囲んだ食卓には、これまでの旅では味わえなかった、穏やかな時間が流れていた。


窓の外、空を見上げる。


そこにはもう、誰かに作られた空ではない、ありのままの晴天が、どこまでも広がっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ