#047 「地下に残る音」
翌日の放課後。研究室へ集まった六人は、昨日まとめたノートを囲んでいた。窓から差し込む夕陽が、机の上をやわらかく照らしている。
要はノートを開き、静かに口を開いた。
「昨日決めた通り、今日は地下施設をもう一度調べる。」
全員が頷く。
「前は驚いて、それどころじゃなかったからね。」
美弥が苦笑した。
「今回は落ち着いて見よう。」
想太も頷く。
「記録も残そう。」
いちかは小さなメモ帳を取り出した。
「写真は……やめておいた方がいいかな。」
「一応な。」
要が答える。
「まだ学校の施設かどうかも分からない。」
隼人が笑う。
「勝手に写真撮って怒られるのは勘弁だ。」
研究室に小さな笑いが広がった。緊張はしている。それでも昨日より、少しだけ肩の力が抜けていた。
夕暮れ。旧図書館。誰もいない静かな廊下を歩く。窓から差し込む夕陽は長い影を作り、館内は昼間とは違う表情を見せていた。
「相変わらず静かだね。」
はるなが小さく呟く。
「静か過ぎるくらいだ。」
隼人も周囲を見渡した。要が地下へ続く扉の前で立ち止まる。ゆっくりと扉を開く。冷たい空気が流れ出した。六人は顔を見合わせる。
「行こう。」
誰も迷わなかった。階段を一段ずつ降りていく。足音だけが静かに響く。
地下施設。白い壁。静かな空間。そして中央には、あの円柱型の装置が変わらず立っていた。
「やっぱりある。」
いちかが小さく息を呑む。
「夢じゃなかったね。」
美弥が苦笑する。
想太はゆっくりと装置へ近付いた。
「この間と変わってない……。」
装置の表面へ目を向ける。傷もない。文字もない。どこから見ても用途が分からない。
「本当に何なんだろう。」
はるなが静かに呟いた。誰も答えられない。その時だった。
コン……
小さな音。六人が一斉に顔を上げる。
コン……
また聞こえた。今度は昨日より、少しだけ近く感じる。
「聞こえた……。」
美弥が小さく呟く。
「俺も。」
隼人が辺りを見回す。音のする方向が分からない。壁でもない。天井でもない。床でもない。まるで空間そのものが、小さく震えたようだった。
要は静かに目を閉じる。耳を澄ませる。しかし。それ以上、音は続かなかった。
「終わった……。」
想太が小さく息を吐く。
「この間と同じだ。」
誰も動かなかった。静寂だけが地下施設を包んでいる。
同じ頃。ユグノドア・ドーム。蒼羽と真凜は今日も光柱の前へ立っていた。
「ともり様。」
「はい。」
「今日も何か分かりましたか?」
蒼羽が尋ねる。
少しだけ間が空く。
「まだ分かりません。」
穏やかな声。
「でも。」
「はい。」
「皆さんは、確実に前へ進んでいます。」
蒼羽と真凜は顔を見合わせる。
「そっか。」
真凜が小さく笑った。
「じゃあ私たちも頑張ろう。」
「うん!」
蒼羽は元気よく頷いた。
地下施設。ユグノドア・ドーム。離れた二つの場所で、それぞれの時間が静かに流れていた。まだ何も分からない。それでも。昨日までとは違う。
六人は地下施設へ足を運び。二人はユグノドア・ドームで祈りを続ける。それぞれの小さな行動が、少しずつ同じ未来へ近付いていた。
地下に残る音は、まだ誰のものか分からない。けれど、その静かな残響は、確かに八人を次の一歩へ導こうとしていた。




