019 料理人の欲しいものは聖剣より包丁
「ガハハ、ランクアップしたらしいな!しかもCランクに!やるじゃねーかナッシュ!」
「ありがとうございます。ひよりとみーちゃんのおかげです」
痛いですデラルさん。
昨日から叩かれっぱなしだな。
こんなごつい腕に叩かれたら痛すぎる。
……みーちゃんの方が痛かったな。
「今日はどうした?装備に不備でもあったのか?」
「いえ、装備に問題なんてないです。装備のお礼とお土産を持ってきました」
「土産だー?ミノタウロスの肉は美味いがそれか?ミノタウロス一頭で焼肉パーティーなんて最高かもしれんな!ガハハ!」
一頭丸々で焼肉か。
それなら俺が食いっぱぐれることがなくていいかもな。
覚えておこう。
「お土産はお肉じゃないよっ!みーちゃんがすんごい細かく斬っちゃったからお肉ないの!」
「肉がないだ~?それなら何が土産なんだ?」
「ひより、出していいぞ」
「おっけ~!お土産はこれだよっ」
収納から出したら一気に重くなるから私には持てないんだよ~
「おいおい、信じてはいたが、これを見たら尚更信じるしかねーわなぁ」
「すんごいぶん回してたよ~」
「こんなのデケーのをぶん回してたのか!お前ら無事でよかったなぁ。それで?これがワシへのお土産なのか?」
「そうだよっ!いらない?」
いらないって言われたら困っちゃうなぁ。
私もナッシュくんも使い道ないもん。
「この素材は……」
「なにか気になる点でもあったんですか?」
「ああ、こりゃあアダマンタイトだ」
「それってすごいの?」
「すげーってもんじゃねぇ。滅多にお目にかかれない代物だな。A級以上の冒険者じゃないと手に入れられんな」
凄い素材なんだな。
それで包丁を作ったら、俺の捌きも良くなるのか?
………………欲しいな。
「よっしゃ、これを溶かしてナッシュの包丁を作ってやろう!」
「え?でもこの前作ったばっかじゃないの?」
「包丁もだが、ナイフや剣もあった方がいいんじゃないか?この大きさだ、かなりの量が作れる。なんならみーちゃんのも作るか?ガハハ!」
「みーちゃんはもう聖剣持ってるもんね!」
『キュッ!』
「聖剣だぁ?そんな伝説級の武器なんてどこにあったんだ?」
「普段は私の収納に入ってるよ~見る?」
「ちっと見せてみろ!本当に聖剣ならお目にかかりたいもんだ!」
本物じゃないだろうけど、かっこいいから見せてあげないとねっ
「…………なんだこれは」
「私のあやとりで作った聖剣だよっ!」
「なんつーオーラを放ってる剣なんだ……これほどのパワーを秘めた剣は見たこともない。素材があったとしてもワシが作れるかどうか……」
やっぱり鍛冶師が見てもとんでもない剣なのか。
ひよりの世界の最強の剣って言ってたからな。
デラルさんの作ったアダマンタイト製の包丁よりも、ひよりのあやとりで作った聖包丁の方が捌き性能が上なのか?
ひよりにお願いしてみようかな……
「この剣はみーちゃんが使ってるのか?」
『キュッ!』
「おお、本当に持てるんだな。不思議なやつだなお前は!ガハハ!」
『キュキュ!』
「なんだなんだ?」
「斬ってもいい手頃なものあるー?だって!」
「おーあるぞ!待ってろ。この辺にいらない装備があったはずだが……あったあった、これなら硬いしちょうどいいだろ!」
「これを斬っていいって!」
これが試し斬りってやつだね!
岩と牛も斬ってたけど、何回やってもいいでしょ!
「それじゃあみーちゃんやっちゃってっ!」
『キュー!キュキュキュ!』
「……………………は?」
「おー細切れパートツーだねっ」
相変わらず見事な剣捌き、いや、包丁捌きだ。
均一にカットする技術。
俺も早く身につけなければならん。
同じ大きさでカットすることで火の通りが均一になると師匠も言っていたな。
どんな素材、どんな硬さだろうが一瞬で切り刻める方がいい。
ねぎのみじん切りで苦戦することがないようにな。
「こいつは参ったな!聖剣の切れ味もとんでもないが、みーちゃんの剣筋もそんじょそこらの冒険者や騎士より綺麗だったぞ!ガハハ!」
「うちのみーちゃんは天才だからねっ」
『キュッ!』
剣を構えてドヤってるみーちゃん可愛すぎだよ~
「そんじゃあナッシュの包丁やらナイフをアダマンタイトで作っておくとするか!」
「デラルさん、太っ腹~」
「ナッシュにはまだ早いと思ったが、ミノタウロスを倒せるんだ、丁度いいだろう」
「あ、ありがとう、ございます……」
聖包丁の方が欲しいなんて言えないな……
「おーい、アニキ~!」
「ん?リディルじゃないか。今日はどうした?」
「欲しい素材があるから取りに来たんだ。と思ったけど先客かい?」
「こいつらが前に話してたやつらだ!」
「おー!この子達か!しかも着てくれてるじゃないか!似合ってるな~というか……君じゃないか?私が見掛けた女の子は!」
やっぱりそうじゃん~
この人がデラルさんの妹さんなんだねっ
「初めまして!真島ひよりって言います!16歳だよっ」
「自己紹介ありがとう、私はリディルだ。このむさい男の妹なんだ」
「むさいとはなんだ!」
「本当のことを言ってるだけだろう?」
「しかし私が可愛いと思った服を、君が着ているとは思わなかったな」
「あはは、私は何となくわかってましたよ~私の着ていた服に似てたので!」
「似合っているな!可愛いぞひより!」
「えへへ、ありがとうございますっ」
可愛いって褒められちゃった~
やっぱり私の特技はかわいいだよねっ
「それとこの小さいのはなんだい?」
「この子はみーちゃんだよっ!うちの子でとっても可愛いし天才なの~」
『キュッ!』
「…………か、可愛い」
『キュー?』
「かわいいぞこんちくしょおおお!」
『キュッ!?』
「あああ、かわいいかわいいかわいい!」
わわわ、リディルさんが壊れた!
それほど可愛いもんねみーちゃんは。
でも嫌がってない?
「おいリディル!その辺にしておけ!」
「何すんだよアニキ!戯れてるんだから邪魔すんな!」
「どうみても嫌がってるだろう!一旦落ち着け!」
「ああ、みーちゃん……また後で遊ぼうな!」
引きづられて行ったな。
デラルさんの妹さんなだけあって、なかなかにパワフルだ。
「すごい元気な人だったね」
「ああ、デラルさんの妹さんって感じだな」
『キュー』
「みーちゃん大丈夫?」
『キュッ!』
「大丈夫なら良かったっ。お土産は渡したけど、このあとはどうするの?」
このまま帰るのも失礼かな?
でもリディルさんも素材取りに来た~とか言ってたし、用事あるんだよね。
「一声かけて帰るか」
「うんっ、そうしよ~」
また今度美味しいの食べる時にくればいいよねっ
あ、そうだ、ご飯を炊くのどうしようか相談もしたかったんだけど~
また今度でいいよねっ
「デラルさん、今日のところは帰ります」
「待て待て!私が君たちに用があるんだ!」
俺……じゃないな。
明らかにみーちゃんとひよりを見ているな。
「ひよりが着ていた服はどこの物なんだ?遠い国から来たのか?どんな服が流行ってるんだ?色々教えてくれ!」
勢いがすごいな。
それだけひよりの世界のものに惹かれたんだろう。
確かにひよりが最初に着ていたせいふくと呼ばれるものは可愛かったな。
リディルさんが作ってくれたのは似ているが、せいふくの方が可愛かった。
…………俺は何を考えているんだ?
ひよりが可愛い?
確かに可愛いな……ってそうじゃない。
俺は女に現を抜かしてはならんのだ。
な
「君の国に行けば、私はさらに可愛いものに出会えるじゃないかと思ってるんだ!アニキに聞いても教えてくれないから、君に直接聞こうと思ってな。だからまだ帰らないでくれ!」
「私の……国……」
俺の許可を待っているのか?
デラルさんの妹さんだから話してもいいかもしれんが、しっかり口止めした方がいいだろう。
「話してみるといい」
「いいの?」
「ああ、デラルさんの妹さんだしな。ただ他言無用でお願いします」
「秘密なのか?それなら任せておけ。秘密にすると約束しよう」
「わかった!私はこの世界の人間じゃないの!」
「はぁ?どういうことだ?」
分かってくれるか分からないけど、ちゃんと説明しないとねっ
「はぁ、簡単には信じられないが、アニキとナッシュの反応を見てると信じるしかないようだな」
「そうだよね~私もよく分かってないもんっ」
「ひよりの世界の可愛い服を教えてくれないか?」
「ふぇ?わ、私が?」
「そうだ!ひよりの世界は可愛い服がたくさんあるんだろ?思い出せる限りでいい!私に教えてくれ!」
ひよりの世界の可愛い服か。
今のせいふくよりも可愛い服を着ているひより。
………………見たいな。
いや、そうじゃない。
見たいがそんなことない。
可愛い服よりも未知の食材の方が大事だ。
勘違いしちゃだめだ。
「王都の私の工房に来ないか?王都で最先端の服を作る協力をして欲しいんだ」
「お、王都?ここより都会?」
「ああ、王都は栄えてるぞ!この国最大の都市だからな。一緒に行かないか?」
いきなりすぎるけど、どうしよう。
ナッシュくんはどうなのかな?
「王都か……」
王都に行けばさらに可愛い服を着たひよりが見れるわけか……いや、だから気にするな。
でもあのクランがあるからなぁ。
何もなければいいが。
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