017 みーちゃんトロ無双
「え、この魔石……しょ、少々お待ちください!」
「な、なんだ?」
「なにやったのよナッシュくん」
「俺のせいか?」
魔石を見せたら奥に走って行ったけど、あの魔石は特別なのかな?
でもなーんでナッシュくんはあの女のところに真っ直ぐ向かったのかな~
あとで詳しく聞かないとねっ
「お、お待たせしました!ギルドマスターが話したいとのことで、こちらへどうぞ!」
ギルドマスターだと?
なんで急にそんな人と話すことになったんだ。
もしかしてみーちゃんが細切れにしたのがバレたのか?
「えっと、なんででしょうか」
「それは奥の部屋で詳しくお話しますので!」
おお、いつもと圧が違うな……
こんなラジェルさんは見たことないぞ。
「ちょっとナッシュくん近すぎ!」
もー!目を離すとすぐデレデレするんだから!
帰ったらお説教なんだからねっ
「何するんだひより」
「なんでもだよっ!ほら、早く行こ!」
そんなに近付いてたかったわけ?
もー!正座でお説教コースだよっ
「君がナッシュくんか。私が当ギルドのギルドマスター、ドルーガだ」
この人がギルマス。
強そうだな。
あの筋肉……ひよりが好きそうな筋肉してやがる。
やはり俺もあのくらいの胸板になった方がいいのだろうか。
「初めまして、料理人のナッシュです」
「私は真島ひよりだよっ」
「君は……報告にないな。それにそこにいるのは魔物かい?」
「この子はみーちゃんだよっ!ご挨拶してねみーちゃんっ」
『キュッ!』
な、お辞儀もする、だと?
みーちゃんは本当になんでもできるな。
「真島さんの従魔ってことでいいのかな?」
「みーちゃんは家族だよっ」
「家族……それほどの関係性ってことなんだね。早速本題に入ろうか」
なんか不思議そうな顔してる。
そんなにみーちゃんは珍しいのかな?
ちょっと天才なだけの、ただの可愛いペンギンなのにね~
「君たちが山の麓に居着いた魔物を討伐した。間違いないかい?」
「はい、間違いありません」
倒したのはみーちゃんだけど、ここは黙ってた方がいいよねっ
「Dランクの魔物の討伐依頼と聞いていて、討伐しにいったんだね?Eランクのナッシュくんが」
「はい、そうです。牛の魔物が住み着いたから通行できない為、その討伐を、とのことでした」
「その牛の魔物なんだが、二足歩行でデカイ斧を持っていなかったかい?」
「はい、その通りです」
「やはりそうか。その魔物はAランクのミノタウロスだろうな。この魔石のサイズからもそれが伺える」
「Aランク、ですか……」
そんなに高ランクの魔物だったのか。
確かに俺の攻撃も避けてたからな。
たかだかDランクの魔物があれを避けるのはおかしいと思っていたんだ。
「よく倒せたな。みんな怪我はないかい?」
「無事だよっ!」
「はい、みんな無傷です」
「それは良かった。討伐証明出来る素材はあるのかい?」
「あー、それが、細切れにしてしまったので討伐証明できるものがなくて……」
「こ、細切れかい?それはなんてことだ……」
斧は私の収納の中だし、勝手に出したらナッシュくんに怒られるよね。
ここは黙っておかないと。
「討伐証明するものがないのか。なかなか信じられない。本当に君たちだけで倒したのかい?」
「はい、そうです」
「うーむ。しかも細切れというのがまた……」
これは本当のことを言うべきなのか。
だがみーちゃんが聖剣で細切れにしたなんて話の方が信じてくれなそうだよな。
ここはひよりの収納から斧を取り出すべきか?
いや、それは秘密にしておきたい。
「ギルドマスター、自分はランクアップには興味がありません。なので信じてもらえないのなら討伐はなかったことにしてもらって構いません。その魔石も疑わしいのなら置いていきます」
「んな、そ、それでいいのかい?ランクアップを棒に振ってもいいのかい?」
「自分は冒険者ではなく料理人なんです。ランクアップには拘っていません」
おー、ナッシュくん、かっくいい~
でもナッシュくんが疑われてるのは気分良くないよね。
「ギルドマスターさん、討伐証明は何があれば証明になるんですか?」
「それは、素材だったりミノタウロスが持っていた斧があれば証明になるな」
「斧でいいんですね?」
「ま、待てひより!」
またスキルを人前で使う気……
ああ、遅かったか。
「これでどうですかっ!」
「い、今のはもしかして収納スキル……そしてこの斧……本物だ」
「これでナッシュくんが倒したって証明になりますよねっ」
「それを見せられたら信じる他あるまい。真島さんの収納スキルを秘密にするため黙っていたのかい?」
「はい、その通りです。便利なスキルを持っているのが知られると、ひよりに危険が及ぶ心配があったのでそうしていました」
「このスキルのことを知っているのは私以外ではいるのかい?」
「はい、鍛冶師のラデールさんだけ知っています」
「あいつなら大丈夫か。これは私も他言しないと誓おう」
「ありがとうございます」
「ムキムキギルマスさん、ありがとうっ」
『キュッ!』
「ムキムキ……ははは、面白い子だな。君は冒険者ランクは?」
「ランク?ナッシュくん、私のランクってなーに?」
こいつは……自分のランクすら忘れてるとはどういうことだ。
「ひよりはまだ依頼は何一つしてないのでGランクのままです」
「じゃあ君は討伐には関わってないのかい?」
「私は可愛く応援する係だよっ」
「ははは、こんな可愛い子が応援してくれるならAランクの魔物も楽勝か。ははははは!」
みーちゃんが天才すぎることは言わなくていいよねっ
「よし、それじゃあ討伐したことは認めよう。そしてナッシュくん、今日から君はCランクだ」
「は?Dランクでは?」
「ミノタウロスを単独討伐できるのはSランクでもおかしくないんだ。さっさとランクを上げて色んな依頼をこなして欲しい」
「は、はぁ……」
「それに君は料理人と言ったな。強い魔物になればなるほど美味くなるぞ」
「それは……楽しみですね」
「話は以上だ。あとは受け付けで報酬を受け取ってくれればいい」
「分かりました。ありがとうございます」
やっぱりミノタウロスは美味い可能性があったのか。
今度見つけたらじっくり味見してみよう。
和牛に匹敵する牛肉かもしれんからな。
「もう夜だね~」
「時間内に帰れたはいいが、遅くなってしまったな」
「デラルさんさんのとこ行く?」
「明日にするか」
「わかったっ!」
お風呂して~夕飯にしないとねっ
今日はお魚にしちゃおうかな~
たくさん魔石も増えたしねっ
「今日は何を食べるんだ?」
「お刺身にしようと思いまーす」
「おー」
『キュッ?キューーー!』
みーちゃんのテンションが明らかにいつもと違うな。
おさしみとはなんのことなんだろうか。
「じゃーん!マグロだよっ!」
「おー」
『キュキュキュー!』
なんだこのみーちゃんの嬉しがり様は。
それほどの肉なのか。
だがあれは肉か?
「これはお魚だよっ!高級なマグロは買えなかったけど、安いマグロは買えたから、今日はまぐろのお刺身です!」
「おー」
『キューーー!』
みーちゃんはお魚はあんまりかと思ったけど、マグロは好きなんだねっ
美味しいやつを分かってるなんて、さすがうちの子!天才だよっ!
「それが魚……綺麗な色をしているな」
「これは赤身だよっ!この他にも大トロと中トロって部位もあるよっ!」
「魚でも部位ごとで違う味を楽しめると言うのか」
「本当は白米が欲しいんだけど、炊飯ジャーがないからなぁ。悲しいね」
「すいはんじゃー?なんだそれは」
「白米を食べれるようにする家電だよっ」
なんだがよくわからんが、そのはくまいってのがあると、更にこの魚は美味くなるのか。
ぜひとも食べてみたいな。
「おさしみだけじゃおなかいっぱいにならないから、鶏肉も買っといたからねっ!あとお野菜も!」
「鶏肉か。それなら俺が焼いてこよう」
「ありがとうナッシュくんっ!サラダは私とみーちゃんで作るねっ」
切って盛り付けるだけだから、私でもできると思う!
切るのはみーちゃんがやってくれるかな?
おー、もう包丁持ってるよ。
でもいつの間に持ってたんだろ?
準備万端なうちの子は天才だよ~
「さて、鶏肉を焼くのか」
ふふふ、もう鶏肉を焼くのは完璧と言っていいだろう。
あとは味付けだが、シンプルに塩だけで……いや、ここはごま油で香りも足す……はたまた新たな魔法のような調味料があったりするのか?
「ナッシュくん、鶏肉の味付けは適当でいいからねっ」
「適当……わかった……」
難題だ。
俺だけの力でこの難題を乗り越えなければならない。
ふふ、ふはははは!
やってやろうじゃないか。
これこそ料理人の腕の見せどころだろう。
シンプルに塩じゃあ捻りがない。
ここはハーブの出番だろう。
俺は気づいた。
ごま油で香りがつくと美味しくなるように、スープ以外にもハーブを使えばいいってことをな。
ふふふ、やはり俺は天才。
世界一の料理人なんだ。
ごま油とハーブ、そして塩を使うことでこれまでにない鶏肉のステーキを疲労してやろうじゃないか。
待ってろひより、今すぐ焼いてやる。
「みーちゃん、これを粗めに切ってね~」
『キュー!』
サラダはシンプルにキャベツの塩ダレでいいよね?
色んな野菜入れてもいいけど、マグロで魔石使いすぎちゃったからな~
それにお醤油とわさびも買っちゃったもんね。
「みーちゃん、お刺身も切れる?」
『キュー!』
久しぶりのおさしみ楽しみだよ~
でもやっぱり白米がないのは寂しいよね。
なんとかならないかなぁ。
デラルさんに相談してみようかな。
あ、あとはあやとりでお箸も作っておこ~
なになに?みーちゃんもお箸欲しいの?
ほんっと天才だよ~
「なんていい匂いなんだ……」
これは食欲をそそるな。
自分の天才性に鳥肌が立つほどだ。
鶏肉だけにな……
はっ、俺は冗談のセンスまで上達してるじゃないか。
面白い料理人。
唯一無二な天才面白料理人になれるじゃないか。
自分の才能に脱帽だぜ。
「ナッシュくんできたよっ」
「こっちもできたぞ」
「とってもいい匂いだね~」
「そうだろそうだろ。これは……」
「ごま油とハーブだねっ」
「……お、おぅ、よくわかったな」
ナッシュくんの料理の腕も上がってるのかな~
とっても美味しそうっ
「ではでは~お刺身の食べ方を教えましょう!」
「おー」
『キュー!』
「まずはこのお醤油です!これを小皿にたらたら~っと。わさびはもうわかるよね?お好みで少しつけて食べると更に美味しいよっ」
なんだあの真っ黒な液体は。
しょうゆって言ってるな。
しかも焼きも煮もせず生で食べるなんてありえないぞ。
あんなのが美味いのか?
いや、ひよりの世界のものだ。
不味いわけないんだろうが……
くぅ、早く食べたい。
「お刺身をお醤油に、ちょんちょんつけます!そして~はむっ……んーー!
これこれ~あぁ、美味しい……日本人で良かったって思える瞬間だよっ」
「そ、そんなに美味いのか?」
「そんなに!だよっ!それじゃあみんなでいただきましょ~」
「おー」
『キューーーー!』
やっぱりナッシュくんはお箸に大苦戦だね。
フォークで食べればいいのになぁ。
「ふっ、くそ、な、なんて難しいんだ……」
『キューーーーッ!』
みーちゃんはもう安定の天才だよ。
なんであの手でお箸が使えちゃうんだろ。
もうそれってネコ型ロボット並だよ。
「はぁはぁ、やっと、掴めたな。これをしょうゆにつけて……んなっ!滑り落ちてしまったじゃないか!」
箸とはなんと難しい道具なんだ。
ひよりとみーちゃんはあんなにも簡単に使っているのに……
これは料理人として負けられない。
食事に関する道具で遅れを取るわけにはいかないんだ。
「ナッシュくん、フォーク使う~?」
「いや、大丈夫だ。もう少しで感覚を掴めそうなんだ」
できる、俺はできる!
「うぉぉぉおおおお!」
相変わらずすごい気合いだな~
フォークで食べればすぐなのに。
でも頑張ってナッシュくんっ
私とみーちゃんは気にせすパクつくね!
「みーちゃん美味しいね~」
『キュー!』
「大トロいっちゃいますか~」
『キューーーー!』
「中トロ~はぁ、幸せ……」
『キュキュキュキュキュ!』
みーちゃんすごいな~高速で食べちゃって。
マグロは美味しいから仕方ないよねっ
「はぁはぁ、やっと掴めたぞ……食べるぞ……」
─────泣いた。
何だこの味は。
肉とは違う弾力。
すっと噛み切れる柔らかさ。
噛んだ後に溶けていくような感触。
表現できないしょうゆの味。
まぐろの美味さと絡み合い、最高の味になっているじゃないか。
これがまぐろの赤身。
美味すぎる。
「みーちゃん大トロと中トロ全部食べちゃったの?そんなに美味しかった?」
『キューーーーッ!』
な、なに?
まだ俺は赤身を1枚しか食べてないって言うのに……
「あ、赤身もないじゃん!あとはステーキとサラダだけだねっまだまだ食べられるから食べよっ」
なんだ、と……
箸で苦戦している間にみーちゃんとひよりで食べたのか。
「ナッシュくんの作ってくれた鶏肉のハーブ焼きも美味しいねっ」
「はは、本当だな……美味しいな……」
「サラダも食べてみてっ」
「これも美味いな……ひよりが作ってくれたから、より美味しいよ……」
まぐろ……他のはどんな味がしたんだろうか。
サラダも美味しいが、食べたかったなぁまぐろ……
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