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リアル・ログイン -やり込んだゲームに本当に入ったら、気づけば家族が増えていたアラフォー社畜-  作者: ひろボ


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第17話:飛翔! ドットバスター・フェニックス

 インカムの警告音がけたたましく鳴り響き、スーツのエネルギー残量が急速に削られていく。

 八体のボスによる完全包囲と、ゼネラル・ギガの冷徹な統率による総攻撃。圧倒的な物量の前に、ピートを庇いながら戦う浩之は一歩、また一歩と押し込まれていく。


「……くそ、流石にこの物量と連携は骨が折れるな!」


「ヒロユキ、後ろから次から次へと……!」


 背中を預け合うピートのバスターウェポンも弾切れ間近となり、二人は絶体絶命の窮地に立たされていた。

 その時だった。要塞の閉ざされた天井の換気ダクトが、盛大な金属音とともに盛大にブチ破られた。


『おーーい! 間に合ったぞヒロユキ――っ!!』


 響き渡る声の主は、通信越しに飛び込んできたピクセル博士だった。


『ワシの天才的な頭脳と徹夜の突貫作業をナメるなよ! 約束の試作サポートアニマル、完成じゃぁぁぁっ!!』


 ガガガガガッ! と上空から飛来したのは、カクカクとした鳥型の自律メカ――『ドットバード』だった。赤と白のドット感あふれるボディが、青白い光を放ちながら浩之の頭上でホバリングする。


「……ほう。いいタイミングで届いたな、博士」


 エネルギー残量が限界に近づいていた状況下、浩之は不敵に笑うと、装着していた重厚なプロトタイプ・バスタースーツの胸部・肩アーマーのロックを自ら解除した。


「システム・パージ」


 ガシャリ! と重い金属音が響く。負荷の大きかった初期型アーマーが地面へと脱ぎ捨てられ、軽装となったバスタースーツ姿の浩之に向かって、ドットバードが鋭い電子音を鳴らした。


「こいドットバード! バードアーマー換装だ」


 ドットバードが空中で鮮やかにトランスフォームし、無数のブロックパーツへと華麗に分解する。

 シュピイイッ! と光の軌跡を描きながら、パーツが浩之のバスタースーツへ次々と吸い込まれるようにガチリ、ガチリと装着されていく。

 胸部、肩、背中、そして両腕。最後に頭部へとヘルメット状のアーマーが展開し、背中には高出力の推進翼(ウイング)が展開した。


【――『バード・アーマー』、換装完了】


 全身がスタイリッシュな赤と白のドット基調のハイテクアーマーに包まれ、浩之の背中からふわりと浮力が生じる。それは空を自在に駆ける、『飛行能力』の獲得を意味していた。


「換装完了! ドットバスター・フェニックス!」


 その姿は、初代ドットバスターが纏うような質素な初期装備の範疇を遥かに超越していた。

 赤と白の鮮烈なドットパターンに、洗練された流線型のシルエット、重層的なアーマーの配置。そして、背中にそびえる高出力の推進翼(ウイング)――。

 その完成された出で立ちは、シリーズ中盤の『5』あたりでようやく解禁されるような、機能美とロマンがこれでもかと詰め込まれた未来の姿そのものだった。


(さすが、未来でサポートアニマルシステムを完成させるピクセル博士だ。わずかな構想のヒントから、ここまで完璧なものを突貫で作っちまうとはな……)


 心の中で乾いたツッコミを入れつつ、浩之は目の前の現実へと意識を切り替える。


「なっ……なんだあの鳥は!? 突然パーツに分離して、人間の体に装着されたぞ!?」


「バカな、重力制御ユニットの搭載など聞いていないぞ!」


 ボスたちのどよめきをよそに、空へと舞い上がった浩之は、冷徹な光を放つバスターウェポンを構えた。


「――さて、形勢逆転といこうか。ピート、ここは俺に任せろ!」


「頼んだよ、ヒロユキ!」


 ズドオオオッ!!


 空を制圧した浩之は、バード・アーマーから放たれるチャージバスターの精密射撃で、まず頭上の脅威であるスカイ・バットを撃墜した。さらに、機動力を活かした一閃でグランド・ジャガーの重砲身を両断し、周囲に群がる雑魚メカの群れを一網打尽に掃討していく。


「ふん、制空圏が取れればただの的だな。……ピート、地上の残りは任せたぞ!」


「任せてくれ! 支援射撃なら僕だって負けないさ!」


 浩之の指示を受け、ピートは体勢を立て直すと、チャージを終えたバスターウェポンを力強く構えた。


「くらえ、1号の全力連射だぁぁぁ――っ!!」


 ピートの放った高速のエネルギー弾の嵐が、地表を這う雑魚メカたちの群れを的確に撃ち抜き、次々と誘爆させていく。上空からの圧倒的な浩之の猛攻と、下からのピートによる息ぴったりの援護射撃により、敵の包囲網は完全に寸断されていった。

 バード・アーマーの推進翼を鳴らし、浩之はさらなる加速で敵陣へ突撃した。

 クアッド・ガンナーとサンダー・モジュールが放つ幾重もの弾幕と電撃の網が、空間を埋め尽くすように押し寄せる。しかし、浩之は推進翼による超加速を駆使し、敵の狙いを完全に嘲笑うかのような紙一重の軌道で弾幕の嵐を翻弄し、華麗にすり抜けていく。


「隙だらけだ」


 高速移動の軌跡を描きながら、バスターウェポンから放たれる圧倒的な連続射撃が、敵の装甲の継ぎ目を正確に穿っていく。ビシュシュシュッ! と光弾が連打され、周囲の雑魚メカたちごと次々と蜂の巣にされていく。

 その猛攻をかいくぐり、地を這うように迫るスコーピオンタンクが、高圧の電撃レーザーを乱射して迎撃を試みる。しかし、三次元の立体機動を手に入れた浩之の前には、その軌道すらスローモーションのように見えた。


「まずは一匹」


 ふわりと真上に回り込んだ浩之は、アームを【ハンマーモード】へ変形させ、重力を乗せた急降下プレスを浴びせる。


 ドガァァァンッ!!


 装甲を粉砕されたスコーピオンタンクは、断末魔の機械音をあげる間もなく地面へめり込み、活動を停止した。


「次!」


 すぐさま反転。残された強襲型のサイクロン・アームズが高速回転突撃を仕掛けてくる。だが、浩之は【ブレードモード】へと瞬時にスイッチ。

 青白いプラズマ光刃が夜空の流星のごとく閃いた。


 スパァンッ! と美しい弧を描いた一閃が、サイクロン・アームズの回転軸を両断する。


「遅いな」


 ピートの的確な援護射撃のサポートもあり、ボスたちはすべて地に這いつくばり、広大なドックには激しい爆煙と無数のスクラップの山が転がった。

 残るは、本来のラスボスである司令官型ボス『ゼネラル・ギガ』のみとなった。


「終わりだ、ゼネラル・ギガ」


 ピートが見守る中、浩之がバード・アーマーの推進翼を揺らし、トドメとばかりに銃口を向ける。本来のゲームの仕様なら、このゼネラル・ギガを撃破すればクリアとなり、そのままスタッフロールを迎えてエンディングになるはずだった。

 だが、その冷徹な司令官は微動だにせず、ただ不気味な電子音を響かせた。


「……計算通りだ」


「……なに?」


 ゼネラル・ギガがゆっくりと両腕を広げる。その瞬間、床に転がっていたはずのボスたちの残骸――ビッグブルの装甲、スカイ・バットの翼、グランド・ジャガーの砲台、そして他の破壊された機体から、一斉に怪異な光が漏れ始めた。


「貴様は各エリアの各ボスユニットを確実に各個撃破していくべきだった。だが……直接我が本拠地に乗り込んできた。そのおかげで、全戦力を一箇所に集中させることができたぞ」


「まさか……! おい、マジかよ。道中を全部ショートカットして直行してきたせいで、逆にボスを全員ここに集めちまったってのか……!?」


「各ボスは、単なる戦闘ユニットなどではない。我が最終戦闘形態へ移行するための、特製増設モジュールだ」


「そんなボスの残骸を回収して合体・強化するなんて仕様、どんなやり込み攻略本にも一切載ってねぇぞ……!」


 ゴゴゴゴゴッ……! と地響きが起き、吹き飛んだはずのパーツの数々が磁力に引き寄せられるようにゼネラル・ギガへと猛烈な勢いで吸着していく。

 ゲームならボスを倒せばそれでクリアのはずが、ここでは『敵を撃破して残骸を残すこと』そのものが、ラスボスの強化フラグになっていた。敵のシステムの一部として回収・再利用されるなど、どんな攻略法にも想定されていない最悪の罠だった。

 煙が晴れた時、そこには原形を留めないほどの巨躯と化した、禍々しい要塞型最終形態『ギガ・モジュラー・コンバイン』がそびえ立っていた。


「……マジかよ。ボス8体分の武装と攻略パターンを、一体の敵が全部持っているのかよ!」


 浩之が思わず舌打ちする。

 ドガァァァンッ!! と要塞の全壁面を震わせる凄まじい爆音が響き渡り、完全覚醒した『ギガ・モジュラー・コンバイン』が、その凶悪な全武装に一斉に火を噴かせた。

 頭上のウイング部から放たれるスカイ・バットの加速飛行と、ビッグブルの圧倒的な質量を乗せた超音速突進が空間を引き裂く。さらに、グランド・ジャガーとクアッド・ガンナーの重砲身から数え切れないほどの全方位ミサイルが乱射され、床を這うサンダー・モジュールの高圧電撃ネットがドック全体をビリビリと焦がしていく。

 まさに、すべての死が同時に押し寄せる絶望の弾幕嵐だ。


「甘いな……!」


 浩之はひるむことなく、ドットバスター・フェニックスの推力を限界突破のオーバーロード状態まで引き上げた。

 全身を包む赤と白のハイテクアーマーが轟音を立てて光り輝き、あらゆる制約を置き去りにする神速の機動で弾幕のど真ん中へ突撃する。


 シュピイイッ!!


 迫り来るミサイルの群れを【ブレードモード】の青白いプラズマ光刃が一閃のもとに両断し、連鎖的な大爆発を引き起こす。背後から迫る電撃の網を紙一重のロール旋回で回避し、すれ違いざまに【ハンマーモード】の重撃をギガの巨腕へ叩き込んで弾き返す。


 ガキィィィンッ!!


 要塞をも揺るがすような金属の衝突音が轟き、衝撃波が周囲の足場を粉々に粉砕した。

 ボス8体分の莫大なエネルギーと武装を同時に操る巨獣の猛攻に対し、浩之は一歩も引かない。

 空を裂き、光弾を弾き飛ばし、互いの全エネルギーが激突する一進一退の超ド級のデッドヒートが展開される。

 幾重もの弾幕とビームが交錯し、周囲一帯は激しい閃光と分厚い衝撃の煙へと包まれていった。


「システム・パージッ! 超加速!」


 煙のなか、浩之は限界を迎えたバード・アーマーのロックを強引に解除した。

 ガシャアァン!! とアーマーが四散し、軽装のバスタースーツとなった浩之が爆煙を突き破って、まるで一筋の弾丸のように急加速で飛び出す。

 彼は手にしたバスターウェポンの先端を巨獣の装甲の継ぎ目に深く、力強く突き刺した。


「エネルギー回路、全解放――オーバーロードッ!!」


 浩之の叫びとともに、突き刺さったバスターウェポンが限界を超えたまばゆい光を放ち、巨獣の内部で臨界爆発を起こした。


 ドガアァァァァンッ!!!


『ガガッ……!? バカな……内部フレームへの異常出力……計算外ダッ!!』


 装甲の隙間から激しい閃光とプラズマが噴出し、ギガ・モジュラー・コンバインが絶叫のような電子音を上げる。強固な内部フレームが内側から吹き飛び、巨獣はその場にガクンと膝をついた。

 機動力を完全に奪われ、沈黙しかけたギガ・モジュラー・コンバイン。

 その背後で、もう一つの光が眩い輝きを放ち始めた。

 浩之がパージしたバード・アーマーが、残されたエネルギーに反応するように空中で細かなパーツへと分解される。

 まるで持ち主を選ぶかのように光の軌跡を描きながら、そのパーツはピートの小さな身体へ次々と装着されていった。

 赤と白の装甲は、ピートのエネルギーに反応して黄金色の光をまとい、傷だらけになった小さなドットバスター1号の姿を包み込む。

 浩之が限界まで戦い抜いた力を、今度はピートが受け継ぐ。


「……ヒロユキ。僕も、最後まで一緒に戦うよ」


 小さな拳を握り締め、ピートは空を見上げた。


「僕だって……ドットバスターだぁぁぁーーっ!!」


 ピートが叫ぶ。その小さな身体を包むドットバードのアーマーが、眩い黄金色に輝き、全身が神々しく発光する。

 ピートは全推進力を解放し、上空へと一気に舞い上がった。


「くらえ! 僕たちの、未来をかけた最後のトドメだ!!」


 黄金の流星と化したピートが、渾身の力を込めたバスターウェポンとともに急降下突撃を敢行する。


 ズドオオオォォォンッ!!!


 ギガ・モジュラー・コンバインの中央核心へ直撃した一撃は、巨大な機体の装甲をやすやすとブチ抜き、その巨体に巨大な風穴を穿った。


「馬鹿な……システムが、崩壊……」


 ゼネラル・ギガの電子音が途絶え、次の瞬間、巨躯の内部から眩い光が溢れ出す。


 ドッバアァァァンッ!!


 要塞の中央ドックを揺るがす大爆発とともに、ギガ・モジュラー・コンバインは跡形もなく盛大に爆散した。

 悪の機械軍団は完全に壊滅し、静寂が訪れる。

 空からふわりと着地したピートの元へ、浩之が歩み寄り、力強く肩を叩いた。


「やったな、ピート。見事なトドメだった」


「うん……! 僕たちの大勝利だね、ヒロユキ!」


 崩れゆく要塞の残骸を背に、二人は笑顔で拳を合わせる。

 轟音を立てて崩壊していく巨大要塞の向こうに、ようやく朝焼けの光が差し込み始めていた。

 ――こうして、悪の組織との戦いは幕を閉じた。

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