もうすぐ長岡花火ですね。長岡市民の私は家で見ますが
長岡花火の話題が全国ニュースで流れ始める季節になった。
日本三大花火の一つ、長岡花火。
慰霊の花火「白菊」。
復興祈願花火フェニックス。
夜空を震わせる正三尺玉。
長岡の歴史と祈り、そして希望が詰まった花火大会である。
楽しみにしている人も多いだろう。
私が住んでいる地域も、花火の音が届く範囲だ。同じ長岡市なので、会場までは車で三十分ほどである。
だが、私は行かない。
理由は単純だ。
帰ってこれないから。
「大げさでしょう?」
そう思う人もいるかもしれない。
だが、長岡花火を知っている人なら、きっと頷くはずだ。
人口約二十五万人の市に、二日間で延べ百万人を超える人出。有料観覧席だけでも約三十四万人。しかも来場者の七割近くが市外から訪れる。
花火は午後七時過ぎから、およそ二時間。
しかし、本当の戦いは、その前から始まる。
近年の八月は、夜になっても気温三十度近い熱帯夜だ。日が落ちてもアスファルトは熱を抱えたままである。
そんな中、一日あたりおよそ五十万人もの人が会場へ集まる。
人、人、人。
前へ進むにも、人の流れ。
立ち止まるにも、人の流れ。
暑さと湿気に包まれながら、ひたすら人混みを歩く。
それだけでも、なかなかの苦行だ。
そして、花火が終わると、今度は全員が一斉に帰路につく。
高速道路は長い列。
一般道も長い列。
駐車場から出るだけで一苦労。
車で三十分の距離が、二時間、三時間になることも珍しくない。
「じゃあ電車なら大丈夫か」 というと、そうでもない。
終演後は、駅へ向かう人の波が一斉に動き出す。通常なら三十分ほどの道のりも、規制と人混みで一時間、二時間とかかることもある。まず駅までたどり着くのが大変なのである。
目的地に着く頃には、日付が変わっていた。
そんな話も、決して大げさではない。
だから私は、自宅の窓を少しだけ開ける。
ドン。
少し遅れて、お腹に響く低い音。
夜空は見えない。それでも、「ああ、今年も始まったな」と思うには十分だ。
エアコンの効いた部屋。冷えたビール。山盛りの枝豆と茹でたとうもろこし。柿の種。それを囲みながら、家族でテレビ中継を見る。
私にとっての長岡花火は、今ではそれが一番贅沢な楽しみ方である。
もちろん、現地で見る花火は圧巻だ。
中越地震からの復興を願い、平原綾香さんの「Jupiter」に合わせて夜空いっぱいへ広がる復興祈願花火フェニックス。
毎年打ち上げられる慰霊の花火「白菊」。
そして、開花直径約六百五十メートルにも及ぶ正三尺玉や、大ナイアガラ、米百俵花火・尺玉百連発。
どれも長岡花火を代表する名物であり、一度は現地で見る価値がある。
ただし、その感動のチケットには、「暑さ」と「帰り道」という二つの試練もセットで付いてくる。
ちなみに、私の実家の六十代の両親は、長岡花火ガチ勢である。
日中は畑仕事に精を出し、夕方には家を出発。
父の友人宅の駐車場に車を置き、そこから折りたたみ自転車で三十分。向かう先は、会場近くのスーパーの駐車場である。そこで立ち見をするのが、定番のスタイルらしい。
……毎年思うが、正気ですか?
だが、この時期の二人はやたらと元気で、妙に肌ツヤまでいい。長岡花火とは、それほどの活力を与えるイベントらしい。
長岡花火には、長岡花火なりの攻略法がある。
まず、有料観覧席を確保すること。長岡花火をゆっくり楽しむなら、これはほぼ必須である。
そして、高額転売チケットには手を出さないこと。せっかくの長岡花火なのだから、正規の方法で気持ちよく楽しんでほしい。
……我が両親の楽しみ方は、地理勘と長年の経験があってこそ成立する。初めて長岡花火へ行く人には、まったくおすすめしない。
そして、県外から来るなら、ツアーは早めに予約すること。人気のツアーは、数か月前には満席になることもある。
個人で行く場合も油断は禁物だ。「ホテルはあとで何とかなるだろう」その考えは、長岡花火では通用しない。
高速道路沿線を中心に、新潟県内の宿は早い段階で埋まっていく。中には新潟市内に宿を取り、そこから長岡へ向かう人もいるほどだ。さらに、地元企業が毎年宿泊枠を確保しているホテルもある。
ホテル争奪戦は、花火大会よりずっと前から始まっているのである。
最後に、フェニックス花火が終わったら帰ること。
「あれ?フィナーレじゃないの?」
と思った人もいるだろう。
実はフェニックスは中盤である。
ここで少し早めに撤収する。そうすることで、帰りの渋滞をある程度回避できる。
つまり、長岡花火とは、花火を見るイベントではない。
どう帰るかまで含めて楽しむイベントなのである。
長岡花火は、本当に素晴らしい花火大会だ。
一度は現地で見る価値がある。
だが、暑さと人混み、そして帰りの大渋滞まで含めると、私はどうしても腰が重くなる。
その点、地方の夏祭りは気楽だ。
レジャーシートを広げ、屋台で焼きそばでも買って、夜風に当たりながら花火を眺める。それでも十分に綺麗だし、何より終わったら普通に帰れる。
私は、地域の祭りで打ち上げられる五号玉や十号玉を、間近でゆっくり眺めるくらいが、安心して楽しめる派なのである。
……この結論に落ち着いたのは、子どもの頃に毎年のように長岡花火へ連れて行ってもらっていたからである。
ガチ勢の両親よ、ありがとう。
私は家で楽しみます。
皆様は花火大会にどんな思い出がありますか?
おすすめの花火大会や、「帰りが地獄だった!」なんてエピソードもありましたら、ぜひ教えてください。




