きめ
この男は、器の大きさがほかと違うのかもしれないとヒコイチは感心した。
「 ―― キヘイさんよ、あの男たちの『顔』が《木の面》だっていうのは、すぐわかったのかい?」
おうよ、とうなずいた男は上をむき、うっそうとした杉をじっくりとながめてから、キメがな、とヒコイチをみた。
「 ―― 木目がみえたんだよ。 おれに頼みにきた人の、もりあがった頬のあたりに。 そんで、ホクロとおもったのはどうやら虫食いらしいと気づいたら、もうその顔がどうなってるのか気になってしかたなくなってなあ。 ―― 《面》としてつけられて、そのあと《顔》になったときいておどろいたが、きっとその『面』だって、ただの《面》じゃなかったはずだ。 だってよ、祭りでうってるようなもんをつけたとして、いくら不思議な力があるっていっても、それは『顔』にはならねえだろう? ―― 『顔』になって、何百年ももつぐらいの『面』だったんだ。 そういうのを彫れる人が、彫った面だったのに、―― さすがにもう、耐えられねえとこまできてたんだろうなあ・・・。 あの、戸口にきたじいさまはな、中がもう腐ってると、わらっていたからな」
さあ、赤ん坊が出るのを見届けたら、すぐにあのじいさまのぶんをほらなくては、と肩をまわした。




