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恩は忘れぬ
『 おぬし、いいところに気付いたな。 ―― ここでまたキヘイジが《もどってしあげる》と口にしていたら、ここの《山神様》に、つれもどされるところじゃったな 』
キヘイジの口から、おかしな声がもれた。
『 最後の『面』ができあがったなら、おまえの家の軒先につるしておけ。 ―― われらのこの『顔』は、大昔、ある者がわれらにくらわした『罰』でな。 もとの顔をはぎとられて、木の面をつけられたのよ。だが、その面はわれらの《力》でやがて血がかよい、肉となり、新たな『顔』となった。 ―― しかし、もとが木であるだけに、時がたちすぎると朽ちる。 シワのようにひびが入り、もろくなり欠け、腐ってゆく。 ―― このはなしもしていないのに、そこなキヘイジがわれらの『顔』を、木でできた『面』だとみやぶり、新たにつくってやろうと、いうてくれたのだ。 この恩を忘れるわけにはゆかぬでな。 ―― その男ともども、いそぎ家へと送ってやろう 』
ったん
閉まる音がして、気づけばヒコイチはまた、廊下に立っていた。




