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思い出した名前
サキとよばれる女の赤ん坊がなきだした。
しぜんとそれを抱き上げようと腕がでたが、どうにか、がまんする。
「こりゃ・・・ちがうだろ。おれが、この家のおやじなんてことは・・・」
「いやだ、あんたなに言ってんのよ。 ほら、はやくサキをあやしてくれないと」
赤い顔をして、手足をふるわせて赤ん坊がないている。
背中のこどもが、とうちゃんはやく、とせかす。
台所で女が包丁をつかう音がひびき、煮炊きするいいにおいがして ―― 。
「 キヘイジさん、 」
きゅうに思い出し、名前をよんだ。




