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『みなのしゅう』
『 みなのしゅう、みなのしゅう、ヤヘエがササゲをよこしたぞ 』
面の男が玄関の引き戸に手をかける前に、懐にしまったササゲをたたいてそう言うと、家の中からおおうううううう、という、大勢の男の低い声が響いた。
『 みなのしゅう、みなのしゅう、ヤヘエがよこした男もいれてよいか? 』
またしても、おおうううう、という声があがった。
はいった玄関のたたきをうめつくす数の、履き古された下駄がきれいに並べられ、さきにあがった男も、おのれの下駄をきれいな所作でそろえる。
それをながめるヒコイチに、おまえもあがれと声がかかる。
へい、とこたえて見習って自分のぬいだ草履をそろえていると、背後にあるふすまのむこうで、なにやら、ひそひそとした声が、ささやきあっているのを感じたが、寒気はしない。




