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ヤヘエ
《元締め》の家を出て、裏山の中にある細い道をたどり、くだってゆくと、うっすらと煙のにおいがしてきて、やがて木々のすきまから、ふるぼけた小屋がみえてきた。
山をくだりきるころには、その小屋のそばに、小さな年寄りが立っているのもみえた。
ヒコイチより小柄だがしゃっきりと立ち、片手には鉈をつかんでいる。
なぜか、近づくより前にこちらに気付いたようで、なんどもうなうずいてむかえた。
「おうおう、おンもしろいのがきよったぞ。 ほれほれ、その手紙をはよオよこしや」
にこにことしわだらけの小さな顔をむけて、空いた方の手をつきだす。
頭をさげたヒコイチは、ヤヘエさんですかい?とたずねながら、懐からだした《元締め》の手紙を、年寄りにわたす。




