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せめてウサギなら認めてもいい



「ふんふんふ~ん」

「ご機嫌ですね、アリスお嬢さん」

「ご機嫌と言えばご機嫌だな」


だって、我今ドレス着てるし。こんな可愛くて我にぴったりのドレス着て、何で不機嫌でいられるんだ。経緯的には腹立たしいが、この服を着ている以上ぶすくれた顔より笑ってた方が最高に可愛い。だって似合うもん。


これはな、今朝方出発前に届いたキエラ製のミニドレスなのだ!流石貴族御用達で普段令嬢のドレスを作っているだけあり細部の装飾までこだわり抜いている。しかし、それだけではない。冒険者である我、かつまだ幼いからこそ許されるミディ丈のスカートを提案し我に相応しい仕上がりを見せた。


うむ。流石だったぞ。……キエラ本人が届けにきたのだが、相変わらずの健脚だったし。


……それは兎も角。我は今、馬車で大人しく運ばれている。その気分はさながら荷馬車に揺られる子牛のよう。……誰が牛か!


「……何1人で楽しそうに百面相してるんすか…」

「同行者のノリが悪いから?」

「…急に矛先変えるの、ほんと、やめてもらっていいですか…お嬢さん…」


発言に気を付けてくれないと困るの俺なので…。と付け加えられたのだが、別に我悪いことしてないもん。



馬車に乗っているのは我と、従僕として同行しているアノクだ。行き先は無論、魔導国。他に同乗者は無し。強いて言うなら灼華が御者台に乗ってる。今回はきちんと馬を操縦してる。


本人は不本意そうだったが、魔導国の奴らは人力(?)車を絶対野蛮だのなんだのと言うに決まっているからな。

これから騒ぎを起こしには行くが、わざわざ起こさなくていい騒ぎを起こして楽しむ趣味は生憎とない。


「…あのー、本当に、俺を連れて行くんですか?」

「ああ。だが馬車から出たら一人称に気をつけろ」


リィや料理長達は今回は空島にて待機である。正確には、亜空間内の城な。そのため正直、はなれているという感覚ではない。だって今も我が戻ろうとすれば瞬く間に着くのだから。


「1番警戒されなそうなの、アノクくらいだったからな」

「……これでも元一流暗殺者なんですが」

「見る目がある者ならまあわかるかもしれんが、料理長は有名な上に従僕としてなとど我は扱えんし、ラギアは従僕として扱えるものの料理長同様で国上層部には知られすぎているからな」

「ラギア様を従僕扱い出来て将軍は無理ってどういう事ですか…」


更に1人1人の戦力有りすぎて、警戒されまくりなのだ。それに比べれば、暗殺者への警戒はかなり少なかろう。


「あとついでに、アノクはかなり常識的な人間だから大丈夫だとリィが太鼓判おしてたし」

「俺が常識的というよりは、お嬢さん達がおかしいだけですよ」


……本当は馬車だけを走らせて、魔導国に着いてから馬車の中に入ればいいかと思っていたのだが、それは却下された。アノクによって。


なるべく我が空間系の魔法で飛び回れることを悟られないようにすべきと言われてしまったからな。それを言われてしまえばそうだな、と皆で納得したのだが。


「…本当はラギア様も常識的な人だったんですけどね。魔法も適所で使う感じでしたし」


何?間違っても休憩所を作るためだけに魔法を酷使するような人間じゃなかった?

……我が魔王だった時は、我の世話を1人でせんがために魔法をかなり使っていたのだが。かつての奉仕意識そのままだから、仕方がないのだろう。


我がケタケタ笑ってたら諦めて、給料分の仕事はきちんとしますよとそれ以上は突っ込んでこなかった。良い心がけだな。



「…ところで、お嬢さん。何で伯爵家の馬車断ったんですか?」

「何が仕込んであるかわからないから」


ああ…そこ即答するんですね…。と引き気味だな。


「我はあの家の義母やら義姉やらに毛嫌いされていたからな。馬車を貸すなんて聞いたら怒り狂って何か仕込みそうだ」

「馬車に何仕込むって……あー、確かに。車輪に細工し放題、御者を買収して馬車の壁越しにトドメ刺したり、座席下に刺客を隠しておいて奇襲やら、遅効性の毒の香を焚いておくことも出来ますよね」

「……一瞬にしてそれだけ方法考えつくとは、流石暗殺者」


…こっわ。


「でもどれもお嬢さんには無効じゃないですか」

「うむ。その程度で我を殺せると思うことこそ最大の侮辱だとは思うが」


毒入りジュース効かない時点で諦めたはずなので今回は単純にあの家の馬車に乗るのが嫌だっただけだ。


そろそろ魔導国と我の生まれの国の間の森を抜ける頃かなと思ったところで馬車が急に止まった。急停止したせいでアノクが変な声をあげて座席から落ちた。体幹弱い…。


「お、…お嬢さんは、浮いてる、から…!」

「煩い。灼華が御者を務めているのにまともな運転な訳が無かろう」


自分で馬車を引いていようが、馬車を引かせている馬を操っていようが、結局荒れた運転になるのは目に見えておるだろうに。


「どうした灼華」

『主様、この先ずっと馬車が続いております」


なんと。魔導国の検問からここまで?……馬車が十数台はあるように見えるな。


「アノク、調べてこい」

「かしこまりました、お嬢様」


そして待つ事紅茶一杯分。


「全て同じ紋が馬車に付いてましたー。で、検問の所で防犯対策?で、令嬢だけ一時的に魔法を無効化するゲートを潜ってます。…というか、髪の色とか目の色を変化させる魔法を無効化されてるみたいですよ」


どうしてそんな事をしているのか、理由は単純明快。


「アリステラ・アトリシエ伯爵令嬢を騙る偽物が後をたたないそうです」


……伯爵の話を聞いた時はそんな馬鹿な事ありえんだろう馬鹿なのかと呆れでお腹いっぱいだったのだが、我が義姉のような令嬢は、どうやら割と普通なのかもしれない。


読了ありがとうございます。

本日中にあと2話くらい更新予定です。

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