第4話 恋がふくれる(6)
2学期が終わり、12月24日。クリスマスイブであるとともに、たまきの16歳の誕生日。多目的室では、たまきの誕生日を祝っていた。
まりな、みつば、かえでが朗らかにたまきの誕生日を祝う。
「ハッピーバースデー!」
久哉は明るくスマートに祝う。
「おめでとう!」
「みんな、ありがとう!」
たまきは満面の笑みをしながら、みんなに感謝する。たまきとみつばとかえでから、まりなにプレゼントをする。まりなは黄色い星型のコスメポーチ、みつばは48色入りの鉛筆、かえではスケッチブックを渡す。
「ありがとう。プレゼントまで」
すみれがいつもよりも明るい声で祝いつつ、自分で描いたたまきの似顔絵を渡す。
「たまちゃん、おめでとう」
「ありがとう、すみれちゃん!」
たまき、すみれから祝われつつプレゼントも貰えたため、更に上機嫌になる。
「ぼくに似てる!」
久哉も、自分で描いたたまきの似顔絵を渡そうとする。ただ、久哉はあまり絵が上手ではない。女子4人が久哉の絵を見てくすりと笑う。
「笑うなって。俺からたまちゃんへの、クリスマス兼誕生日プレゼントだ!」
久哉は、たまきから渡されて笑顔で絵を見つめる。
「ぼくは嬉しいよ。頑張った描いているのが伝わるから」
「ありがとな、たまちゃん」
みつばがさりげなく自分の誕生日アピールをする。
「もう少ししたら、私も誕生日」
「そういえば、みっちゃんって誕生日いつだっけ?」
久哉が聞くと、まりなが答える。
「1月10日」
「すげぇ、流石はまりちゃん」
みつばも、2人の会話に乗る。
「3学期になったらすぐ誕生日迎えるような感じだね」
「俺は5月5日。このグループ結成前に迎えちゃったから、みんなから誕プレは貰えていない。でも、そんなこと気にしてない」
すみれも、会話に乗る。
「私は5月30日。久哉とそこまで変わらない」
「あれ? その頃だともうグループ結成していたよね」
まりなが、ツッコむとかえでがハイテンションで乗ってくる。
「教えてくれればかえでちゃんプレゼント買って渡していたのにぃ~」
「そこまで、誕生日アピールをしようと思っていなかったから」
「かえでちゃんの誕生日の時、文化祭関係で忙しかった。でもパーティーほどじゃないけど、誕生日をアピールしたら、ここにいるみんなや、クラスのみんなに祝ってもらえたんだよね。楽しかった~」
たまきの笑い声。
「誕生日のことで会話が盛り上がるなんて。やっぱりこのグループの居心地が良い証拠だね」
夕方になって空が暗くなる。柏の葉キャンパス駅の周辺には商業施設が立ち並んでいる。この日も、比較的多くの人が行き交って賑わっている。たまきとすみれが駅前のロータリーを歩いてた。
「今日は美味しいもの中心に食べてたいなぁ。ぼくの誕生日で、クリスマスイブだから」
「ちょっと距離が縮まってきたからって、甘えすぎるのはダメ」
「だって、すみれちゃんのほうがしっかりしているし。みんなのお姉さん的存在」
「お姉さんなら、あなたの相方とかえでの方がしっくり来ると重んだけど。でも、今日は特別ね」
2人で楽しそうに、商業施設へと入っていく。
ライトアップされたハートを縁取ったオブジェがある。ハートのオブジェから覗くように、まりな、久哉、みつば、かえでが、館内へ入っていくたまきとすみれを眺めていた。
「半年前の俺が見たら、想定外過ぎて思わず笑っちゃっていたかもな」
「私も。すみれちゃん、こだわり強そうだし」
「そう? かえでちゃんは面白い組み合わせで結構いいかも。まりちゃんは?」
「まりなは…。たまちゃんが楽しいならそれで幸せ」
まりなの言葉には嬉しさと複雑さが混ざっていた。いつも自分に甘えていたたまきが他の女子と付き合うことが、巣立っていくような感覚近かったのである。無意識に、自分との距離が離れていく不安も抱えつつある。
まりなは、オブジェを支える台座に座り込む。3人はまりなの顔を見て、心配になる。かえでがすぐ、笑顔に切り替えてまりなを励ます。
「まりちゃん。たまちゃんと友達なのは変わらないんだから、ほらスマイルスマイル!」
「すみれちゃん。無理にそうしなくてもいいって。ずっと一緒だったから複雑になるって、私にはわかる」
「俺は前向きに見ているな。すみれ、高校入ってから結構楽しくやっているなように見えるし」
久哉、まりなの肩を軽くポンと叩く。
「俺、あいつらのこと見守ろうと思っている」
「かえでちゃんも。すみれちゃん、最初の頃よりちょっとずつ表情に余裕が出来た気がするもん」
「私が見るには、たまちゃんの魅力が大きいかも」
まりなの目から、涙が出る。
「みんな…。まりなだけが前を向いていないのかも」
「たまちゃんのことが大事なら、いつでも味方になってあげなよ。それに困った時は、俺らがいる。みんな友達だろ?」
「みんな、ありがとう」
「さてと、俺は自分へのご褒美でゲームでも買うか」
「かえでちゃんは、なおちゃんとディナーを作ろうっと」
因みに、なおちゃんとはかえでの母のことである。
「そしたら、まりなもママとご飯作って家族でパーティーかな」
「私も、たまにはパパとママにプレゼントでも渡そうっと」
3学期に入る。多目的教室では、6人で今後の"いろどりいいとこどり"の活動方針について語り合っていた。
みつばとかえでが、目的について語り出す。
「多目的や何でも屋だと雑用ばかりなイメージだから、イベントサークルって感じのほうがいいかも。お茶会も楽しかったし」
「かえでちゃんも同じ意見」
久哉、少し頭を悩ませるように語りだす。
「すみれとたまちゃんには軽く話したんだけど、そろそろ新しいメンバーが欲しいと思っているんだ」
「6人でも良い思うんだけど、もう少ししっかりした子が欲しいかも」
すみれも、内心は仲間が欲しいと思っていた。
「久哉くん、誰か誘いたい子がいるってことでしょ? ぼく、なんとなく誰だかわかるかも」
まりな、呆然としている。たまきが声をかける。
「まりちゃん? 大丈夫」
まりなはたまきの声を聞き、動揺する。
「えっ?」
「あ、そうだよね。まりなも新しいメンバー来るの楽しみ」
「ぼくも楽しみ。賑やかになりそう」
「かえでちゃんも。仲間が多い方が楽しい」
「私も。人数が増えれば、イベントの準備が楽になるから」
まりなの一声で、なぜか新メンバーが来る前提で会話がふくらむ。すみれ、みんなが勘違いしていると思い、ツッコむ。
「まだ、誰か来るって決まったわけじゃないし」
「ごめん、まりなが変なこと言っちゃったから」
「まりな、別に謝る必要はないから」
ドアが空く音。音を聞いた6人がドアの方を向いて、目を大きく開く。
「えっ!?」
久哉とすみれ以外の4人が驚く。
「おや? 早速お出ましか。もしかしてすみれが誘った?」
「いや、誘ってはいないけど」
「もしかして、お茶会楽しかった?」
すみれ、入ってきた生徒に問いかける。




