ゼロコロナを目指して強化される上海の新型コロナ隔離政策
上海のロックダウンが本格化して二か月ほど経った。
感染者数はひと頃と比べてかなり減ってきたのだが、上海市政府はゼロコロナ達成のために隔離政策を強化した。
これまではPCR検査や抗原検査で陽性だった人だけ、ホテルや隔離施設へ入ることになっていたのだが、今後は陽性者が出たマンションの部屋の同じ階の人すべてと上下の階のすべての人が隔離施設へ入って隔離されなければならないことになった。
例えば、八階建てのマンションの603号室で陽性者が出ると、六階の人々は検査結果が陰性であってもすべて隔離施設行きとなり、さらに、103号室、203号室、303号室、403号室、503号室、703号室、803号室の人々も全員隔離施設へ行かなければならない。同じフロアの人々はエアロゾル感染しているおそれがあり、上下のフロアは下水管を通じてウイルスが拡散しているかもしれないためだという。ウィチャットには、ある小区で隔離施設へ行きたくないと泣いている老人たちの姿を映した動画が流れていた。慣れない隔離施設へ行かされるとなれば、特に老人はさぞ心細いだろう。
写真は仮設の隔離施設。
簡素なベッドの相部屋だ。右奥には、トイレとシャワーがあり、左奥にはエアコンがある。コンセントもあるようだから、スマホやパソコンの充電はできそうだ。最低限の設備は備わっている。
ただし、この相部屋には、陽性者も陰性者も一緒に入ることになる。この隔離部屋に入っている間にコロナをうつされるのではないかとみんな怖がっている。実際、自宅で検査を受けた時は陰性だったのに、隔離施設へ行ってから検査を受けて陽性者となってしまう人が結構いるのだそうだ。
一部の街道(区の下の行政単位)では、独自に陽性者が出たマンションを一棟丸ごと消毒するところも出てきた。街道の職員が隔離施設に入っている人たちに消毒するから鍵を出しなさいと住民に強要し、鍵は渡せないと住民が拒否すると、街道の職員は消毒しなければ家に帰すわけにはいかないと脅かす。この部屋の消毒は上海市政府の政策ではなく、一部の街道が自分達で勝手に始めたことのようだ。ゼロコロナを達成しましたと上層部へよい報告を上げるために暴走しているのだろう。
上海の義母は、かれこれ二か月間、自宅でロックダウンされたままだ。
幸い、食糧の支給状況はよくなり、最近では二日に一回はいろんな食糧が届くようになった。一時はほぼ空っぽになっていた冷蔵庫にも、ある程度の食糧を備蓄できるようになった。街道や居委会が援助物資の食糧を横領しているとの投稿がネットに相次いだために、政府が街道や居委会への指導を強化することにしたところ、おそれをなした街道や居委会が一生懸命食糧を配っているのだとか。今では食糧の心配はしなくてもよくなった。街道や居委会も、やればできるのだ。
中国の中央政府はあくまでもゼロコロナ達成に向けて管理監督を強化するようだが、オミクロン株のような感染力の非常に強いものが流行っている状況では、ゼロコロナの達成は難しいだろう。たとえ、いったんコロナ陽性者数をゼロにできたとしても、またすぐに感染が広まってしまうに違いない。ロックダウンは中国全土に広まっているのだから、どこかで火を完全に消すことができたとしても、別のどこかの火がすぐに飛び火する。
ゼロコロナ政策はいずれ別の政策に転換されることになるのだろう。だが、それまでは人民にとっては非常に苦しい状態が続くことになりそうだ。