謎の呑み鉄おじさん
茨城県の龍ヶ崎市に関東鉄道竜ヶ崎線という短いローカル私鉄がある。
JR東日本の龍ケ崎市駅に隣接する佐貫駅から出発して竜ヶ崎市の中心である竜ヶ崎駅までを結ぶわずか4・5キロの単線路線だ。
乗ったことがなかったのでふと思い立って乗りに行ったことがある。佐貫駅のホームは1面だけ。二両編成の古いディーゼルカーが停まっている。一番前の席に座って車窓を楽しむことにした。
単線の線路がまっすぐ伸びていて、のどかな田園風景が広がっている。警報機があるだけの小さな踏切がいくつも通り過ぎる。途中の駅はちいさな無人駅、すれ違い用の線路もない。
竜ヶ崎駅の造りは割と大きい。昔は人が集まって賑やかだったのだろう。
さて、帰りも一番前に坐って景色を楽しもうと思ってディーゼルカーを待った。ディーゼルカーが停まり、扉が開いて乗客が降りてくる。一番前に坐るぞと思って入ったのだけど、一番前の席に坐っているおじさんは坐ったまま立とうとしない。缶チューハイ片手にいい気分になっている。ディーゼルカーは走り始めた。おじさんは今度は緑茶ハイの缶をプシュッと開けて呑み始める。実に気持ちよさそうだった。
ディーゼルカーは七分ほどで終点の佐貫駅へ着いた。呑み鉄おじさんはそのまま竜ヶ崎駅まで折り返すようでやはり坐ったままだ。おじさんはいったい何往復するのだろう。それにしても気持ちよさそうだったけど。