外国人観光客がほとんどいない風景
京成上野駅の成田空港行きスカイライナー切符売場には誰もいない。中国人も他の外国人もいなければ、日本人もいない。コロナ前は大きなスーツケースを曳いた人たちで賑わっていたのに、切符売りの駅員はほんとに暇そうだ。当然、スカイライナーの車内もがらがらだ。京成電鉄は特急用車両を増備して、東京オリンピックに対応できるようにスカイライナーを増発したりしたのだけど、すっかり空振りになってしまった。京成電鉄はスカイライナーを途中の青砥駅(押上方面と上野方面の分岐駅)に停めたりしてすこしでも乗客を取り込もうとしているけど、そもそも外国へ行くも外国からくる人も激減してほとんどいなくなってしまったのだから、どうあがいても商売にならない。まったく気の毒だ。
アメ横も以前のように人でごった返すようなことはなくなった。こちらとしては落ち着いてぶらぶらしたり買い物できるけど、ちょっとさびしいかなという気がしないでもない。アメ横はごった返してつっかえながらしか歩けないくらいが活気があっていいのかもしれない。
先日、平日にアメ横から歩いて御徒町の松坂屋へ行ったら、化粧品売り場は誰も客がいなかった。広いフロアに客はゼロだ。僕とかみさんしか歩いていない。中国人の観光客がまったくいないとこうなるのかと思った。中国人観光客がわんさか押し寄せていた頃は、口紅一本買うだけなのに整理券を取って待ったこともあったのに。
浅草も外国人観光客がいない。あちこちから北京語やら上海語やら広東語やら四川語やらが聞こえていたのに、中国語はまったく聞こえてこない。商売している人は大変なのだろうけど、今の浅草のほうが落ち着いていていいかもしれない。
浅草へ行って浅草寺の周りや裏手をぶらぶら歩いているとそれだけでなんだか気分がほっとする。五重塔を見上げて、花屋敷のジェットコースターをぼんやり眺めて、なにをするわけでもなくぐるっと一周して、鯛焼きやソフトクリームを買い食いして都バスに乗って家へ帰る。浅草はなんにもしなくてただぶらぶらできる町だ。
九十年代前半、学生だった僕が過ごした東京では外国人観光客はそんなに多くなかった。大陸中国からきた観光客なんてまずいなかった。今の上野や浅草はそのころにタイムスリップしたような感じがする。