コロナを封じ込めた中国のデジタル監視の力 〜その威力と怖さ
中国は力わざでコロナをほぼ封じ込めてしまった。新たな感染者はまだいるが、一日あたり十数人といったところだ。
中国でコロナ封じ込めに威力を発揮したのが、「健康コード(健康吗)」と呼ばれるアプリだった。
「健康コード」には、緑なら問題なし、黄色は濃厚接触者、赤は感染者といった具合に、その人の感染状況が交通信号のように表示される。スーパーへ入る際も、駅へ入る際も、この「健康コード」を提示して緑でなければそこへ入れてもらえない。「健康コード」が通行手形のような役割を果たした。
「健康コード」はGPSで追跡しているので、ある人が感染者となった場合、そのデータから、その感染者がたどった経路が直ちに特定し、例えばその感染者が新幹線に乗っていたとすると、その新幹線の車両に一緒に乗っていた人全員へ通知がいき、検査を受けさないと指示が出る仕掛けとなっていた。こうして、「健康コード」によって感染者の外出を防ぎ、効率よく濃厚接触者を突き止めて隔離することができため、中国はコロナを封じ込むことに成功した。
コロナ封じ込めには有効な方法だが、この「健康コード」方式は、個人情報もへったくれもない。「健康コード」の個人情報が外部へ流出したら大変なことになる。政府が「健康コード」の情報を悪用しないとも限らない。GPSで追跡しているから、その人の行動は丸裸だ。いつどこへ行ったのかすべて記録が残ってしまう。
デジタル監視国家は効率がいい。必要な情報を瞬時に集め、即座に問題に対応できる。中国は深刻な状況から立ち直り、経済活動を再開させた。だが、「健康コード」で十数億の人民を管理することに味をしめた中国政府は、平時でも人民を監視しようとするだろう。個人の行動が政府によって監視されれば、それこそジェージ・オーウェルの『1984』の世界だ。個人の自由も、個人が個人たらしめる条件もすべて吹っ飛んでしまう。
これは中国だけの問題ではない。他の国々でも日本でも、技術が進めば進むほどデジタル監視国家への道をたどることになるのだろう。