上海のあるお茶目なおじいさんの笑い話
上海のあるおじいさんは突然息苦しくなった。
胸が苦しいし、喉も締めつけられるようだ。
背中がゾクゾクして寒い。
もしかして、これは新型肺炎なのではないだろうか。テレビのニュース番組で解説していた新型肺炎の初期症状とよく似ている。一週間ほど前、新型肺炎の感染者が近所のショッピングモールで買い物をしたとかで大騒ぎになった。おじいさんは毎日のようにそのショッピングモールへ出かけては、そのなかのスーパーで買い物をしていた。もしかしたら新型肺炎のウイルスに感染してしまったのかもしれない。
ひどく心配になったおじいさんは急いで近所の診療所に電話をかけ、お医者さんに往診を頼んだ。
お医者さんがやってきた。
おじいさんは症状を訴える。
お医者さんはくすりと笑った。
「おじいさん、セーターを反対に着てますよ」
おじいさんは鏡を見た。
おじいさんはVネックのセーターを前と後ろを逆にして着ていた。
道理で喉が締めつけられて息苦しいわけだし、背中が空いているからゾクゾクと寒いわけだった。
おじいさんはセーターを脱ぎ、今度はVネックを前にしてきちんときた。
胸は苦しくない。
喉も締めつけられない。
背中も寒くない。
病気でもなんでもなかった。
お医者さんは微笑んで帰っていった。
上海の義母から聞いた実話です。ご近所のおじいさんだそうです。