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時刻表タイムトリップ紀行 〜昭和39年9月号復刻版から その1


 時刻表の昭和39年9月号復刻版を売っているのを見つけた。

 昭和39年9月といえば、前回の東京オリンピック開催のひと月前、つまり、新幹線が開業する直前だ。

 この復刻版の時刻表をぱらぱらとめくってみると、日本の津々浦々に国鉄の急行や準急が走っており、とっくの昔に廃止になったローカル線がたくさんある。この頃の日本はまだ自動車が本格的に普及する前で、旅客も貨物も鉄道輸送が花形の時代だった。僕が生まれる何年も前のことだから、ただ時刻表を見ながらあれこれと想像するだけなのだけど、時刻表を眺めているだけでなんだかわくわくする。


 東海道本線下りの東京駅始発列車は、5時20分発の名古屋行き普通電車だ。一等車ーー今でいうグリーン車もついている。名古屋着は13時34分。東京駅から名古屋駅まで366キロの道のりを8時間14分もかけて、東京から名古屋まで走る。

 座席は硬いボックスシートだ。窓は開けることができるから気候のいい頃なら窓を開けて新鮮な空気を吸える。窓側の小さなテーブルの下には栓抜きがついている。この列車のいいところは途中で停車時間の長い駅があることだ。沼津では10分、静岡、豊橋では8分も停車してくれる。これだけあればホームへ降りて駅弁を買いに走ることができる。時刻表の欄外には各地の駅弁が書いてある。沼津のさばずし(100円)、静岡のます押し寿司(150円)、浜松のうなぎめし(200円)、豊橋のいなりずし(60円、100円)などはおいしそうだ。温かい食べ物が欲しければ、ホームの立ち食いそばへ行って容器付きでそばを1杯買うのもいい。景色を眺めながら駅弁やそばを食べて、ホームで買ったコーラやサイダーの瓶はテーブル下の栓抜きで開ける。窓を開けて爽やかな風にあたりながら冷えたサイダーを飲めば気持ちいいだろう。鈍行の旅は急ぐことはなにもない。ただ、のんびりとした時間と風景を楽しめばいい。

 名古屋へ着いた後は、名古屋発13時55分の京都行き普通電車に乗り継げば17時32分に京都に到着する。こちらも一等車付きだ。東京からゆっくり風景を眺めながら鈍行で12時間ちょっとかけて京都まで旅をするのもいいかもしれない。

 僕は学生の頃、休みの時に東京から郷里の大阪まで昼間の普通列車を乗り継いで帰ったことがある。当時は大学生協で「青春18きっぷ」をバラ売りしていたので、それを買えば東京から大阪まで2300円くらいで帰省できる。「青春18きっぷ」のバラ売りはありがたかった。90年代前半のことだ。

 東京から熱海行きの快速に乗り、それから、三島、浜松、豊橋、大垣、米原で乗り換えてと乗り換えはせわしなかったけど、8時間半から9時間くらいで大阪駅に着いた。大阪に着く頃にはさすがにお尻がちょっと痛くなったけど、沿線の風景を楽しむことができて今から思えばいい旅だったと思う。貧乏旅行は旅のプロセスをじっくり味わうから、かえっていい思い出になったりする。


 昔の国鉄は長距離普通列車がかなりあった。なかには走行距離1000キロを越える列車もあったようだ。今では残念なことに300キロを越える普通列車はなくなってしまった。


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