今年最後の眠りに就く前に 2019
一年が過ぎるのは早いよなと歳を取るごとに思う。
もうすぐ二〇二〇年代が始まるわけだけど、それについてはなんの感慨もない。ただただ、時間が過ぎるのは早いなと思うだけだ。
前へ進んでいるのか、その場で足かきだけをしているのかはわからないけど、ともあれ、去年は戸惑ってばかりいた新しい仕事もそれなりに軌道に乗ってきたし、休みの日はあちらこちらへ出かけて楽しむことができた。まずまずの一年だった。
国立博物館でやっていた「三国志展」は見応えがあった。いろんな発掘品が展示してあって面白かったのだけど、一番面白かったのは「蛇矛」だった。蛇矛とは蛇のような形をした矛のことだ。
三国志演義では張飛が蛇矛を振り回して大活躍する。だけど、その蛇矛がどのようなものなのかよくわからなかった。中国で売っている蛇矛のおもちゃは、剣身がくねくねと蛇のように曲がったものだった。確かに蛇を連想させる形ではあるし、なんだか迫力はあるけど、剣身をくねくねと曲がらせる意味がわからなかった。あまり実用的ではないような気がしていた。
三国志展で展示されていた蛇矛は剣身の先が蛇の舌のように二つに割れたものだった。これなら割れたところで相手の刀を受け止め、くるっと返して振り払うことができる。この蛇矛が張飛が使っていたものと同じ形がどうかはわからないけど、長年の謎がとけた気がした。先の割れた蛇矛を眺めながら張飛が大立ち回りをしているところを想像して楽しんだ。
東京国立近代美術館でやっていた「高畑勲展」も見応えがあった。子供の頃にテレビで放映していた『アルプスの少女ハイジ』、『母をたずねて三千里』、『赤毛のアン』、『じゃりン子チエ』の絵は懐かしかった。
今ではアニメ番組はほとんどなくなってしまったけど、僕が子供の頃は、朝と夕方と夜に必ずアニメ番組があって、毎日必ずなにかしらのアニメ番組を観ていた。アニメで育ったようなものなのかもしれない。
展示品の中には、映画会社の偉い人が高畑監督に「期日どおりに作品を仕上げなさい。さもなければ……」ときつい調子で催促している通告書もあって、思わずニヤリとしてしまった。高畑監督はそれに対して「締め切りを守ります」としおらしく文書を返していた。こんな文書がよく残っていたなと思う。アニメ映画の製作現場の激しさを証言する資料だろう。
来年もあちらこちらへ出かけていろいろと楽しみたい。
今年もお付き合いくださいまして、ありがとうございました。よいお年をお迎えください。




