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『南こうせつ 第28回グリーンパラダイス』へ行ってきた

 毎年、4月の下旬か5月の上旬あたりに日比谷野外音楽堂で『南こうせつ グリーンパラダイス』という名のコンサートが開催される。こうせつさんの野外コンサートだ。いろんなゲストが来て楽しいコンサートだ。今年で28回目になる。二〇代の時は東京で暮らしていたのでほぼ毎年行っていたのだけど、東京を離れてからは行かなくなった。せっかく東京に戻ってきたので、19年ぶりに観に行ってきた。28年間も同じコンサートを続けるのはなかなかすごいと思う。


 チケットは立見席だった。一般販売開始の翌日にチケットを取りにいったのだけど、座席はすでに売り切れており、立見席しか残っていなかった。公演開始一時間前の三時半に入場開始。天気は晴れ、最高気温は28度と夏のような暑さになった。立ち見は少々きついかなと思ったのだけど、なんのことはない、立見席といいながも、周りの人たちはビニールシートを敷き、アウトドア用の小椅子を出して座っている。前に座っているおじさん、おばさんたちは焼酎やビールを持ち込み、つまみを並べて飲み始めた。花見でもしているみたいで楽しそうだ。昔、こうせつさんが九州で毎年夏に開いていた『サマーピクニック』というオールナイトの野外コンサートがあった。『サマーピクニック』の時はビニールシートを敷いてビールを飲みながら楽しく盛り上がったものだった。

 野音の周りは緑に囲まれている。そよ風が快い。僕は入場の時にもらったチラシを敷いて坐った。93年の時はとにかく寒かった。冷夏で米不足になった年だ。冬物のコートを引っ張り出して着て行った。PPMのノエル・ポール・ストゥーキーがきて『500マイル』を歌った。95年の時はゲストできていた島倉千代子さんとトイレの前ですれ違った。ファンにつかまらないようにするためだろう、彼女は顔を伏せながら小走りでトイレへ駆け込んだ。とても小柄な人だった。ぼんやりとそんな昔のことを思い出した。


 いよいよコンサートが始まった。七〇歳とは思えない張りのある歌声だ。若い頃とちっとも変わらない。ソロの代表曲である『夢一夜』を歌い、今年、七〇歳の誕生日にリリースした新しいアルバムからも何曲か歌う。こうせつさんは六〇歳代がほとんどの会場を見渡して、盛り上がるのはいいけど盛り上がりすぎて倒れないように気をつけてね、もうお互いに歳なんだからと言って笑いをとる。

 若い女性歌手がゲストで一曲歌った後、尾崎亜美さんが出てきた。ダボっとした可愛らしい服を着ている。彼女はもう六〇歳を過ぎているはずだけど可愛らしい雰囲気はまったく変わらない。尾崎亜美は『オリビアを聴きながら』と『天使のウインク』の二曲を歌った。僕が学生だった頃、友人たちと一緒にカラオケへ行くと必ず誰かが『オリビアを聴きながら』を歌ったものだった。懐かしいなと思いながら聞いた。『天使のウインク』はノリノリだった。

 次に出てきたのは、世良公則さんだった。世良公則と聞いて会場がどよめく。彼はギター弾き語りで『あんたのバラード』と『銃爪ひきがね』を歌う。男っぽくて、ロックで、めちゃくちゃ格好良かった。ギターの演奏も決まっていたし、歌い方も絶唱という感じで力がこもっていた。

「前よりずっとかっこいいわねっ」

 僕の前でお酒を飲んでいたおばさんたちはキャッキャッとはしゃぐ。若い頃にあこがれたスターが歳を重ねてもっと男前になっていれば、そりゃ嬉しいだろうな。


 こうせつさんが再びギターを弾き始め、後半の部が始まる。こうせつさんは『妹』を歌い、いくつかの曲の後で『神田川』を歌った。

 かぐや姫の代表曲の『神田川』と『妹』は喜多條忠さんの作詞だ。喜多條さんの詩は少ない言葉数できれいに世界を描く。じっくり歌詞を聴くと泣けてくる。『神田川』や『妹』以外にもいい歌詞が色々とある。

 こうせつさんのMCの時、梢から鳥のさえずりが響いた。こうせつさんはあそこで鳴いてると指をさす。鳥の鳴き声が聞こえるのも野外コンサートならではだなと思う。

 最後の曲はかぐや姫の『うちのお父さん』だった。もっと歌って欲しかったのだけどあっという間に終わってしまった。


 アンコールになった。

 アンコールの一曲目を歌い終わった後、

「今きた奴がいる。長渕剛!」

 こうせつが叫んだ。

 長渕剛さんが黒いアコースティックギターを手にして入ってくる。長渕は、

「みなさん、お変わりないようで」

 とあいさつした。デビューしたての頃にこうせつのコンサートの前座を務めていたことを話して、こうせつと観客にお礼をいう。

「こうせつに敬意を表して」と長渕はギター一本で『夢一夜』を歌い出した。メロディーはところどころ長渕流になっている。『夢一夜』のメロディーはきらびやかで歌詞も優雅だ。長渕のイメージにはあまり合わない。どうして長渕はこの曲を選んだのだろうとふと疑問が湧いたのだが、考えてみれば『夢一夜』はちょうど長渕が前座を務めていた頃にヒットした歌だ。駆け出しの長渕にとって印象深い歌だったのだろう。

 一曲だけで終わるわけにはいかない。長渕が『乾杯』を歌うことになった。こうせつさんが世良公則さんを呼び出して世良がギターを担当する。観客の三千人が『乾杯』を合唱した。『乾杯』はいい歌だ。

『乾杯』を歌い終わった長渕は、

「『サマーピクニック』に行くぞ!」と拳をあげる。

 さすがにオールナイトではないけど、今年の9月に九州で『サマーピクニック』を公演することになっている。長渕はそれに行くと言ったのだ。

「忘れるなよ」

 こうせつさんが念を押す。

 長渕さんが突然参加して会場は盛り上がるし、『サマーピクニック』の出演も決まったのでめでたしめでたしだ。


 ラストの曲は、定番の『満天の星』だった。サビの、

♪ひとりぼっちの君に降るのは満天の星

 のところでキラキラを踊って締めた。

 楽しいコンサートだった。

 来年はビニールシートと小椅子とお酒を用意して観に行きたいな。


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