チャイニーズ・レストラン・シンドローム
初めて中国へ行った時、雲南省の辺境のある街で、そこで知り合った旅人たちと中国料理店へ入った。
胡瓜と卵のスープや回鍋肉といったものを何品か頼み、一緒に大皿をつつきながら食事をした。ところがなにを食べても味の素の味ばかりする。胡瓜と卵のスープにいたっては、スープに味の素がそのまま浮かんでいたりする。あまりにも味の素をふりかけすぎたためにとけきれないのだ。
こんなのを食べると噂の「チャイニーズ・レストラン・シンドローム」だなと思った。チャイニーズ・レストラン・シンドロームは、グルタミン酸ナトリウム症候群とも呼ばれ、味の素の過剰摂取が原因で、胸の痛み、動悸、息切れといった軽いショック状態を引き起こすものだ。当時の英語の旅行ガイドブック『ロンリープラネット』には、そのコラム記事があり、味の素を採り過ぎないようにと注意を呼び掛けていた。
旨味成分はたしかにやみつきになったりもするが、使いすぎれば、逆に旨味成分の味しかしなくなる。味の素の味しかしないので途中からあきてしまった。味の素が舌にざらつくようだ。これだけ味の素を摂れば具合が悪くなってもおかしくない気がした。そういえば、昔、祖父が味の素を食べれば頭がよくなると言っていたけど、あれば本当なのだろうか。
ずいぶん昔のことなので、今でもこんな味の素漬けの料理を作るレストランが残っているのかどうかわからないけど、それにしてもなんとも不思議な味だった。