「パパ、愛しているわよ」と娘に言われて舞い上がり
上海人の義理の姪っ子が通っている米国フロリダ州の学校にライフルを持った不穏な人物が闖入してきた。銃乱射犯である。
日本のニュースでもたびたび報道しているように、この種の凶悪な事件はフロリダだけではなく、アメリカのあちらこちらで起きている。フロリダでは、二〇一八年二月に高校生十七名が死亡した高校銃乱射事件が起きたばかりだ。
学校から教室に入って動かないようにと指示が出たので、姪っ子はクラスメイトと一緒に教室に隠れ、ウィチャット(中国版ライン)で父親へ「パパ、ママ、もしものことがあっても私は愛しているわよ」と送った。姪っ子は万一に備え、自分の気持ちを伝えておこうとしたのだ。
さいわい、警察がすぐに犯人を取り押さえ、犯人が発砲することもなく事件は未遂で終わった。学校は授業を再開した。
だが、今度は、姪っ子の父親が変な行動を始めた。娘から「愛している」とのメッセージを受け取った上海人の義兄はすっかり舞い上がってしまったのだ。年頃の姪っ子は、日頃、父親に対して反抗的な姿勢をとることが多い。それだものだから義兄はよけいによろこんでしまったのだろう。義兄はウィチャット上の自分の掲示板に「娘から愛しているとメッセージがあった。非常に嬉しい」とそのことを公開してしまった。義兄は仕事柄、顔が広い。姪っ子のメッセージは、多くの人の知るところとなった。
「パパ、愛しているわよ」
と、しおらしいメッセージを送った姪っ子であったが、事件がすんだことでもあるし、すぐさま日頃の反抗的な態度に戻った。
「わたしのメッセージをみんなに自慢するだなんて、どういうことよ! 娘から愛されるいい父親だって思われたいのね。自分をいい人間にみせかけるために、わたしを宣伝材料にしたのよ! 」
と姪っ子は父親につっかかった。だが、愛していると本心を吐露した後でいくらつっぱってみてももう遅い。義兄は娘に相手にされなくなったとあきらめていたのが、娘から愛されているとわかったのでもうなにを言われてもただにこにこするだけである。
今回は無事ですんだからよかったものの、この種の事件で不幸な目に遭った人は大勢いる。このような未遂事件はいろいろとあるのだろう。非常に怖いなと思った。