表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
200/518

便乗ストライキのほうが厄介だったりして ~中国反日運動

 案の定、朝から緊急対応に追われた。

 反日デモに乗じて、あちらこちらで便乗ストが起きている。混乱している隙をついて賃上げを要求するのだ。ストライキはタイミングが大事だから、駆け引き上手な中国人らしいやり方だ。

 僕としてはこちらのほうが厄介だった。

 引取り先の工場がストライキのために出荷停止状態になってその確認に追われたり、納入先の工場も操業停止にするとしないとか情報が錯綜してその確認に追われた。一部の工場ではスト隊が「日本人を出せ」と大騒ぎしたところもあったようだ。

 もっとも、僕の身の回りの中国人はふだんとあまり変わらなかった。

 勤め先の事務所の中国人スタッフは、朝は元気がない感じだったけど、午後からいつもどおりになった。いつものように中国語で声をかけると、いつもと同じ反応がかえってきた。おおらかというか暢気な彼らだったので助かった。ぴりぴりした雰囲気が事務所に漂っていたらどうしようかと思っていたのだけど。

「野鶴さん、危ないから気をつけてね」

 と、大変だなあとにやにや笑いながら声をかけてくる中国人スタッフもいる。まるで、バナナの皮を踏んづけてすべらないようにねと言っているみたいだ。こちらではデモの模様を報道していないせいもあるし、もともと政治とは縁の薄い人たちだからあまり緊張感がない。

 もちろん、他所の日系企業では剣呑な雰囲気のところもあった。デモの発端となったある日系工場へ確認しに行ったところ、付近には警察隊が繰り出して警戒していて、工場への進入路のところは公安が道路を封鎖していた。

 明日は九月十八日は柳条湖事件の記念日だ。デモの噂がいろいろと飛び交っているので、臨時休業にした工場も多い。ひと口に広東といっても地域によって温度差があるけど、万が一のことがあったら困るから休業しておいたほうがいい。

 今回の反日運動は前回よりもずっと規模が大きい。

 もっと根が深いようだ。

 広がるばかりの経済格差によって不満を溜め込んでいる人たちの数がずっと多くなったというのもあるだろうし、ナショナリズムやファシズムがそれだけ深く浸透したということもあるのかもしれない。いずれにせよ、人が死んだりとそんな最悪の事件が起きなければいいのだけど。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=280517787&size=135
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ