妙なことをしているのはどっち?
広州でタクシーに乗った。
運転手に、
「韓国人」
と訊かれた。
例の沖縄の島が問題になっているところなので、
「そうだよ」
と答えて、無難にやりすごせばいいものを、ムラムラと反骨心が湧き起こってきて、ついつい、
「日本人だよ」
と答えてしまった。
運転手は案の定、
「あなたの国は妙なことをやっているね」
と言ってきた。
こんな日中衝突のやりとりは今まで何度もやってきたので慣れている。だから、
「妙なことをしているのは御国の方だよ」
とすかさず言い返した。運ちゃんは思っていたとおり、黙り込んでしまう。
運転手はべつに悪意があってそう言ったのはでない。中国の政府とマスコミが中国が正しくて日本が妙なことをしていると報道しているものだから、それを鵜呑みにして、何の気なしにとりあえず言ってみただけだ。日本に置き換えてみれば、NHKニュース9の誰それがそう言っていたから、ニュースステーションの誰それがそう言っていたからそれを素朴に信じたというのとなんら変わらない。
とりあえず自分の思っていることを言ってみる、というのは、中国人の習性だ。そして、反論されたら自説を引っこめるというのも中国人の習性だ。だから、相手が間違っていると思ったときは正々堂々と言い返せばいい。べつに相手を憎むことも、怒ることもない。ただ、言い返すだけだ。
この中国人の習性に照らし合わせてみれば、例の島が欲しいと自らの欲望を表明したのも、ただたんに海底油田があって利益になりそうなところだから、とりあえず自分のものだと主張してみただけのことだろう。例の諸島はもともと中国のものではないわけだし、日本が実効支配しているのだから、このまま正々堂々と支配を続ければいい。妙な活動家が妙なことをすれば、さっさと逮捕して、さっさと追い返せばいいだけのことだ。
中国政府にしろ、沖縄のはずれにある島のことで日本との関係が悪化することを望んではいない。なにしろ、ここ最近中国各地で起きている反日デモが、反政府デモになって溜まりにたまった庶民の不満の矛先が自分たちに向かってくるのではないかとびくびくしているのは中国共産党自身にならないのだから。
相手の奇妙な行動については冷静に、かつきっぱりと対処すること。
日中間の問題は、どんな時代になっても存在する。肝心なのは、相手のペースに巻き込まれて自分が冷静さを失わない、ということだ。