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命がけのダイエット

 

 美容師さんに髪を切ってもらいながら彼女のダイエット話を聞いた。

 彼女は他の省から広州へやってきて、かれこれ七年ほどこの町に住んでいる。はじめは会社の事務員をやっていたのだけど、手に職をつけたいと思って美容師の仕事についたのだそうだ。丁寧にカットしてくれるから、いつも彼女に頼んでいる。

 なんでも数年前、店のオーナーから、

「君、美容師がそんなに太っていてはだめだよ。ダイエットに行ってきなさい。会社の経費で落としてあげるから」

 と言われ、二回ほどダイエット店に通ったのだとか。

 初めての美容ダイエット店へ行った時、カプセルサウナに入った。棺桶みたいな箱へ入って蒸気で蒸すやつだ。

 最初は気持ちよかったのだけど、そのうちにすっかりのぼせあがってしまい、時間がきた時にはふらふら。カプセルから出ようとして、気を失って倒れてしまった。もう他のダイエットメニューを続けられる状態ではないから、しばらくソファーで休んでそのまま帰ってしまった。

 二回目は、腕や太腿に鉄板をあてられた。鉄板に電流が流れ、肉がひくひく動く。その運動効果によってよぶんな脂肪を落とすのだとか。

 椅子に腰掛けて、電流ダイエットを受けていると、彼女の携帯電話が鳴った。これがいけなかった。携帯電話を手にした瞬間、びりびりっと感電してしまい、体が飛び上がってずどんずどんとお尻が椅子に打ちつけられる。逃げ出そうにも体が自由にならない。

 彼女の悲鳴を聞いた店員が慌てて駆けつけ、電源を切った。

「機械の調子がおかしいからもうだめ。今日は帰って」

 と店員に追い払われてしまった。

「電気ショックは怖かったわ。死んじゃうんじゃないかって気が気じゃなかったもの」

 話しながら彼女は怖気をふるう。

 カットが終わってから、彼女の昔の写真を見せてもらった。頰がぽっちゃりふくれている。可愛いといえば可愛いけど、なんだか高校生みたいだ。

「かなり痩せたよねえ」

 僕は写真と今の彼女を見比べた。

「ほかにダイエットしたの? 果物ダイエットとかさ」

「なんにもしてないわ。仕事が忙しくて残業ばっかり続いて、それで自然に痩せてしまったの」

「立ち仕事だから体を使うよね。ずっと運動してるようなものだもんな」

「仕事がひまになったらまた太るかも。でも、ダイエットの店には二度と行かないわ。命がけだもの」

 彼女はほがらかに笑う。

 やっぱり、自然に痩せるのがいちばんだよな。


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