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乱読と熟読

 

 本を読む習慣がついたのは、中学校三年生の夏休みからだった。

 部活を引退してひまになった。というよりも、部活があったときは体がくたくただったのだけど、引退したら今度は力がありあまるようになった。

 もちろん、それまでも本を読んでいた。星新一さんのショートショートはなどはよく読んでいた。でも、さすがに毎日読む習慣まではなかった。

 駅前の本屋で『笑うな』(筒井康隆)と『ムツゴロウの青春記』(畑正憲)を買ったのが始まりだった。どちらも面白かった。

 もっと読みたいなあと思って再び書店へ行くと「夏休みの百冊」というコーナーがあって、いろんな本が並んでいる。その百冊のなかから『どくとるマンボウ航海記』や『人間失格』といった次々と本を買って、いろいろ読んだ。父親が司馬遼太郎さんのファンだったので、親父の本棚から『龍馬が行く』だとか『関ヶ原』といった小説を取り出しては片っ端から読んでいった。隣のお兄さんがラジオの放送作家をやっていて要らない本を大量にくれたので、そのなかからおもしろそうなのを適当に選んで読んだ。図書館にもよく通った。

 なんでも手当たり次第に読む乱読だった。

 読むスピードは遅いのだけど、五六冊は同時平行で読んだ。朝六時半に目が覚めて歴史小説を読み、夏期講習の間にSF小説を読み、夜はエッセイを読むといった具合だ。今から思えばなんであんな読み方をしていたのだろうと思う。本を読みたくて読みたくてしかたなかったんだろうな。朝、目覚めた五分後には読書を開始していたのだから自分でもおどろきだ。中学生の頃は元気だったんだよなあ。やみくもなパワーがあったんだよなあ。

 今はもう乱読はできない。

 時々、無意識のうちに眼鏡を外して本や書類を読むようになった。老眼がすこし始まっているのだ。おじさんになった今、そんなパワーはない。頭がかたくなっているので、若い頃のように砂が水を吸い取るような吸収力もない。

 今は乱読するより熟読するほうが好きだ。

 赤鉛筆で赤線を入れたり、前のページを読み返したりして、本をとめて物思いにふけったりしながらじっくり読む。もちろん、すべての本を熟読するわけにもいかないから、気に入った本だけしか熟読しないけど。

 古典になっている名作の小説はなんど読み返しても面白い。読むたびに発見がある。若い頃に勢いにまかせて一気に読んだ小説も、じっくり読み直してみると若い頃に見落としていたことを見つけたりしておもしろい。小説の書き方の勉強にもなる。

 もっと読書の時間を取れたらいいのになあと思うのだけど、仕事をしなくっちゃいけないからしょうがないか。


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