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すべて手書き漢字入力の携帯メール

 

 中国人の友人がスマートフォンの画面を懸命に指でなぞっていた。

 こちらでは、さすがにiPhneを持っている人はすくないけど、韓国製や台湾製のそれを使っている人はわりといる。

「さっきからなにをしているの?」

 僕が訊くと、

短信ショートメールを打っているんだよ」

 と友人は言う。たしかに彼は指で画面に漢字を書いていた。漢字を書くと右側に変換候補が五つほど現れる。変換したい漢字をぽちっと押してまた次の漢字を書く。かなりしんどい作業だ。

「漢字を全部書かなくても、ピンイン入力(日本語のローマ字変換のようなもの)とか、五筆入力(漢字の書き順で入力)でやった方が速いんじゃないの?」

 僕は首を捻った。

 中国で主流な入力方法は五筆入力だ。

 縦棒、はらい、点といった漢字の構成要素を書き順にそって入力すれば、次から次ぎへと変換候補が表示され、それを選んで変換する仕組みになっている。入力法を勉強する必要があるけど、一度覚えてしまえばとても便利だ。

 ピンイン入力のほうは、一般的にいって、あまり使われていない。学校でよほどしっかり標準語を勉強してピンイン(ローマ字の発音記号)を暗記している人でないと使いこなせない(ピンインをほとんど覚えている中国人はそれほど多くない)。五筆入力に比べれば時間がかかるし、めったに使わない珍しい漢字でピンインを知らない場合は、どうすればいいのか途方に暮れてしまう。

「俺だって五筆入力のほうがいいよ。速いもん。だけど、この携帯には五筆入力の機能がないんだ」

 そう答えながらも、友人はせっせと漢字を書く。

「ない? 中国国内用の携帯なのに?」

「ないものはないんだ。しかたない」

「疲れるだろ?」

「うん。指がだるくなるよ。それに誰にでも書き癖ってあるだろ。俺の書き癖だと携帯が認識してくれない字があるんだ。なんべん書き直してもちゃんと漢字を表示してくれない時なんて、ほんとうに面倒くさくなるよ」

 たしかに、画面を見ていると、妙にくずしすぎて書いてしまった場合は彼の選びたい文字が出てこない。

 とはいえ、面倒臭いとぶつぶつ言いながらも、友人はひたむきに指で漢字を書いては変換候補を選ぶ。そんな使えない携帯電話は売り払って買い換えてしまえばいいのにと思いつつも、彼のひたむきさに妙に感心してしまった。


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