経済成長率目標を下方修正した中国
三月五日から北京で全人代(全国人民代表会議)が開催されている。
年に一回開かれる重要な会議。ここで一年間の中国の施政方針が決まる。中国の国会のようなものだ。
毎年、この期間になれば、北京だけではなく、北京から遠く離れた広州でも、道路のあちらこちらで検問が実施され、警察の姿が目立つようになる。大事な会議の間に騒ぎを起こされては、共産党の面子は丸つぶれになるうえ、指導者の統治力にも疑問符をつけられるからだ。
今年は、温家宝首相が経済成長の目標を従来の八%から七・五%へ下方修正すると発表した。
これ以上高度成長は続けられないため、成長率の伸びをすこし落としてでも量より質を重視した経済成長を続ける方針にするという。ずいぶん以前からこの方針にすべきだと一部では議論が盛んだったが、今年になってようやくこれが国全体の方針として定められた。
だが、ひと口に「量から質への転換」といっても、粗放型の経済発展を続けてきた中国にとって、容易なことではない。
改革開放路線を敷いた鄧小平はかつて「豊かになれる者は先に豊かになり、あとの者は彼らに追いつけるように努力しよう」といったこと言ったが、「富める者はますます富み、あとの者は置いてきぼり」というのが実態だ。富める者がますます富むのは、腐敗が主な原因だ。富める者は自らの権力を行使し、裏技を使ってますます金儲けしようとする。政府、国営企業、民間企業問わず、腐敗は蔓延している。その結果、大多数の人民は経済発展の恩恵にあずかれるどころか搾取の対象となり、所得が低く抑えられたままになる。くわえて、インフレによる物価上昇が激しいため、人民の生活は苦しくなる一方だ。
成長率を落とせば、そのぶん、裏の利権で富を手にしていた者たちの実入りが減る。腐敗者たちがそれを簡単に受け容れるとも思えない。果たしてどこまでやりきれるのだろうか。