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ナマケモノになりたい

 

 友人と話していて、マーフィーの法則の話になった。

 人生訓やらビジネスに役立つ教訓を書いたものだ。

 たしかそのなかに「会社の仕事の八〇%は二〇%の人に集まり、残りの二〇%の仕事を残りの八〇%の人がこなす」とったものがあった。このパーセンテージが正しいかどうかは定かではないけど、ともかく、忙しい人ほどその人に仕事が集まってくるというものだ。

 僕はこうして放浪しながら駄文を連ねるのが関の山でほかに取り得もない男なのだけど、中国で働いていると、必然的に「日本人がやらなければいけない仕事」がいろいろ回ってくる。しかも、高度経済成長が続いているこちらでは業務が拡大しているから、仕事は増える一方。でも、人は増えない。はからずも、八〇%の仕事をこなす二〇%の人々のひとりになってしまった。

 忙しさと給料を比べたらまったく割に合わないけど、そんなことを言っても仕方ない。そこで、いろんな意味で「冒険」しているのだ、と思うことにしている。中国は奥の深い国だ。摩訶不思議の国だ。中国の辞書に「不可能」という文字はない。同じように、「あり得ない」という文字もない。すべてがありえる。

 エヴリシング・イズ・ポッシブル。

毎週一回は驚きのあまり「うっそー」と声が裏返る。一度車のホイールが燃えて炎があがってしまい、それがもとで車が全焼したことがあった。びっくり仰天だ。車のホイールなんて燃えるものだったっけ? いったいぜんたい、どうやったら燃えるんだ?? 毎日が刺激的であることは確かだ。

 こんなことを書いては怒られてしまうかもしれないけど、根が気ままな性分だから、忙しさに追いまくられてカリカリするのは好きじゃない。ナマケモノになりたいと、ふっと思うときがある。日がな木にぶら下がったり、枝に抱きついてうたた寝をしているアイツだ。

 ナマケモノの写真を眺めていると不思議な思いにとらわれる。

 なんだか悟りきった哲学者のようだ。

 古代中国の老荘の思想には、一見、世の中の役に立たず無用にみえる存在こそ、最高なのだという考え方がある。無用の人は無為自然――平たく言えば、むりがなくて、心が悠々自適としていて、いちばんいいというものだ。ナマケモノは老荘の最高の境地を体現しているような気さえする。

 宮沢賢治は『雨ニモ負ケズ』のなかで、


 ミンナニデクノボートヨバレ

 ホメラレモセズ

 クニモサレズ

 サウイフモノニ

 ワタシハナリタイ


 とこんなことを書いた。実際には宮沢賢治はとても忙しい人だったのだけど、やっぱり「無用の人」になるのが理想なのかなと思ってしまう。

 ナマケモノになってしまえば、仕事で悩むこともないし、女の子のことで悩むこともない。

 いつか、ナマケモノになろう。


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