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“チャイナシンドローム”が起きている?


『チャイナシンドローム』は、一九七九年、アメリカで製作された映画。タイトルの意味は、メルトダウンを起こした原子炉の核燃料が原子炉を突き破って地中深く潜ってしまい、アメリカから中国へ突き抜けてしまうということだ。もちろん、しゃれを利かしたオーバーなタイトルだが、映画の内容は原発事故を扱ったシリアスなサスペンスものだ。この映画が公開された直後にアメリカのスリーマイル島原発事故が起きたことから話題になった。

 ところで、東電の発表によれば、福島第一原発一号機の原子炉はなかの水がすっかりなくなり、完全な空焚き状態になっているそうだ。原子炉の空焚き――これほど恐ろしいことはない。一号機ばかりではなく、二号機と三号機も空焚きになっている可能性が強い。

 肝心なのは空焚き状態になった後どうなったのかだが、まだ発表されていない。おそらく、今は真相を隠しておき、数ヶ月後に発表するのだろう。とはいえ、現段階でも、ある程度のことは推測がつく。『チャイナシンドローム』と同じような状態になったと思えばいい。

 どろどろに熔けた高熱の核燃料は塊となって原子炉本体の底を突き破り、原子炉から落下。原子炉の外を覆っている鋼鉄製の格納容器も突き破っただろう。格納容器は高熱の核燃料に耐えられる代物ではない。ちなみに、核燃料は棒状の時はその表面に水を循環させることで冷却できるが、それがぐちゃぐちゃに熔けて塊になってしまうとちょっとやそっとでは冷やせなくなる。表面積が小さくなり、水をかけても効果的に熱を奪い取ることができないからだ。

 原発建屋の地下水をためる施設では超高濃度のストロンチウム90が検出された。どうやら、核燃料はほんとうに地下へ潜ってしまったようだ。そうでなければ地下水から大量の放射性物質が検出されるわけがない。もちろん、地球を貫通して日本の反対側にある南米へ行ってしまう、なんてことはないだろう。だが、このままでは汚染された地下水を通じて核物質が広範囲にばらまかれてしまうというのに、地下水汚染を食い止める手段はまだ講じられていない。汚染を広げてしまっては現場の必死の努力がむだになってしまう。

 昔レンタルビデオ店が借りて観た映画がまさか現実になるとは思いもしなかった。

 核燃料が暴走して誰も制御できなくなっているのも恐ろしいが、今必要な対策がなされないのはもっと恐ろしい。なにより恐ろしいのは、こんな怖い話を聞いてもなんだか慣れてしまっている自分自身のような気がしないでもない。



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