第79話 告白
アイドル問題はたった1日ではおさまらず、連日みんなのファンがクラスの周りやらランチタイムまで及んでいたが、5人は特に何もせず普段通りに過ごし、応援隊のリーダーのマキさんの呼びかけが効果があったのか、金曜日には追っかけのような子たちもみんな居なくなった。
ようやく平穏な生活が戻ってきて、みんなは一安心していた。
一方私は、2人で会う約束をしてからずっと緊張したり、2人と顔を合わせる度に勝手に気持ちが上がってしまい、ちょっと避け気味になっていた。でも、アイドル問題があったため、良い感じに離れていてもおかしくなかったので、そこはカバー出来たかなと思う。
そして、とうとう今日という日を迎えてしまった。
シュウヤくんとは公園に11時集合なので、そろそろ家を出ないといけない時間になっていた。
足取りが重い中、公園まで歩くと集合時間の5分前に着いた。どの辺で待とうかなと目星になるものを探していると、大きな木の近くのベンチに座るシュウヤくんを発見した。
急いで駆け寄ると、シュウヤくんは朝から爽やかな挨拶をした。
「おはよう、ヒマリ」
「おはよう!シュウヤくん!待たせちゃったかな」
「いいや、俺が少し早く来ただけだから気にしないでくれ」
そう言って、隣に座るようにベンチをトントンと叩いた。
「今日も良い天気だな」
彼に言われて確かに、風も吹いておらず、降り注ぐ太陽の日差しが気持ちよく感じられた。
「ホントに今日は良い天気でよかった」
私はこの後に言葉を続けようとするが、勇気が出ずに少し沈黙の時間が生まれる。
シュウヤくんはこちらをまっすぐ見つめた。
私は彼の視線を逸らす。
「ーー何か俺と話したいことがあるんだろう?」
不安そうに聞く彼に申し訳なくなってきたので、意を決して自分の気持ちを伝えようと思う。
「うん、そのために来た。
ちょっと待ってね、いざ目の前にすると、緊張してなかなか言い出せないな、どうしよう」
彼は私の挙動不審な言動を見て、穏やかな表情でこちらを見続ける。
「ゆっくりで大丈夫だ。ヒマリの心の準備が出来るまで待つ」
優しい言葉をかけてくれるシュウヤくんに胸が痛みながら、深呼吸をし、言いたいことを頭に浮かべてそれを口に出した。
「夏休みにシュウヤくんから告白して貰っていたのに返事が出来ていなくて、待たせてごめんなさい。
ーー単刀直入に言います。
シュウヤくんとは友達以上に見えません。ごめんなさい。
私のわがままだけど、これからも友達として仲良くして欲しいです。お願いします」
自分の気持ちをようやく伝えることが出来た。
彼の顔を見ることが出来ず、頭を上げることかできない。
「ヒマリ、頭を上げてくれ」
恐る恐る顔を上げると、シュウヤくんの顔はいつもと変わらなかった。
「最初から分かっていた。ヒマリが俺の好きとは違うことを。
だから、こういうことになるだろうなとはなんとなく感じていた……。
ーー俺たちはこれからも友達だ。よろしく」
シュウヤくんは右手を私に差し出した。
私も彼の手を握り握手をした。
「シュウヤくんありがとう」
「こちらこそ、俺に人を好きになる気持ちを教えてくれてありがとう。
俺はヒマリを好きになれて楽しかった。これからは友達として楽しい思い出を作れたらいいと思っている」
「うん。もちろん」
「ーーヒマリ、すまない。俺はそろそろ行かないとならない」
「午後に予定があるんだよね!また学校でね」
「ああ」
去っていく彼の背中は先程の言葉とは違い、普段よりも小さく見えた。
でも、この曖昧だった関係に終止符を打てたし、これからも友達でいてくれると言ってくれたシュウヤくんは本当に懐の大きくて優しいヴァンパイアである。
そんな彼を友人として大切にしていきたいと改めて思った。
この公園からフラワーズパークまで徒歩で20分ほどである。まだ約束の時間までは1時間以上あり行くのは早い気もするが、早めに行って園内の探索でもしようかととりあえず向かってみた。
フラワーズパークに着くと、前回来た時とは違うお花がお出迎えしてくれるように咲いていた。
13時まであと1時間近くあるため、そのお花たちに癒されながらもゆっくりと園内を練り歩く。
以前イブキくんと行ったときに1番の見どころであるバラ園にやってきた。
やはりここは圧巻である。一面がバラで満たされており、とても優雅な雰囲気が漂っている。
ここに立っていたイブキくんはとても綺麗でカッコよかったなと思い出していると、彼がそこにいた。目が合うと、お互い驚いたように目を見合わせて、彼はこちらにやってきた。
「ーー何でここに?まだ約束時間じゃないよね?」
彼の口元が緩んでいるように見えたが、私も突然の出会いに驚き、緊張してきた。
「うん、ちょっと早めに着いたから園内を見ていたの」
「僕もそうなんだ。でも、ヒマリと偶然ここで出会えるなんて運命みたいだ」
そんなロマンチックな言葉にトキメキつつ、いつ本題を出されるのかと会話に集中できない。
「そうだね」
「ーーヒマリ、僕に話したいことってなに?」
ついに来てしまった。
深呼吸をし、気持ちを整える。
「告白の答えをしにきたの」
この空間の時が止まったように静かになった。
彼は真剣な眼差しでこちらを見つめる。
「イブキくんとは出会ってから、嬉しいことや楽しいことが多かったと思うの。
たまに私が元気がない時もあったけど、そういう時は優しい言葉や励ましてくれたり、そっと隣にいてくれて、いつの間にかイブキくんの存在は私にとって安心できる存在になっていました。
ーーイブキくんのことが好きです」
なんとか言いたいことを伝え、彼の顔を見た。
頬を赤く染めて、口元が綻んでいた。
「ありがとう。僕もヒマリのことが大好きです。
こんな僕で良ければ、付き合ってください」
「喜んで」
私は晴れてイブキくんと付き合うことになりました。
「今からカップルってことになるけど、カップルって具体的にはどんな感じなんだろう」
恋愛初心者発言をしてしまう自分が悲しいが、聞く以外答えがなかった。
「僕も今までお付き合いしたことがないから、分からないけど、まず手を繋いだり、一緒に好きなことをするんじゃないかな?」
彼は言葉通り、私の手を優しく握った。
すると緊張が解けたからか、私のお腹の虫が盛大に鳴った。
「まずはお昼ご飯食べに行こうか」
私はこくりと頷き、以前にも2人で言ったレストランに向かった。




